黒坂 岳央
黒坂 岳央(くろさか・たけお)
水菓子肥後庵代表。フルーツビジネスジャーナリスト。シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、東京で会社員を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。ビジネス雑誌やニュースサイトでビジネス記事を書いている。著書に『年収1億円超の起業家・投資家・自由業そしてサラリーマンが大切にしている習慣 “億超えマインド"で人生は劇的に変わる!』など。

筆者は数多くのお金持ちを目の当たりにし、彼らと一緒にビジネスをしてきた。保有する資産が数十億円を超え、昼間からシャンパンを飲んでジャグジーでまったりしていても、資産が自己増殖を続けるような人もいる。また、起業して、ITや金融などの分野で、不眠不休で働きながらも、新たなビジネスチャンスを見るやいなや飛び移るという肉食的な経営者もいる。経営者や社長ほど、稼いだ後も働いているのだろうか?

お金持ちはヒマであり、忙しい

働く
(画像=G-Stock Studio / Shutterstock.com)

これまで一緒に働いたり、お酒や食事をともにする経験を通したりして「お金持ちほどよく働く」ということを心底理解できたつもりだ。だが、しかしよく、「お金持ちは働かないで稼ぐ」という主張をみかける。一見すると正反対の考え方のようだが、確かにこれは正しいといえる。それはお金持ちになるには会社や資産運用という、レバレッジをかける仕組みで稼ぐ必要があるので、「自分が忙しく駆け回っている間は本当の意味でのお金持ちにはなれない」という主張は正論なのだ。

そもそも、稼げない人の多くは「稼ぐ仕組み」自体を持っていない。自分の体が資本であり、「今稼ぐために今働く」という調子なので、働くのをやめるとたちまち収入は途絶えてしまうのだ。一方、お金持ちは会社オーナーや投資家で、実際にお金を稼いでいるのは会社や資産だ。自分が汗水を垂らす必要はない。これが、「お金持ちはヒマ」と言われる理由である。

だが、それでもお金持ちは実は働いているのだ。自らがお金持ちになるような精力的と行動力を持つビジネス中毒者が、一日中シャンパン飲んで遊びほうけるなんて密度の薄い時間を耐えられるはずがないと筆者は考えている。

稼ぐ人と稼げない人の「忙しい」の意味の違い

筆者の知人に、米国金融街を闊歩するトレーダー並に稼ぎ続けているトップアフィリエイターがいる。もちろん法人化済みだ。そんな彼は先日、私に面白いことを語ってくれた。

「正直、もうこれ以上は収入を増やす必要はない。俺は社会の生存競争の勝者だ。今こうしてただしゃべっている間も、淡々とアフィリエイト報酬は発生し続けている。だが俺は忙しい。あれもこれもやりたい、好きなことをたくさん集めた結果忙しくなっている」というのだ。

稼げない人のいう「忙しい」と、彼のような人種の「忙しい」はまったく意味が異なるのがお分かりいただけるだろうか。

稼げない人は「生きるために忙しい」のだ。極端にいうと生活のため稼ぐために自分の体を資本に働く、やめれば収入が途絶えるのでやめることはできない。だが、稼ぐ人は「楽しいことを消化するのに忙しい」のだ。その結果としてお金が増殖する。そして稼ぐ人は稼ぐこと自体が楽しいので、彼らは稼ぎ続けるという趣味で忙しくしている。

楽しいことでなければ生き残れない

稼ぐ人ほど忙しく働くというのは、「お金を気にせず、楽しいから夢中になれることを仕事にしている人でなければお金持ちになれない」という説が成り立つといえる。「好きなことだけで生きていけるほど世の中は甘くない」と昔は言われていた。だが、今は「好きなことを仕事にしなければ、生きていけない世の中」というのが正しい答えだと筆者は痛感する毎日である。

もちろん「楽しいことでなければ生き残れない」というセリフが当てはまるのは、経営者や投資家などの「お金を稼ぐ仕組み」を持てるもののみに通用すると考えるのが妥当であろう。

もう働く必要がないほど稼いでいるのに、さらに精力的に働く経営者とは、「好きなことで生きていく」をこれ以上なく体現している人種なのである。

文・黒坂岳央(水菓子 肥後庵 代表・フルーツビジネスジャーナリスト)