2022年度の税制改正まとめ!経営者が知っておくべき3つのポイント
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2022年度の「税制改正大綱」が、与党である自民党と公明党の両党から発表され、その後、閣議決定された。読んで字のごとく、2022年度にどのような税制改正を行うかという方針が書かれている。民間企業に関する税制も変わるため、経営者は内容をよく理解しておきたい。

税制改正の流れについておさらい

日本では与党が税制改正の大綱をまとめ、その大綱が閣議決定されたあと、大綱に沿って作成された国税の改正法案と地方税の改正法案が国会で審議される。国会の審議を経て改正法案が成立したら、法案の中で定められた日付から改正法が施行されるという流れだ。

2022年の通常国会は1月17日に召集されて審議が開始する見込みで、その後、改正法案の審議が衆議院と参議院で行われる。そのため、現時点では大綱自体は何の効力も持たないが、いずれ成立することを考慮し、経営者としては早い時期から対策を講じておきたいところだ。

岸田内閣は「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとして掲げている。実際にどのような大綱の内容になっているのか、特に経営者に必要な項目をピックアップして紹介していこう。

賃上げ税制では、法人税からの控除率の引き上げ

法人課税に関する内容で2022年度の税制改正の最も注目すべき点は、「賃上げ税制」に関する内容と言えるのではないか。簡単に言えば、賃上げを積極的に行った企業に対して法人税の控除率を引き上げる、という内容だ。中小企業の場合は最大で40%、大企業の場合は最大で30%、控除率が引き上げられる計画となっている。

ただし、このような控除率の引き上げ措置の適用を受けるためには、資本金額や従業員の人数が一定以上の企業の場合、給与を引き上げる方針をインターネットなどで公表する必要がある。経営者としてはそれらの手続き面についても知っておきたいところだ。

上記のような情報を知っていなければ、「法人税の節税のためにせっかく賃上げしたのに、まさか適用されない事態になるなんて…」と、あとからため息をつくことになりかねない。

中小企業における交際費の損金算入の期間を延長

基本的に法人の「交際費」は損金に算入できないこととなっている。ただし、中小企業に関しては少し話が変わってくる。中小企業の場合は顧客開拓の手段が限定されていることもあり、以前から一定範囲内において交際費を損金として算入することが認められてきた。大綱ではこの措置を2年間延長することが盛り込まれている。

2年間延長することになった背景には、コロナ禍によって飲食業などを営む企業の業績が落ち込んだことが挙げられる。当然、交際費を損金として算入できる方が、積極的に新規顧客の開拓といった販売促進に交際費を使うことができるからだ。

オープンイノベーション促進税制の延長や拡充

経営者であれば「オープンイノベーション促進税制」について知っている人も多いと思う。スタートアップ企業に対して出資を行った場合、一定条件を満たせば投資額の25%に相当する金額について所得控除を受けることができるようになる、という制度だ。

2022年度の税制改正大綱では、このオープンイノベーション促進税制の内容を一部見直した上で、制度を2年間延長することが盛り込まれている。

見直される点の1つが、出資先となるスタートアップ企業の要件だ。これまでは設立日から10年未満の企業であることが条件だったが、売上高に占める研究開発費の割合が10%以上で、なおかつ赤字の企業の場合、設立日からの期間が「15年未満」まで拡充される形となる。

個人所得課税や資産課税に関する内容も

このほかにも「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」に関わる見直しや、中小企業を対象とした所得拡大促進税制の適用期限の延長など、経営者が知っておきたい税制改正の内容は多数ある。その中でもこの記事で説明した3点は特に重要なので、よく理解しておきたい。

ちなみに、2022年度の税制改正大綱では、当然ながら法人税だけではなく、個人所得課税や資産課税、国際課税などについての内容も盛り込まれている。

例えば、個人所得課税や資産課税に関しては、住宅借入金などを有している場合の所得税額の特別控除の適用期限や、住宅取得等資金の贈与を直系尊属から受けた場合の適用期限が延長されることなどが挙げられる。

納税や取引記録に関する内容も知っておきたい。一つ例を挙げると、2022年1月から電子取引の記録は電子保存することが求められる。しかし、2022年1月から2023年12月の期間内における電子取引については、一定条件を満たせばその義務が猶予されることが明記されている。

積極的に改正内容を理解するようにしよう

税理士事務所などと契約している場合、経営者は税に関して疎くなりやすい。しかし、税制改正の内容に関しては単に節税などのためだけではなく、経営判断のために知っておくべき内容もあるため、積極的に改正内容を理解するようにしたい。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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