2022年3月23日、みずほフィナンシャルグループがGoogleとの提携を発表 した。第一の狙いは出遅れていたDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みを加速させること。目的として「企業カルチャーの変革」が掲げられていることにも注目したい。
Googleとの提携で「企業文化の変革」にも挑戦
みずほフィナンシャルグループが提携するのは、グーグル・クラウド・ジャパンだ。Google CloudはGoogleが展開するクラウドサービスで、みずほフィナンシャルグループはGoogle CouldのAI(人工知能)技術を活用し、顧客向けマーケティングを強化するという。
この点はもちろん重要だが、本稿で主題としたいのが「企業カルチャーの変革」も提携の目的としている点だ。簡単に言えば、Googleの企業文化を吸収しようということである。3月23日に発表されたプレスリリースでは、以下のように触れられている。
「Google Cloudのコンサルティングサービスや知見を活用することで、生産的で柔軟な働き方を実現し、イノベーティブな企業カルチャーへと変革していきます」
みずほ銀行は、日本を代表する銀行のひとつだ。歴史も長く、みずほ銀行に合併した第一勧業銀行は「日本最古の銀行」とされる第一国立銀行を前身に持つ。ちなみに第一国立銀行は、「日本資本主義の父」とも呼ばれる渋沢栄一によって設立された。
みずほ銀行がアメリカの超大手企業であるGoogleと提携し、企業文化の変革に挑むというのは、ある意味「プライドを捨てた」取り組みと言えなくもない。
金融庁からのこっぴどい批判が背景に
みずほフィナンシャルグループが長年培った企業文化の変革に乗りだそうとしているのには、訳がある。2021年に何度も起きたシステム障害に関して金融庁からこっぴどく批判されたからだ。
2021年11月、金融庁はみずほフィナンシャルグループとみずほ銀行に対して、業務改善命令を出し、その中で「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない姿勢といった企業風土を改め、おのおのの役職員が顧客影響に対する感度を高めていくなど、組織的行動力を強化し、行動様式を変革していくための具体的な取組み」を求めた。
その後、みずほ側は業務改善計画を金融庁に提出しており、企業風土の変革に関する取り組みとして「社員が自由に行動・発言できる環境や雰囲気の醸成」などを挙げている 。Googleとの提携には、これらの伏線があったと言える。
Google側の企業文化を今後どう吸収する?
ではどのようにして、みずほ側はGoogleの企業文化を吸収していくのか。報道などによれば、Googleの社員と仕事をともにしたり、企業文化の変革について学ぶ研修を実施したりする中で、Googleの柔軟でイノベーティブなカルチャーを吸収していく方針のようだ。
しかし、特に大手かつ老舗企業の場合、企業文化を変革することは簡単ではない。とりわけ組織の中で世代が高めの社員は、これまでの働き方や考え方を簡単には変えることができない。これはさまざまな企業が抱える普遍的な課題であると言える。
Googleの企業文化をみずほ側がうまく吸収していけるか、注目が集まりそうだ。
一番の狙いはDX
この記事では、みずほフィナンシャルグループとGoogleの提携について、「企業文化の変革」に焦点を当てて考察してきた。ただし、提携の一番の狙いはDXによる顧客マーケティングの強化だ。その点についても、最後に少し書き添えておく。
まずGoogle Cloudなどを使い、グループ全体で顧客情報を統合管理・共有できるようにし、出入金情報や取引情報に沿った提案を顧客にできるようにするようだ。その上で「Digital Bankなど先進的な金融サービスの実現に向け取り組みます」とも述べている 。Digital Bankとは具体的にはどのような取り組みになるのか、今後、詳細な発表が待たれるところだ。
みずほは2021年にシステム障害を繰り返しただけに、Googleとの提携でブランドイメージの起死回生を果たすことができるのか注目が集まる。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)