ブリッジローン,活用法
(写真=PIXTA)
内山 瑛
内山 瑛(うちやま・あきら)
税理士・公認会計士。名古屋大学法学部在学中に、公認会計士試験に合格。新日本有限責任監査法人に入所し、会計監査・コンサルティング業務を中心に研鑽を積む。2014年に同法人を退所し、独立。「お客様の成長のよきパートナーとなる」ことをモットーに、記帳代行・税務申告にとどまらず、お客様に総合的なサービスを提供している。近年は、銀行評価を向上させる財務コンサルティングや内部統制構築支援、内部監査の導入支援にも力を入れている。

会社経営には、資金繰りの悩みがつき物である。自分の手の届く範囲で経営をしている場合は問題ないが、法人を立ち上げ、人を雇い、投資をしていけば、個人での事業とは比べ物にならないほど莫大な資金が必要となる。資金調達は、中小企業の場合、銀行や信用金庫など金融機関からの支援が中心となるが、いつでも簡単に借入ができるとは限らない。

また、借入ができない状況を想定して資金を備えておくのは望ましいことではあるが、いつでもそのような備えができる会社ばかりではない上に、緊急で資金が必要となる場合も考えられるだろう。その際に活躍するのが、「ブリッジローン」である。今回は、ブリッジローンの内容について見ていきたい。

ブリッジローンとは?

ブリッジローンとは、短期間(主として3カ月程度)に限定した融資で、通常の融資よりも高金利(2%~4%程度)なのが特徴である。また、原則として保証人は付けない。個人や経営者が新しい正規の融資を実施するまでの間、短期間に限定して融資を受けることが目的だ。融資を受けるまでの間の橋渡し的な役割を持つことから、ブリッジローンと呼ばれている。その他にも「ブリッジファイナンス」や「つなぎ融資」などと表すこともある。

ブリッジローンは、保証人が不要、短期間で多額の資金が手に入るというメリットがある。しかし、その一方で金利が高く、返済を一括で行わねばならないといったデメリットがある点も留意しておきたい。通常の融資よりはかなり借りやすいが、借入期間後に返済ができる見込みがなければ、当然借入はできない。そのため、ブリッジローンの利用には明確な目的が必要となる。ブリッジローンを何の目的でどのように利用するのかを申請して期間内に目的を完遂し、一括返済が可能であることを説明できなければならない。単に運転資金が不足しているなどといった理由では借入をすることはできないため、注意が必要だ。

ブリッジローンを使う場面とは?

ブリッジローンを使う場面は、非常に多岐にわたる。ブリッジローンは個人でも活用可能であり、もちろん中小企業でも利用できる。例えば、不動産業においては、大型ビルや都市部のまとまった土地など、大規模な物件購入の際に使用される。また、製造業においては、新しい機械の導入やシステム開発の際に正規の融資がおりたり、補助金が交付されたりするまでの間に活用される。

さらに、個人においても、住宅ローンを借りるにあたり、審査完了までの期間にブリッジローンを活用する場合がある。物件の住み替えをする場合に家財の移動の関係などで一定期間両物件を所有する必要があるとき、もともと住んでいた物件の売却までの一時的な資金需要に応えるときに活用されることもあるのだ。

上記のような大型融資や補助金を受けるまでのつなぎの他にも、大口の債権回収までといった限られた条件の下で運用される。しかし、例外的ではあるが、長期にわたる資金需要がある場合でも、金融市場の混乱を抑制する目的や債務者の倒産を防止する目的で公的加入をする際に、政府保証付きでブリッジローンが組成されることがある。最近では、2010年に経営破綻した日本航空に対し、国民生活への影響を考慮して政府保証付きのブリッジローンが実行された。

ブリッジローンのメリットは?保証人不要で短期間で融資が受けられる

ブリッジローンは金利が高いため、銀行からの借入をすれば利用することはないのではないかという方もいるかもしれない。しかし、ブリッジローンはそれでも借りたいという需要があり、活発に活用されているものだ。例えば、急成長している企業が売掛金の回収サイクルを上回るスピードで伸びている場合、仕入れや人件費の支払いに困窮することがある。不動産会社が手元資金はないがすぐに抑えたい物件がある場合は、銀行や他の金融機関からの融資をあてにしていては、長く期間のかかる審査を待っている間にビジネスチャンスを逃してしまうことにもなりかねない。

また、M&Aなどで買収したい企業が見つかって買収に多額の現金が必要な場合(手許現預金が厚い会社を買収するなど)、とりあえずブリッジローンで多額の資金調達を行い、買収後に上昇した株式価値で新株を発行してブリッジローンを返済するというスキームをとることがある。こういったケースにおいて、ブリッジローンは保証人が不要である場合が多いため、融資審査が非常に短期間で済むのだ。短期間で多額の資金が手に入ることは、急な資金需要に応えるための非常に大きなメリットとなる。

