社員数100人以下,経営学
(写真=G-Stock Studio/Shutterstock.com)
黒坂 岳央
黒坂 岳央(くろさか・たけお)
水菓子肥後庵代表。フルーツビジネスジャーナリスト。シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、東京で会社員を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。ビジネス雑誌やニュースサイトでビジネス記事を書いている。著書に『年収1億円超の起業家・投資家・自由業そしてサラリーマンが大切にしている習慣 “億超えマインド"で人生は劇的に変わる!』など。

日本にある企業の99.7%が中小企業だ。かくいう私も中小企業の経営者であるが、正直大学や大学院で学ぶ「経営学」はほとんどの中小企業にとって必要がない。なぜなら、社長である自分が売上を作らなければ、会社はたちまち潰れてしまうからだ。

大企業は経営学が必須

筆者は過去に、グループ全体の従業員2万人、売上1兆円超の企業で会社員をしていた。色々な業務を経て、最後に働いていたのは国際経営企画部門だ。ここでは、全社員が使用することになる新たなシステムの導入や、ユーザーのトレーニング管理、他国オフィスのビジネスのベストプラクティスを取り入れ、また他国へ水平展開をする仕事をやっていた。

毎日取り組んでいたのは経営理論に次ぐ、理論である。PPT(People-Process-Technology)とか、OE(Operational Excellence)といった横文字が踊り並び、MBAホルダーや、外資系コンサルからの出向社員がこうした理論を会社に導入し、評価、改善をしていた。

多国籍で、様々なバックグラウンドを持つ従業員に同じ方向を向いてもらうには、経営学の理論そのものに正当性を語ってもらう必要がある。一介の担当者が声を上げたところで誰にも振り向いてもらえないが、「これは米国本社で◯%のコスト削減を得た◯◯というビジネスプロセスで」といえば耳を傾けてもらえる。

もちろん、会社によってもスタイルは様々であるし、最後はパッションも関係してくるものだ。しかし、大企業においては往々にして人を動かすには理論と数字である。多様な社員に動いてもらうためには、経営学が必要なのである。

中小企業に経営学はいらない

このようなことを言うと、多少語弊があるかもしれないが、従業員数が少ない中小零細企業にはMBAで学ぶような高度なビジネス理論、経営学はいらないだろう。筆者は大企業から、従業員10人程度の経営者へ転身をしてそう感じる。

強く、変化に対応可能でスピーディーな中小零細企業の特徴としては、イノベーティブな社長の存在があげられる。少数精鋭の会社の中で、社長ほど売上を作る力のある存在はない。やれコンプライアンスだ、やれビジネスプロセスだと一人ひとりに理解させるために悠長に研修をしていては、売上を作る前に会社がなくなってしまう。

そのため、小さな会社では社長が一人で従業員全員分を食わせるくらいの営業力を持っている必要があるし、トップダウンで従業員に社長の意向と目指すべき未来を示して、全員を牽引するパワフルさが必要だ。

そう考えると、小さな会社に経営学はいらない。むしろ、パワフルでワンマンに突き進むプレーヤーである社長の意思を理解し、共感し、ついていく力こそが組織の売上を最大化させるために必要だろう。

経営学は大きくなる時に必要

筆者は過去に小規模ベンチャーで働いていた経験もある。その頃はとにかく社長が売上を作り、従業員はついていくのに必死だった。しょっちゅう、会社に泊まり込みをしていたし、土曜日も出勤、日曜日は休みだが度々出社もあった。人によっては「ブラック企業」と呼ばわれても仕方がないと思えるようなハードワークな環境だ。

だが、そんな企業も徐々に売上が安定し、「残業をする時は上長に承認を得てから」など普通の会社では当然存在する仕組みが入り、体制を整えるようになっていった。賛否両論あると思うが、会社はこのように「無法地帯→徐々に整えて安定稼働」というプロセスを経るくらいでいいと思っている。

もちろん、法律違反を堂々としなさい、ということをいうつもりもないが、最初から経営学の理論を導入してカッチリ整えるとなると、売上が上る前に会社がなくなってしまう。経営学とは、会社が大きくなるプロセスで段階的に取り入れるものであって、それまではとにかく社長は売上を作るプレーヤーで良いだろう。

文・黒坂 岳夫(水菓子肥後庵代表 フルーツビジネスジャーナリスト)