中国経済、GDP成長過去30年で最低水準へ? 最大の脅威はゼロコロナ政策
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中国共産党が2年以上にわたり実施しているゼロコロナ政策のツケが、じわじわと中国経済に忍び寄っている。ゼロコロナ政策の経済的損失は、1ヵ月で推定約6兆円という。2022年のGDP(国内総生産)成長率は1990年以来最低水準の3.9%へ落ち込むと予想されており、一部の専門家は景気後退のリスクに警鐘を鳴らしている。

住民の不満がSNSで炎上 政府はゼロコロナ政策続行

2022年5月10日現在、上海を含む一部の地域では、引き続き厳格な行動規制が実施されている。

SNS上では長期間にわたり日常生活から遮断された住民の不満が噴出し、強制的に隔離される住民の動画など都市封鎖の実態を世界に訴えかける「証拠」が次々と投稿されている。「もはやウイルスは恐れられていない。最大の脅威はゼロコロナ政策のやり方だ!」と、上海の住民は語る。

しかし、日々拡大する住民の猛反発も、習近平国家主席の耳には届かないようだ。同氏は5月上旬に行われた上級幹部への演説で、中国のエピデミック対策戦略は「科学的かつ効果的」であり、「歴史の試練に耐えることができる」と断言した。「共産党の原則に基づく精力的なゼロコロナ政策の方針」を揺るぎなく遵守するよう当局者に促し、方針に対する批判や疑念に対して警告した。

ゼロコロナ政策の経済的損失、1ヵ月約6兆円?

オミクロン株の拡散防止策として中国政府が一部・完全ロックダウン措置を命じた州は、4月中旬の時点で45都市、総人口約3億7,300万人にものぼる。野村證券のエコノミストの推定によると、同国のGDP(国内総生産)の最大40%を占める規模だという。

ゼロコロナ政策が中国経済に与えている損失は、1ヵ月あたり460億ドル(約5兆9,859億円)にのぼると、香港中文大学経済学部の鄭 孟晩(Zheng Michael Song)教授は試算している。

ゼロコロナ政策に根差す悲観的な見通しは、アナリスト間にも広がっている。

野村証券は4月、2022年の中国経済の成長率予測を前回の予想から0.4ポイント減の3.9%へ引き下げた。さらに「ロシア・ウクライナ戦争と米利上げに注目が集まっているため、世界市場は依然として中国経済の減速を過小評価している」とし、第2四半期に景気後退のリスクが高まると警告した。
独金融グループ、アリアンツも同様に、3月の予想から0.3ポイント減の4.6%に引き下げた。上海の封鎖が2ヵ月間以上継続され、他の大都市も影響を受けるというシナリオでは3.8%、2020年第1四半期に見られたような経済ショックが再発するという最悪のシナリオでは1.3%に縮小する可能性を示した。

世界の投資家は中国市場に見切り?

ゼロコロナ政策の経済的打撃は金融市場にも拡大している。

世界中のファンドが中国市場から撤退を開始し、3月には総額70億ドル(約9,112億円)以上の本土上場株式を売却したとブルームバーグ紙は報じた。また、過去2ヵ月間で140億ドル(約1兆8,223億円)相当の中国国債が売却されたという。

ゼロコロナ政策がもたらす経済的打撃に加え、ロシアに対する主要国の経済制裁に中国が巻き込まれるのではないかとの懸念が高まったことも、投資家を中国市場から遠ざける要因の一つとなっている。

4月下旬、中国政府は損失拡大の回避策として、標的にしていた大手テック企業への取り締まりを緩和し、「全面的な」インフラ整備で経済を活性化させることを宣言した。その他、さまざまな経済支援措置を講じてサプライチェーンを安定させ、流動性の向上を図ろうとしている。

このような試みが追い風となり、5月上旬には上海総合指数や上海とCSI300指数(深セン株式市場上場の有力企業300銘柄)、科創板50指数(新興ハイテック企業銘柄)が上昇するなど、中国株式市場がにわかに活気づいた。対照的に香港株式市場では、ハンセン中国企業株指数やハンセン指数が軒並み下落した。

人民元も2015 年以来最大の下落 

人民元の先安観も中国経済の見通しに不安を投げかけている。

すでに人民元の下落は加速しており、4月下旬には中国が景気減速の真っ只中にあった2015年以来最大の下落を記録した。5月10日の上海外国為替市場では、2020年11月初旬以来の元安水準を付けた。

前回の暴落は国内における不動産開発と製造業固定資産投資の冷え込みや企業活動の低迷などが背景にあったが、今回はパンデミック、ロシア・ウクライナ情勢、世界的インフレとそれに伴う米利上げなど、中国と世界を取り巻く環境はまったく異なる次元へと変貌している。

その一方で中国人民銀行(中央銀行)は、インフレ抑制策として早期利上げサイクルに移行する欧米の動きに反し、金融緩和強化に向けた環境整備を進めている。ゼロコロナ政策と物価高騰で圧力を受けた経済を、さらなる金融緩和で支えようという考えだ。

中国経済は「歴史の試練」に耐えることができるのか?

1978年の改革開放を機に世界の歴史上稀に見る急成長を遂げた中国経済が、「かつてない減速圧力にさらされている」との見方を示す専門家も多い。世界第2位の経済大国に上り詰めた発展の影には、労働力人口の縮小、生産性の成長力の鈍化、西側諸国との関係悪化など、新型コロナ以外の問題も横たわる。

ゼロコロナ政策の維持が中国のみならず、世界の貿易とサプライチェーンにさらなる混乱をもたらすのではないかという懸念も日々、色濃くなっている。長年にわたり国際経済成長の主推進力であった中国経済は、習国家主席の思惑通り「歴史の試練に耐えることができる」のだろうか。

文・アレン琴子(英国在住のフリーライター)

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