補助金の申請時や口座開設時など、定款の提出はさまざまなビジネスシーンで求められる。会社設立の際にも必須の書類となるため、経営者は正しい知識を身につけておく必要がある。本記事では定款の概要に加えて、作成の流れやポイントを解説していく。

目次

  1. 定款とは?どんな場面で必要になる?
  2. 定款作成から会社設立までの流れ
  3. 定款のフォーマットと記載例
    1. 1.絶対的記載事項の書き方
    2. 2.相対的記載事項の書き方
    3. 3.任意的記載事項の書き方
  4. 定款をスムーズに作成する3つの方法
    1. 1.テンプレート(ひな形)を活用する
    2. 2.自動作成システムを活用する
    3. 3.専門家に相談する
  5. 作成した定款はいつまで保管する?提出が求められた場合の対処法
  6. 定款の作成にかかる費用
  7. 定款は会社経営に欠かせない書類
  8. 電子定款とは?委任状ってなに?定款のよくある質問集
    1. Q1.会社の定款とは?何に使うもの?
    2. Q2.定款は誰でも確認できる?
    3. Q3.定款に提出義務はある?
    4. Q4.定款がない会社はどうなる?
    5. Q5.電子定款とは?どんなメリットがある?
    6. Q6.委任状ってなに?いつ使うもの?
    7. Q7.定款は誰が作るもの?
    8. Q8.定款の原本証明はどうやって用意する?
    9. Q9.定款の有効期間はいつまで?
    10. Q10.定款作成時のポイントや注意点は?
知っているようで知らない”定款”とは?起業するなら知っておくべき作り方
(画像=DESIGNARTS/stock.adobe.com)

定款とは?どんな場面で必要になる?

定款(ていかん)とは、会社の重要な規約をまとめた書類のことである。その重要性から「会社の憲法」とも呼ばれており、外部からでも読み取れるものが必要になるため、基本的な書き方が会社法において定められている。

定款が必要になる場面としては、主に以下のタイミングが挙げられる。

・新しい会社を設立するとき
・公的な補助金や助成金を申請するとき
・各種許認可を申請するとき
・法人口座を開設するとき

つまり、定款は起業前の段階で必要になるため、経営者は作成方法を理解しておかなくてはならない。

定款作成から会社設立までの流れ

定款の作成方法の前に、まずは会社設立の大まかな流れをおさらいしておこう。

定款はいつ必要になる? 作成の流れや記載例など気になるポイントをまとめて解説

会社設立は定款が必要になる最初のタイミングであり、公的な機関から細かいチェックを受けることになる。このときに不備があると、予定していた開業日に間に合わなくなる恐れがあるため、定款はスケジュールに余裕をもって作成することが重要だ。

定款のフォーマットと記載例

定款の作成時に必要になる記載事項は、大きく以下の3つに分けられている。

・絶対的記載事項
・相対的記載事項
・任意的記載事項

各事項にどのような内容を記載するのか、ここからは記載例も交えて定款のフォーマットを解説しよう。

1.絶対的記載事項の書き方

絶対的記載事項とは、会社を運営するうえで必要不可欠な情報のことであり、主な記載項目としては以下の5つが挙げられる。

定款はいつ必要になる? 作成の流れや記載例など気になるポイントをまとめて解説

上記のうち、ひとつでも記載されていない場合はその定款自体が無効となってしまう。誤字や脱字なども許されないため、一文字ずつ確認しながら作業を進めたい。

2.相対的記載事項の書き方

相対的記載事項とは、法的には記載の義務がないものの、記載しない限り効力が発生しない情報のことである。絶対的記載事項を補足するための項目であり、主に以下のような内容が記載される。

定款はいつ必要になる? 作成の流れや記載例など気になるポイントをまとめて解説

なお、会社の資産に大きな影響を及ぼすものは「変態設立事項」と呼ばれており、具体的なものとしては設立費用や発起人の報酬などがある。

3.任意的記載事項の書き方

最後に紹介する任意的記載事項にも、法的な記載義務はない。また、法的な効力をもたせる必要もないが、すでに決まっている内容については明記しておくことが望ましい。

では、具体的にどのような内容を記載するのか、以下で一例を紹介しよう。

定款はいつ必要になる? 作成の流れや記載例など気になるポイントをまとめて解説

上記のほかにも、一般的な会社設立では「株主総会の招集時期」や「配当金に関する事項」などの項目が記載されている。

定款をスムーズに作成する3つの方法

定款の作成には手間がかかるものの、工夫をすれば作業時間を大幅に短縮できる。ここからはスムーズに作成する方法をまとめたので、手間を省きたい場合はぜひ参考にしてほしい。

