矢野経済研究所
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4月18日、経団連と大学関係者による協議機関「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」は、インターンシップで取得した学生の情報を採用活動に利用することを容認すると発表した。従来、文部科学省は「インターンシップは教育活動の一環であり、広報活動や採用選考への活用は認めない」との立場であったが、これを受けてルールの見直しに着手する。
お互いを知るという意味において職場での就業体験は企業、学生双方にメリットは大きい。通年採用、職種型採用など新卒の採用方法が多様化しつつある中、今回の決定は前進である。

協議会は学生のキャリア形成に関する産学協働の取り組みを、①会社説明会の実施、②キャリア教育プログラムの導入、③汎用的または専門性にもとづく就業体験、④高度専門型就業体験、の4つに分類したうえで、一定の条件を満たした就業体験について採用への活用を認めるとした。具体的には、汎用型であれば参加期間5日間以上、専門型は2週間以上とし、うち半分を越える日数が実際の職場体験にあてられること、夏休みなど長期休暇中に行うこと、募集要項等における情報の開示、そして、情報の活用は “採用活動開始以降” に限ること、などが提示されている。

昨年、政府は「令和4年度卒業の採用選考活動開始は6月1日以降、内定日は10月1日以降」とするよう経団連に要請、これを受けて経団連は「政府からの要請の趣旨を踏まえた採用選考活動を行って欲しい」旨、会員各社に通達した。しかしながら、今年度の就職内定率は4月1日時点で既に38.1%(株式会社リクルート、就職みらい研究所調べ)に達している。もちろん、これは経団連の非会員企業も含めての数値であるが、新卒の採用活動に関する “日程” は完全に形骸化していると言って良いだろう。

2018年10月、経団連は「2021年度以降入社対象の“採用選考に関する指針”を策定しない」ことを決定、政府に下駄を預けた。産業界はもちろん会員企業を統制する権威も、その意義も薄れたということである。一方、引き継いだ政府の “お達し” にも効力はなかった。インターンシップも同様だ。既に少なからぬ企業が採用選考に組み込んでいる。それでもあえて “採用選考活動開始日以降” を条件付けすることにどれほどの意味があるのか。建前と現実はちがう、それが大人だ、なんてことを体現し、経験させるのが就業体験であっては興ざめだ。昭和が染みついた “Society5.0人材” など見たくない。

今週の“ひらめき”視点 4.17 – 4.21
代表取締役社長 水越 孝