2021年、インターネット広告費が「マスコミ4媒体」合計の広告費を初めて上回った。マスコミ4媒体とは「新聞」「雑誌」「ラジオ」「テレビ」のことだ。ネットがより身近な存在となり、企業が広告の出稿先の転換を進めてきたことを如実に示す結果であると言える。
ネット広告費がマスコミ4媒体広告費を逆転
日本最大の広告代理店である電通は毎年、「日本の広告費」というレポートを発表しており、2022年2月にその最新版となる2021年版が発表された。
2021年版では、インターネット広告費が前年比21.4%増の2兆7,052億円、マスコミ4媒体広告費が同8.9%増の2兆4,538億円となり、マスコミ4媒体広告費を初めて上回ったことが発表された。
以下が2011〜2021年にかけての両方の広告費の推移だ。
インターネット広告費はこの10年間、一貫して右肩上がりの状況となっている。マスコミ4媒体広告費は、2014年に3兆円台の一歩手前まで増えたが、その後は減少傾向だ。
2011年と2021年の増減率で比べると、インターネット広告費は235%増(約3.3倍)、マスコミ4媒体広告費は9%減(約0.9倍)となっている。マスコミ4媒体広告費の減少率よりも、インターネット広告費の増加率がはるかに大きいという結果だ。
以下、インターネット広告費とマスコミ4媒体広告費について考察していく。
インターネット広告:動画広告需要の高まりが顕著
インターネット広告費について電通は「とりわけ映像系を中心に動画広告需要の高まりが顕著」としている。確かに最近スマートフォンでアプリを使っていると、以前に比べて動画広告をよく目にするようになった。動画広告は2021年、初めて5,000億円を突破した。
2021年のインターネット広告費の主な内訳は以下の通りだ。
マスコミ4媒体広告:紙媒体の広告費の減少が鮮明
マスコミ4媒体広告費を媒体別に示すと以下の通りとなる。2021年の広告費に加え、2012年の広告費も記載し、増減率も算出してみた。
最も広告費の減少率が大きいのが「雑誌」で、51.8%減となっている。「新聞」も広告費の落ち込みが顕著で36.3%減。マスコミ4媒体の中では「テレビメディア」(地上波テレビと衛星メディアの合計)のみ広告費が1.4%増となっている。
付け加えておくと、マスコミ4媒体の広告費に関しては、インターネット広告費に含まれる「マスコミ4媒体由来のデジタル広告費」は増えていることを知っておきたい。いわゆるオールドメディアも、自らのウェブサイトやアプリで広告を積極的に展開しているということになる。
電通がマスコミ4媒体由来のデジタル広告費の調査を開始した2018年と、2021年の広告費を比べてみると、新聞由来のデジタル広告費は132億円から213億円に、雑誌由来は337億円から580億円に、ラジオ由来は8億円から14億円に、テレビメディア由来は105億円から254億円に増えている。
2022年以降の広告費の傾向はどうなる?
若者の新聞離れやテレビ離れが目立ち始めて久しい。このような状況では、インターネット広告費はさらに増え、マスコミ4媒体広告費はさらに減り、その差はより大きくなっていくことが考えられる。インターネット広告費がマスコミ4媒体広告費の2倍になる日もそう遠くないかもしれない。
そして最近では、タクシーの後部座席向けに設置されたモニターに広告を配信する取り組みも増えており、このような新たな広告配信の仕組みにも注目していきたいところだ。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)