さらに、ブリッジローンを活用しない取引の場合、見舞われる銀行の審査がおりるまでの不確定な状態がなくなるため、買い手が売り手に話を持ちかけやすくなり、売り手としても契約に応じる障壁が下がることになる。

ブリッジローンのデメリットは?高金利で手数料が高い

ブリッジローンのデメリットとして、まず高金利が挙げられる。審査期間は短いとはいえ、明確な目的と返済のあてを説明する必要があること、一括返済をする必要があることもデメリットといえるかもしれない。また、金融機関によっては返済が遅れた場合の遅延損害金が高く設定されていたり、高額な事務手数料がかかったりすることもある。ブリッジローンは非常に短期的な融資のため、金融機関にとっては手間がかかり、あまり儲けが期待できない商品といえる。そういった観点からも、金利や手数料を高く設定せざるを得ない。

このように融資のハードルが低い分、コストやリスクも大きくなっているのだ。また、銀行からの提案時に金利と手数料が別個に提示される場合があるが、手数料を入れると実質金利が年率20%を超えるような事態も想定される。そのため、実質的な負担はどのくらいになるのか、きちんと理解しておかなければならない。

ブリッジローンのリスクが顕在化するパターンとして、返済資金に充てるはずの物件の売却や、売掛金の回収、株式の発行が不調に終わり、返済資金が用意できないことがある。この場合、会社は高額な利息と遅延損害金を払い続けることになり、貸借対照表上も財務基盤が大きく棄損されてしまう。ブリッジローンは、将来の「見込み」に基づいた資金調達のため、ある意味、綱渡りともいえる側面を持っているのだ。

ブリッジローン利用の具体的な流れとは?

ブリッジローンを借りる場合に、どのような流れになるのだろうか。一番オーソドックスでイメージがしやすいパターンとして、住宅ローンのケースを説明する。自分の住む家の購入を検討する場合、個人にとっては莫大な費用が必要だ。土地の購入代金とともに、建物工事費用など、費用がかさむ。

しかしながら、住宅ローンは家が完成しないと借入をすることができないため、完成までの土地の購入代金や工事の手付金などを支払う際に頭金が不足する場合は、支払いができない。そのような場合に活用するのが、ブリッジローンだ。このケースでは、土地の購入代金や工事の頭金の支払いにブリッジローンを活用し、最終的に住宅ローンの融資がおりた時点で、ブリッジローンを返済することになる。

ブリッジローンの具体例

ブリッジローンの具体例として、特殊なスキームを取り上げたい。通常のブリッジローンは、通常返済を見込んでいるものだ。しかし、このスキームはブリッジローンを最終的に返済しない特殊な例であり、ベンチャー企業などでよく利用される。ブリッジローンは当然借入であるが、企業の資金調達手段は借入だけではない。株式発行による資金調達も可能だ。

株式発行は返済義務がなく、利息を支払う必要もないという点はメリットだが、発行額によってはその価値が希釈されたり、経営権を奪われたりといったデメリットもある。しかし、昨今の法整備により、配当優先株式など借入に近い株式発行なども行われており、その差異は相対的なものになりつつあるのだ。

同様に、借入を株式に近づける手法も開発されている。これは「株式転換型借入」といわれるもので、ブリッジローンや手形の振り出し、社債の発行などで行われている。会社上は「新株予約権付社債」といわれ、実務上は「転換社債」と呼ばれている。この場合、ブリッジローンは株式発行から次の株式発行までに資金需要が生じた場合の期間限定の借入で、借入の返済をあらかじめ新株で行うことを約束して発行されるものだ。つまり、ブリッジローンの借入は、次の資金調達のタイミングで株式に入れ替わることによって、返済不要の資金となるのである。

あらかじめ新株での返済を約束しておき、通常の借入で行われる元本と利息と期限の設定以外にも、どのような場合に、どのような種類の株式何株に、どのような条件で転換されるのかといったものを付して契約する。ある一定規模以上の株式発行などの資金調達(適格資金調達という)を行った場合、当該ブリッジローンを株式に転換することを定めるケースが多い。

通常であれば返済期限までに一定規模以上の資金調達を行うが、会社に資金的な余裕が出た際は、当該資金調達を行わないことによって満期を到来させ、通常のブリッジローンと同様に返済を行うこともある。株式の種類については、その適格資金調達の際に発行されている株式を定めることが多いが、別に他の種類の株式を定めておくこともある。