1.テンプレート(ひな形)を活用する

インターネット上で公開されているテンプレートを活用すれば、必要な情報を記載または入力するだけで定款を作成できる。必須項目の記載漏れも防げるので、印刷できる環境がある場合はテンプレートを積極的に活用したい。

ただし、テンプレートには「株式会社向け」や「合同会社向け」など、複数のタイプが存在する。また、テンプレートによって用意されている項目や文面が異なるため、設立する会社の種類や状況に合わせて使用するものを選ぼう。

2.自動作成システムを活用する

自動作成システムとは、必要な情報を入力するだけで独自の定款を自動作成してくれるサービスのこと。基本的な項目は網羅されているため、相対的記載事項や任意的記載事項が多い場合であっても問題なく活用できる。

ただし、定款の自動作成システムは有料であることが多く、サービスによっては他商品(会計ソフトなど)とセットになっている。そのため、各サービスのサポート内容や料金を細かく比較した上で、目的にぴったりなものを選ぶことが重要だ。

3.専門家に相談する

定款の作成にあたって不安を感じている場合は、専門家への相談もひとつの手になる。具体的な相談先としては、中小企業診断士や弁護士、行政書士、司法書士などがあり、相談先によっては作成を代行してもらうことも可能だ。

特に資本金額や発起人、株式に関する取り決めなどが多い場合は、さまざまな専門知識が求められる。専門家でないと作成が難しいケースも多々あるため、不安や悩みが生じたら無理をせずに相談することを検討しよう。

作成した定款はいつまで保管する?提出が求められた場合の対処法

起業時に作成した定款は、設立する会社が1部、公証役場が1部を保管する規則になっている。このうち、公証役場に提出したものは20年間保管されるが、会社で保管するものは期限が決められていない。

つまり、定款は会社を続ける限り保管するものなので、万が一紛失したらすぐに再発行をする必要がある。手続きは公証役場で行えるが、この方法で再発行されるものは原始定款のみであり、変更が加えられた現行定款は再発行できない。

なお、国や自治体などから定款を求められた場合は、原本証明つきのコピーを提出することが一般的だ。定款は外部への持ち出しが望ましくない重要書類なので、取り扱いや保管場所には注意が必要である。

定款の作成にかかる費用

株式会社を設立する場合、定款の作成・認証には以下の費用がかかる。

定款の作成にかかる費用

株式会社の設立時には、上記に加えて登録免許税や印鑑登録証明書代などがかかるため、合計では約20万円のコストが発生する。

また、変更した定款を登記する場合は、登録免許税(原則3万円)や変更手数料(1件につき5,500円程度)が必要になる。余計なコストを抑えるためにも、できるだけ変更が必要にならない定款を作成したい。

原始定款の再発行については、1枚あたり250円で請求をすることが可能だ。会社設立時に支払う謄本代と同額であるため、一般的な企業では2,000円程度と考えておけば問題ない。

定款は会社経営に欠かせない書類

会社経営において定款は欠かせないものであり、設立時をはじめ多くのシーンで提出が求められる。また、経営の軸となる書類であるため、本記事で紹介した内容はしっかりと覚えておくことが重要だ。

ただし、作成にあたっては専門知識が必要になることもあるので、不安を感じたら無理をせずに専門家への相談を検討しよう。

電子定款とは?委任状ってなに?定款のよくある質問集

最後に、ここまで解説しきれなかった定款の基礎知識をQ&A形式で紹介する。定款の作成に役立つ情報もあるので、ぜひ最後までチェックしてほしい。

Q1.会社の定款とは?何に使うもの?

定款(ていかん)とは、会社のルールや規則をまとめた重要書類である。国内企業には作成が義務づけられており、事業目的や商号、本店所在地、決算月などの情報を記載する。

定款は会社設立時のほか、補助金や助成金を申請するとき、法人口座を開設するときなどに使用する。また、税務署に「法人設立届出書(※)」を提出する際にも、添付書類として定款の原本が必要になる。

(※)会社の設立登記から2ヶ月以内に提出する書類。

Q2.定款は誰でも確認できる?

