コロナ禍で全国平均の貯蓄額が過去最高に いちばん蓄えが少ない都道府県は?
(画像=あんみつ姫/stock.adobe.com)

2021年の総務省家計調査によると、2人以上世帯の貯蓄額は平均1,880万円で、比較できる2002年以降で最高となった。都道府県庁所在都市ごとの順位を見ると、1位と47位の間には実に2.8倍もの大きな開きがある。調査結果を詳しく説明していこう。

コロナ禍で消費を抑える傾向

2人以上世帯の平均貯蓄額は2020年と比べて89万円多くなり3年連続で増加した。一方、年間収入は1万円マイナスの633万円で、収入が微減だったにもかかわらず貯蓄が増えた。

平均貯蓄額が年間収入の何倍の水準にあるかを示す「貯蓄年収比率」は297.0%(約3倍)に高まり、少なくとも過去10年間で最高となった。コロナ禍で消費を抑える傾向が強まったほか、各家庭への給付金支給も影響したものとみられる。

さらに、2人以上の世帯で貯蓄の内訳をみると、近年その構成比率が高まっているのは、普通預金や当座預金を含む「通貨性預貯金」だ。2021年は31.1%で、これも直近では最も高い比率となった。

つまり、収入の割には貯蓄が増え、いつでも引き出せる通貨性預貯金として蓄えられている現状が分かる。

都道府県別1位は「東京」

家計調査では、都道府県庁所在地ごとの貯蓄額が明らかにされている。1位は「東京都区部(東京都)」で2,621万円だった。以下、2位は「奈良市(奈良県)」、3位は「名古屋市(愛知県)」と続いた。

コロナ禍で全国平均の貯蓄額が過去最高に いちばん蓄えが少ない都道府県は?

9位の「徳島市(徳島県)」までは2,000万円を超えており、14位の「前橋市(群馬県)」までが平均値を上回った。47位の「那覇市(沖縄県)」のみが1,000万円を下回った。

年収比の貯蓄額では東京は8位

貯蓄額は年収が大きければ多くなる傾向だ。ここで、各都道府県庁所在地の貯蓄額がそれぞれの地域の年間収入の何倍に当たるかを計算した。つまり、数字が大きければ大きいほど、年収の割に貯蓄額が多いということになる。

コロナ禍で全国平均の貯蓄額が過去最高に いちばん蓄えが少ない都道府県は?

貯蓄額で1位だった「東京都区部(東京都)」は年収との倍率で言えば8位に順位を下げ、「徳島市(徳島県)」などが順位を上げた。

世帯主の年齢別貯蓄額は「60代」が最高

最後に、世帯主の年齢別に貯蓄額を比較し、記事を締めくくろうと思う。20代が414万円、30代が774万円、40代が1,134万円、50代が1,846万円で、最も多かったのが定年退職に伴って退職金を得る60代の2,537万円だった。70代以上は2,318万円である。

家計調査からは、貯蓄額はおおむね年収が高くなるにつれて増える傾向が確認できる。年収1,500万円以上の貯蓄額は4,939万円、1,250万円以上1,500万円未満は3,022万円だった。

このように、総務省の家計調査からは、日本の各地域・各世帯のさまざまな事情が見て取れる。今後の調査結果にも注目したい。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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