ブリッジローンは基本的に通常の借入のため、通常のブリッジローンと同様に返済をすることも可能であり、株式による返済は一定額以上の資金調達を行う必要があるのが特徴といえる。ブリッジローンを活用するメリットは、株式発行時に起こるリスクやコストをある程度回避することができる点だ。通常、株式発行については、発行価額を説明するために今後の損益の見込みなどを織り込む必要があるが、ベンチャー企業においては説得力のある損益計画を作成できないことも多い。

その点、ブリッジローンは通常の借入時の事業計画に準じたもので資金調達が可能だ。また、ベンチャー企業は資金調達の都度、その価額に大きな振れ幅があることが多い。右肩上がりに上昇している場合にはあまり問題にならないが、発行価額を下げざるを得ない場合は現在の株主との関係から資金調達が困難になる場合も多く見られる。ブリッジローンを活用すれば、そのようなリスクの起こる回数を少なくし、また先送りすることも可能となるのだ。

ブリッジローン以外のつなぎ融資のつくり方3選

ブリッジローンは、つなぎ融資に非常に有用ではあるが、他の資金調達手段でつなぎ融資に有用なものには何があるのだろうか。ブリッジローンと比較していく上でも、知っておくことが必要だ。まずは「ファクタリング」を見ていこう。

1. ファクタリング

ファクタリングとは、売掛債権を入金前に譲渡して資金化する資金調達手段のことである。社会保険事業など、売掛金の回収が長期にわたり、かつ売掛金の信用力が高い場合によく利用される。

ファクタリングのメリットは、審査が通常のブリッジローンよりも甘く、ファクタリング会社と取引口座だけ作成しておけば、限度額等条件はあるものの、最短1営業日で資金化が可能なことだ。また、自社の信用力がかなり低下していたとしても、ファクタリングでは売掛金が担保となるため、得意先の信用力によっては資金を得ることができるという点もメリットである。極端なことをいえば、通常の融資では相手にしてもらえない連続赤字の会社、税金や社会保険料の未納がある会社、リスケ中の会社であっても、利用することができるのだ。

逆に、そもそも売掛債権がなければ利用できないという点や、ファクタリングの手数料が通常のビジネスローンよりもだいぶ割高に設定されているという点はデメリットといえる。ファクタリングの手数料は利息ではなく、利息制限法など利息の率を制限する諸法令の上限よりも割高に設定されていることも多い。

2. 手形割引

他によく使われるものとして、「手形割引」が挙げられる。手形割引とは、手形で支払いを受けた債権などについて、手形の支払日よりも前に金融機関にその手形を売却して資金化する資金調達方法のことをいう。製造業など手形決済が一般的に行われている業界において、よく使われる方法である。

メリットとしては、ブリッジローンを組むよりも手続きが簡便で、審査が甘いことが挙げられる。また、割引料もファクタリングに比べれば安く、最短数日で資金化が可能な点もメリットといえるだろう。

デメリットとしては、手形決済を利用している会社でしか利用できない点、万が一、手形の振出人が不渡りを出し、履行不能に陥った場合には代わりに返済をする必要に迫られる点である。

3. 不動産担保ローン

また、急場の資金需要に応えるために利用されるものとしては、「不動産担保ローン」がある。不動産担保ローンとは、不動産を担保に融資を受ける資金調達方法のことだ。不動産担保ローンは、不動産に絡んだつなぎ融資に際して利用されることの多い資金調達方法である。

不動産を転売する際に、売却までの資金を確保するため対象不動産を担保に入れてつなぎ資金として活用することになる。担保があるため、通常のブリッジローンよりも審査が甘く、高額な借入が期待できるだろう。

また、金利も通常の無担保ローンよりも低いことが多い。しかし、もちろん対象となる不動産がなければ利用できず、不動産を評価したり、抵当に入れる手続きを要したりするため、手続きに多少時間がかかる点がデメリットとして存在する。

ブリッジローンは短期間での借入が可能だが目的を明確に

ブリッジローンは短期間での借入が可能なことから、是が非でも利用してみたいと感じる人が多いように思われる。しかし、実際は明確な目的がなければ借入は不可能なのだ。そのため、現在自分が置かれている状況を分析し、今後の収支予測などを勘案して、ブリッジローンをどのように活用するのかを検討する必要がある。

ブリッジローンはデメリットもあるが、さまざまな活用方法がある使い勝手のよい手段といえるだろう。特に、ベンチャー企業などにおいては、うまく使えばさまざまな資金調達の手段と組み合わせることによって、事業の拡大などに非常に役に立つ。ぜひ、有効に活用していただきたい。

文・内山瑛(公認会計士)