食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

マルハニチロは4月20日、先ごろ発表した新中期経営計画(以下、新中計)「海といのちの未来をつくるMNV2024」について東京・豊洲の本社で記者説明会を開催した。

新中計のポイントについて、池見賢社長、粟山治取締役専務執行役員(漁業、水産商事 各ユニット長 水産資源、物流、各セグメント統括)および半澤貞彦取締専務執行役員(加工食品、食材流通 各セグメント統括開発部、生産管理部、各支社、広域営業部、各工場担当)はそれぞれ要旨を次のように話した。

池見社長は以下のように説明した。大きな変革点は2つ挙げられる。1つは企業価値のあり方だ。従来の企業価値は経済価値が主だったが、昨今の社会では、機関投資家も含めて環境、人権への関心が非常に高くなっている。改めて経済価値だけでなく、社会価値、環境価値まで一体化させた企業価値の向上が必要で、それを「MNV」(Maruha NichiroValue)の創造と表現した。

もちろん前中計でもマテリアリティや目標を定めていたが、目標のスパンが長く、KPI(重要業績評価指標)などの目標値を定めたものが少なく、これをもっと目に見える目標設定にした。

もう1つは、投下資本の優先順位のあり方だ。当社グループの事業領域が広い中、コロナ禍の影響で毀損した事業もあり、それを再建することが当面の課題となる。たとえば魚価が下がった養殖事業の競争力を高めたり、海外まき網事業の採算を改善したり、また北米鮭鱒事業はすでに一昨年撤退したりと手を打ってきたが、事業ポートフォリオを評価する中で、既存事業の存続ありきでは社会・経済的な環境に左右される部分が多くなる。

投下資本に対する優先順位を付けながら、事業の存続のしかたを考え、場合によっては北米鮭鱒事業のように撤退を決める、あるいは再建する中で今までのままではなくリモデリングするなどの考え方を事業継続の中で定着させていく。

そして成長領域を設定し、財務規律を持ちながら、仮に当中計期間中は営業的成果が出ないとしても積極的にチャレンジしていく。

〈水産事業の取捨選択の方向性はほぼ見えた/粟山専務〉
水産事業における前中計の誤算は、成長分野に位置づけた養殖事業で、人工種苗のマグロをコアに据えたが、それが技術的な問題もありうまくいかなかった。

前中計目標から(営業利益が)乖離した大半は水産事業の影響であり、特に養殖事業、大洋エーアンドエフの海外鰹まき網事業などの影響があった。前中計期間から新しいモデルに変えるべきということで、北米鮭鱒事業の売却、新しいすり身事業への投資などを進め、新中計に至った。

過去2年間、コロナ禍の影響、足元ではウクライナ問題があり、今後そう簡単ではないが、現在の水産資源セグメントの中で、事業の取捨選択の方向性はほぼ見えてきている。新中計期間では、それをさらに整理し、新たな成長分野に投資をしていくことになる。

もう1つ考え方として、当社グループにとって水産は大きな屋台骨の1つであり、資源へのアクセスをさらに意識して取り組みたい。まだ具体的に大きく言えないが、スケソウダラのシェア拡大、陸上養殖への取り組みなどにも今後期待していく。

〈食材流通ユニット ワン・マルハニチロで壁取り払う/半澤専務〉
前中計において食品事業の大きなテーマは収益力の向上であり、さまざまな施策を進めた。新中計でも、基本的には収益力向上という考え方は変わらないが、具体的な進化として、池見社長も話したように、投下資本の効率化を図り、事業領域を「成長ドライバー領域」「安定成長領域」「リモデリング領域」の3つに分類し、成長性、改善見込みを総合的に判断し、具体的な方策を進める。

従来は全体論としての「収益力向上」だったが、新中計では各事業を3分類に振り分け、その進捗によっては今までとは違う考え方で対処することになる。もう1つ目玉として「食材流通ユニット」を新たに創設したことが挙げられる。従来は水産・食品の壁が社内外にあったと言わざるを得ない。1つの企業の中で、お客様・商材とも無意識のうちに壁を作っていた。

新中計の考え方のベースはすべて「顧客起点」にあり、さまざまな領域で食材を手広く扱う中で、顧客起点からそのバリューチェーンをいかに最大化するかがポイントとなる。「ワン・マルハニチロ」として壁を取り払い、すべての商材を1つの機会でお客様にすべてご提案することで、価値が最大化すると考えている。

〈冷食日報2022年4月28日付〉