原則として、定款は国や自治体、債権者、株主に公開されるものである。一般向けに公開される書類ではないが、基本的な情報(事業目的や取締役など)については登記事項証明書で確認することが可能だ。

登記事項証明書は、その会社を管轄する法務局から誰でも請求できる。ただし、記載内容はあくまで基本情報のみであり、定款そのものを第三者が閲覧することはできない。

Q3.定款に提出義務はある?

株式会社を設立する場合は、公証役場から認証された定款を法務局に提出しなければならない。また、以下の手続きにおいて定款の原本証明が求められることもある。

○定款の原本証明が求められる主な場面
・許認可の申請
・補助金や助成金の申請
・法人口座の開設
・金融機関との大口契約
・貸金庫サービスの契約

定款は証明書類の一種であるため、作成時には不備がないように注意したい。

Q4.定款がない会社はどうなる?

定款がない企業は、公的な手続きや金融機関との取引ができなくなる恐れがある。そのため、もし定款を紛失した場合は再発行の手続きをしなければならない。

定款の再発行は、株主総会の議事録や登記情報などを元に行うケースが一般的である。また、会社設立時に提出した原始定款は、公証役場で20年間保管されているため、紛失に気付いたら早めに問い合わせよう。

Q5.電子定款とは?どんなメリットがある?

電子定款とは、従来の書面による定款をデータ化(PDF化)したものである。かつては書面の定款しか認められていなかったが、現在では電子定款でも会社設立の手続きを済ませることができる。

電子定款には「印刷コストがかからない」「印紙代が不要」などのメリットがあるものの、一度提出をすると修正に手間がかかる。また、再申請をする場合は費用が発生することもあるので(※株式会社の場合は約5万円)、提出前には徹底的な見直しが必要となる。

Q6.委任状ってなに?いつ使うもの?

会社設立の手続きは原則として発起人が行うものだが、何らかの事情で代理人を立てる場合は、その旨を記載した「委任状」を事前に作成しておく。記載内容は使用するシーンによって若干異なるが、例えば定款の認証(書面)では主に以下の情報を記載する。

・代理人の住所と氏名
・発起人の住所と氏名
・代理人に委任する権限の範囲

ちなみに、弁護士などの専門家に手続きを代行してもらう場合も、委任状の提出が必要になる。

Q7.定款は誰が作るもの?

定款の作成者は、一般法人法において「会社設立時の社員」と定められている。すべての社員が作成に携わることが難しい場合は、ほかの社員が代理になったり、外部の専門家に委任したりする方法でも問題ない。

ただし、ほかの社員に代理をしてもらう場合であっても、委任状の作成義務がある。

Q8.定款の原本証明はどうやって用意する?

金融機関での口座開設時や、補助金・助成金を申請する際などには、定款の原本証明が求められる。原本証明はもとの定款をコピーするだけで用意できるが、余白に次の文面を記載する必要があるため注意しておきたい。

定款はいつ必要になる? 作成の流れや記載例など気になるポイントをまとめて解説

ちなみに、公的機関や金融機関などから原本証明を求められる場合は、ほとんどのケースで「現行定款(※最新の定款)」のコピーが必要になる。

Q9.定款の有効期間はいつまで?

定款に有効期限はなく、いつ作成したものでも会社設立の手続きに使用できる。ただし、作成時点から内容に変更があった場合や、あまりにも時間が経過している場合は、定款の再認証が求められる可能性もある。

定款は認証する度に手数料がかかるため、基本的には作成から日が経ってないものを提出することが望ましい。

Q10.定款作成時のポイントや注意点は?

定款作成時の注意点としては、以下のポイントが挙げられる。

○定款作成時の注意点
・資本金の額によって消費税の負担が変わる
・事業目的に記載がない事業は無効になる恐れがある
・本店所在地は最小行政区までの記載に留める(番地等は不要)
・決算の時期(事業年度)と繁忙期が重なると業務負担が大きい

定款は「会社の憲法」と呼ばれる書類であり、事業活動に関するルールは定款をもとに判断される。法的効力もある書類なので、後の活動に支障が出ないように作成することが重要だ。

著:片山 雄平
1988年生まれのフリーライター兼編集者。2012年からフリーライターとして活動し、2015年には編集者として株式会社YOSCAに参画。金融やビジネス、資産運用系のジャンルを中心に、5,000本以上の執筆・編集経験を持つ。他にも中小企業への取材や他ライターのディレクション等、様々な形でコンテンツ制作に携わっている。
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