矢野経済研究所
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2030年度のローカル5Gネットワークを活用した国内ソリューション市場規模を650億円と予測

~コロナ禍の影響でローカル5Gソリューションの実証試験/PoCが後ろ倒しへ、商用化/実装は2024年度から2025年度以降となる見通し~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の5Gソリューション市場を調査し、製造、建設、物流、医療、セキュリティ、社会インフラ、スタジアム/ライブソリューションなど分野別の5G活用およびIoT型ソリューションの普及動向、将来展望を明らかにした。ここでは、ローカル5Gソリューション市場予測、分野別の普及動向などについて公表する。

ローカル5Gソリューション市場規模予測

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1.市場概況

5G(第5世代移動体通信サービス)は、従来の3Gや4G/LTEなどに比べて高速・大容量、低遅延、多接続などの機能に大きな強みを持つ。一般企業や地方自治体、学校法人などの敷地内や建物内など特定範囲(狭域)限定で構築されるローカル5Gネットワークにおいても、そのメリットを生かした映像配信や、遠隔作業支援、多接続に対応したIoT(Internet of Things)型ソリューション、特定エリア内でのAGV(無人搬送車)、ロボットなどに利用されていく見通しである。

ローカル5G活用への期待の大きい分野は製造業である。製造業では今後、デジタル工場がターゲットの一つになっており、特にCPS(Cyber-Physical System)の実現がポイントになる。製造業でのCPS実現においては、ローカル5Gの活用が肝要と考える。大量データの収集・処理を可能にするローカル5Gは、CPS実現には不可欠のテクノロジーで、この両者が並立して本格的なデジタル工場が実現する。
その他分野でも、i-ConstructionなどでICTソリューション活用を進めている建設業、遠隔医療/遠隔手術/遠隔診断用途が期待される医療分野、都市マネジメント向けにリアルデータを迅速・最適な形で反映することが必要なスマートシティなどもローカル5Gの活用分野として有望視される。
現状、ローカル5Gは免許取得した大手ITベンダーを中心に開発が進んでおり、当面は各ベンダーの自社工場や事業所などでの実証試験/PoC(概念実証)を中心にユースケース(Use Case)を積み上げ、その後に商用化(外販)や外部への実装が増えていくことが想定されている。

2.注目トピック

ローカル5Gを活用した製造/工場向けIoTソリューション

工場現場では、現在でも多様なIoTソリューションが活用されている。この既存IoTを5Gネットワークに置き換えることで現在の仕組みが高度化し、従来のIoT(4G/LTEベース)では実現が難しかった、大量データの収集や低遅延化によるAGVの自動運転、画像ベースでのトータル品質保証といった取り組みが実現すると考える。

具体的には、遠隔監視・モニタリングや検品・品質保証、環境計測(温湿度等)、現場作業者の作業支援、教育・研修/トレーニングなど、IoTのさまざまな用途での5G活用が見込まれる。このように、工場でのIoT活用を目指す上で、5Gネットワークが持つ特徴は武器になる。
当面は、ローカル5Gの基盤となるIoTの普及が優先されるが、2025年頃には工場でのIoT活用も本格化し始めると見られ、その頃には5Gベースの工場IoTも登場すると考える。
つまり、製造/工場向けローカル5Gでは、既存の工場向けIoTを更新する過程で、ローカル5Gを含めた5G型IoTが普及する可能性が高い。また用途によっては、初めからローカル5G仕様の工場となるケースも想定出来る。

3.将来展望

ローカル5Gソリューション市場は2020年度から立ち上がっているが、コロナ禍の影響で休止や延期・順延になるプロジェクトもあり、ほぼテスト導入や実証試験/PoCの段階に止まった。2021年度においてもPoC主体である点は変わらないが、徐々に実装段階のプロジェクトも現出している。
ローカル5Gは、2025年度以降、製造や工場現場を中心に建設、医療、スマートシティといった分野が牽引して実装が本格化し、2030年度のローカル5Gソリューション市場(事業者売上高ベース)を650億円になると予測する。

調査要綱

1.調査期間: 2021年9月~2022年1月
2.調査対象: ITベンダー、移動体通信事業者、インフラ事業者、ユーザ企業、地方自治体など
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話による調査、郵送アンケート調査、ならびに文献調査併用
<ローカル5Gとは>
ローカル5Gとは、MNO(移動体通信事業者)が広域で提供する5G(第5世代移動体通信サービス)とは異なり、一般企業や地方自治体、学校法人などが総務省に免許を申請し、団体の敷地内や建物内など特定範囲(狭域)限定で構築する、5Gのプライベートネットワークをさす。
従来の4G/LTEやWi-fi、有線LANなどの通信ネットワークと比較すると、5G回線としての高速・大容量(映像配信や製造機械での大量データ対応)、低遅延(協働ロボットや診療など遠隔作業支援)、多接続(スタジアムでの参加型アミューズメントや交通流等の都市データ対応)などのメリットがあり、IoT(Internet of Things)型ソリューションや特定エリア内でのAGV(無人搬送車)、ロボットなどでの利用が期待される。
<ローカル5Gソリューション市場とは>
本調査におけるローカル5Gソリューション市場とは、ローカル5Gネットワークを構築するためのシステム/アプリケーション開発費、通信モジュール、端末/デバイス、電波利用料/回線利用料・通信費、プラットフォーム/クラウド利用料、運用管理費などを対象として、それらのハードウェア、ソフトウェア、サービスなどを提供する事業者の売上高ベースで算出した。
但し、ローカル5Gネットワークのインフラ設備(基地局など)の費用や工事費は含んでいない。
<市場に含まれる商品・サービス>
システム/アプリケーション開発費、通信モジュール、端末/デバイス、電波利用料/回線利用料・通信費、プラットフォーム/クラウド利用料、運用管理費など

出典資料について

資料名2022 ローカル5Gビジネスマーケット調査 ~2025~2030年を見据えたローカル5Gマーケットの将来予測~
発刊日2022年01月27日
体裁A4 263ページ
価格(税込)198,000円 (本体価格 180,000円)

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