矢野経済研究所
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2021年の紙・板紙の製紙メーカー出荷量(国内出荷+輸出)は増加見込みも、本格回復には至らず

~紙・板紙の各品種における回復度合いの差も鮮明になる見込み~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役:水越孝)は、国内外の紙・板紙市場を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

紙・板紙の出荷量推移・予測

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1.市場概況

 日本製紙連合会資料によると、2020年(2020年1月~12月)の紙・板紙の製紙メーカー出荷量(国内出荷+輸出)は、前年比8.2%減の2,309万tとなった。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、経済活動が停滞、紙・板紙の各品種は軒並み近年にはない減少幅となっており、出荷量はリーマン・ショックの影響を受けた2009年以来の大幅減少となった。段ボール原紙は国内出荷量は低迷したものの、輸出量が急拡大したことによりプラス成長となったため、2020年は板紙の出荷量構成比が初めて紙の出荷量構成比を上回った。コロナ禍において、需要構造の変動が加速している。

2.注目トピック

王子グループを除く主要メーカーが値上げを発表

 王子グループを除く主要洋紙メーカーでは、2022年1月出荷分より、印刷・情報用紙、白板紙等の値上げを発表、またレンゴー、大王製紙、日本製紙においては、2022年2月出荷分より段ボール原紙やクラフト紙等の値上げを発表している。これは、昨今の原燃料価格や物流費の高騰により、生産コストを自助努力では吸収出来なくなったことによる。
特に洋紙メーカーにおいては、需要が先細る中での生産コスト上昇は、先々の状況を視野に入れると看過できなかったと見られる。今回の発表は、各メーカーの需要の先行きに対する危機感の表れとも言える。
また、2050年を期限とした脱炭素化(カーボンニュートラルの実現)という重要課題が浮上したことも大きい。この課題解決のために、将来、各メーカーのコスト負担は確実に増す。厳しい市場環境の中で、新価格が市場に浸透するか、注目される。

3.将来展望

 2021年の紙・板紙の製紙メーカー出荷量(国内出荷+輸出)は、前年比2.6%増の2,369万t程度となる見込みである。日本経済の持ち直しとともに需要は回復しつつある中、前年、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって大幅減となった紙・板紙の出荷量は増加する見通しである。しかし一方で、コロナ禍前の2019年と比較すると、国内出荷量については全品種において、2019年の出荷量を下回る見込みである。また、各品種の回復度合いに差が出ており、特に印刷・情報用紙や新聞用紙などのグラフィック用紙の回復が遅れている。

 2022年の紙・板紙の製紙メーカー出荷量は、前年比3.2%増の2,445万tになると予測する。板紙については、白板紙は微減から横ばい基調で推移すると見られるものの、段ボール原紙は大規模な天候不順等がなければ、世界的な需要の高まりに引っ張られる形で、増加推移すると予測する。一方、情報媒体としての紙は、本格的な経済回復に後押しされ、増加で推移すると見られるものの、その増加幅は小幅にとどまり、出荷量はコロナ禍前の水準には戻らないと予測する。

調査要綱

1.調査期間: 2021年10月~12月
2.調査対象: 紙パルプメーカー、紙および紙製品等の流通業者、総合商社、新聞社、紙器・紙製品メーカー、その他関連業者
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリング調査、郵送アンケート調査、ならびに文献調査併用
<紙・板紙市場とは>
紙市場は新聞用紙や印刷・情報用紙、包装用紙、トイレットペーパーなどの衛生用紙、工業用・家庭用雑種紙を、板紙市場は段ボール原紙や紙器用板紙、雑板紙を対象とし算出されている。2008年から2020年までの実績値は日本製紙連合会資料より引用、2021年見込値および2022年予測値は矢野経済研究所推計値。
<市場に含まれる商品・サービス>
紙・板紙、製紙原材料(チップ、パルプ、古紙)、製紙用薬品(情報用紙薬品、サイズ剤、表面サイズ剤、紙力増強剤、コーティング顔料・填料、バインダー薬品等)、国内業界別需要動向(新聞、出版、印刷、通販、段ボール、紙器、紙製品)、国内主要紙・板紙代理店販売ランキング、世界55カ国の紙・板紙・パルプ生産量

出典資料について

資料名2022年版 紙パルプ産業白書
発刊日2021年12月28日
体裁B5 1009ページ
価格(税込)143,000円 (本体価格 130,000円)

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