ロシア、金融制裁対策で仮想通貨解禁の強硬手段?
(画像=NegroElkha/stock.adobe.com)

ロシアが仮想通貨やデジタル通貨を、国際通貨(ドル、ポンド、円など)の代用として検討していることが明らかになった。

同国最大の商業銀行ズベルバンク(Sberbank/ロシア貯蓄銀行)が2022年4月を目途に、企業向けデジタル資産プラットフォームの提供を開始する。加えて政府と中央銀行が国内の金融システムにデジタル通貨の流通メカニズムを組み込み、仮想通貨の規制環境整備について協議を推し進めている。

ロシア発の仮想通貨誕生まで秒読み?中央銀行が承認

ロシアの通信社インターファックス(Interfax)によると、ロシア中央銀行は2022年3月17日、デジタル金融資産(DFA)を発行する情報システム事業者のライセンスをズベルバンクに付与した。

2020年11月に同行の責任者であるジャーマン・グレフ氏が、2021年内に独自の仮想通貨「ズベルコイン(Sbercoin)」のサービス開始を公にしたことから、近い将来にロシア発の仮想通貨が誕生する可能性が高い。

ロシアのDFA環境は急速に進展しており、ウクライナ侵攻の数週間前には同国初のブロックチェーンプラットフォーム、アトミーズ(Atomyze)もDFA発行ライセンスを取得した。

一方、2022年3月下旬にはミハイル・ミシュスチン首相が、デジタル金融資産やマイニングを含む仮想通貨の流通・規制を巡り、中央銀行との協議を続ける意向を示した。同国では、経済発展戦略として仮想通貨に前向きな政府と金融システムへの潜在的なリスクを懸念する中央銀行の間で、仮想通貨に対する意見が衝突していた。

国際金融取引ネットワークから遮断されたロシア

かたくなに仮想通貨の取引やマイニングを禁じてきた中央銀行が緩和に転じた背景には、ウクライナ侵攻に対する西側諸国の経済制裁がある。

現在、ズベルバンクを含むロシアの大手銀行は、銀行間の国際金融取引ネットワークSWIFT(国際銀行間通信協会)から締め出されており、欧州事業撤退に追い込まれている。追い打ちをかけるかのように、日本の3大銀行(三菱UFJ、三井住友、みずほ)がズベルバンクとのドル取引を全面停止する方針を固めるなど、アジア圏にも制裁は拡大している。

対抗策として、今後は主要通貨の代替としてデジタル資産の取引を合法化・促進すると同時に、市場に投資を誘致する狙いだ。

ロシア産エネルギー代金にルーブル決済要求

ロシアには代替通貨案をとおして、もうひとつ目論んでいることがある。ルーブルの流通拡大だ。

ロシア連邦エネルギー委員会のパヴェル・ザヴァルニ委員長は3月下旬の記者会見で、「石油とガスの輸出代金の代替決済法として、ビットコインなどの仮想通貨や現地通貨を検討している」と述べた。BBCによると、対象となるのは中国やトルコなど、ロシアが「友好的」と見なしている国で「友好的ではない」国に対してはルーブル建ての決済を要求する意向だ。

英米は制裁の一環としてロシア産天然資源の輸入を禁じているが、ロシアは依然として世界有数の天然ガスおよび原油輸出大国である。欧州も輸入禁止を検討しているものの、代替案がまとまらず足踏み状態だ。欧米主導の対ロシア制裁はサプライチェーンの混乱を引き起こし、多数の国でインフレを加速させている。

ロシア中央銀行の発表によると、同国の2021年の総輸出額4,898億ドル(約60兆4,216億円)のうち、原油が1,102億ドル(約13兆5,930億円)、石油製品が687億ドル(約8兆4,740億円)、パイプライン天然ガスが542億ドル(約6兆6,852億円)、液化天然ガスが76億ドル(約9,374億8,857万円)を占めた。

単純に考えると、これだけの金額が仮想通貨やルーブルで支払われることになれば、仮想通貨や暴落した通貨の価値が高騰する可能性が高い。すでにルーブルは、下落以前の水準に回復しつつある。

アラブ首長国連邦が金融制裁の回避先に 

一方では、仮想通貨が国際的な金融制裁の回避先となっている点も懸念されている。

カタールの国営メディア、アルジャジーラによると、資産凍結やルーブル下落を恐れる投資家や超富裕層が目を付けたのは、暗号資産の移転や権限に関する規制が緩く、対ロシア制裁にも加担していないアラブ首長国連邦(UAE)だ。

UAEの金融関係者は、ロシア人を含む投資家が仮想通貨をUAEの不動産への投資や資金移動の手段に使用していることを確認している。同国の仮想通貨取引所は、数十億ドル(約数千億円)相当の仮想通貨の清算依頼で大混雑しているという。

しかし、UAEのセーフヘブン(安全な避難所)としてのステータスがいつまで続くかについては、疑問の声も多い。

UAEは長年にわたり中近東の金融ハブとして超富裕層を魅了してきたが、2022年3月中旬、金融犯罪とマネーロンダリングの監視団体、金融活動作業部会(FATF)の「グレーリスト(要監視強化国)」に追加された。また、ドバイ政府が国内の暗号資産規制機関を設立し取締りに乗り出すなど、刻々と環境は変化しつつある。

プーチン大統領「ロシアは世界経済の一部であり続ける」

ロシアは、「兵糧攻め」の対抗策として、仮想通貨と自国通貨を投じるという強硬手段に出た。プーチン大統領はウクライナに侵攻を開始した日、予想される欧米側からの大規模制裁に対して「準備はできている」と強調した。果たして、「ロシアは世界経済の一部であり続ける」ことができるのだろうか。

文・アレン・琴子(英国在住のフリーライター)

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