税務調査,個人事業主,特徴
(写真=ベンチャーサポート税理士法人編集部)

「税務調査」と聞いて、「うちの会社には関係ない」と多くの人が思われるかもしれません。

しかし、実際には毎年約20万件もの税務調査が行われているのですから、決して自分の会社は無縁というわけではありません。

ここでは、そもそも税務調査とはどのようなことをするのか、そして税務調査を受けやすい個人事業主の特徴とは何かを詳しくご説明いたします。

税務調査とは

税務調査とは、税務署が納税者に対して、税務申告が適正に行われているかを実際に訪問して、調査するものです。

統計によると、毎年全国の会社、法人、個人事業主の約6%が税務調査を受けていますから、15年に1回程度は自分の会社などに調査が来るという計算になります。

そう考えれば、自分の会社には税務調査が来ないだろう、自分とは無縁だ、という考えが間違っていることがわかると思います。

ところで、税務調査には、「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。

まず任意調査ですが、これは文字どおり納税者の任意に任せる税務調査です。

特に脱税の疑いがなければ、基本的にこの任意調査が行われることなります。

この任意調査が行われる場合には、事前に調査に入る旨の電話連絡があります。

ただ任意とは言っても、訪れる職員に質問検査権がありますから、質問に黙秘したり、虚偽の申告をしたりすれば、罰則の対象となります。

これは、警察の職務質問に似ています。

職務質問も任意ですから、警察官の質問に対して必ず答えなければいけないわけではありませんが、逆に頑なに拒否をしてしまうと、面倒な立場に自らを追い込むことになってしまいます。

ですから、任意調査と言っても、職員に対しては、真摯な態度で臨み、聞かれた質問に対しては、簡潔化かつ的確に答えた方が、結局は自分の立場を守ることになります。

一方、強制調査ですが、これは任意とは違って「強制」ですから、事態はかなり深刻だと認識する必要があります。

この強制調査を担当するのは、国税局査察部、いわゆる「マルサ」です。

以前、伊丹十三監督の映画で「マルサの女」というのがありました。

この映画の主人公は、国税庁査察部の女性、いわゆるマルサの女ですが、彼女が脱税をしている疑いが濃厚な会社に調査を入るというストーリーです。

様々な手段で脱税を行っている会社の不正が、映画の中で描かれていますが、監督の伊丹氏は、十分なリサーチを行った上で、制作したとのことですから、いずれも事実だということです。

この強制調査の対象は、脱税の隠蔽工作が悪質である案件、あるいは脱税額が1憶円を超えている案件で、実際に裁判所の令状に取った上で、調査が行われるということです。

従って、調査を拒否したり、妨害したりすると、処罰の対象となります。

つまり、強制調査が来た段階で、かなりの裏取りが行われており、調査を受ける側は観念するしかないということです。

特徴①:申告していない

一つ目の税務調査を受ける個人事業主の特徴としては、税務申告をしていない個人事業主です。

税務申告することは、自分の会社の一年間の売り上げ、一年間の経費を公表することになり、それを税務署が見てチェックすることです。

そうなると、「雉も鳴かずば撃たれまい」ではありませんが、申告自体をしなければ、何も始まらないのではと考える人がいるかもしれません。

しかし、申告をしなければそもそも税務署に目を付けられることはないのでは、などと決して思っていけません。

例えば、自分の取引先に「税務調査」が入った場合に、当然その会社と自分の会社との取引やその金額が明らかになります。

そして例えば、その相手方の会社から自分の会社が年に100万円程度受注しているはずなのに、自分の会社の売り上げが100万円も申告していなかったら、確実に申告漏れが疑われます。

つまり、自分が税務申告をしていなくても、取引先の税務申告や税務調査によって、自分の会社の売上高がある程度わかってしまうわけです。

会社の売り上げを上げるには、会社、あるいは個人と取引を行い、受注、発注に基づいて現金の出入りが行われなければならず、そこには、お金の動きを示す「領収書」や振り込みと言った証拠品が存在します。

ですから、いくら自分の会社で売り上げを過少申告しても、取引の相手方にその証拠品がある以上、言い逃れはできなくなります。

このように、取引先からの調査によって自分の会社が税務調査されることを「反面調査」と言います。

つまり、申告していなければ、自分の会社の存在そのものが知られることはないのだから、税務調査に入られることはない、というのはまったくの間違いです。

現在では、税務署でもIT化が進んでいて、あらゆる資料を蓄積した上で、一つ一つの会社、法人、個人事業主を調査するための資料を持っていると思って間違いないと思います。

なお、申告していない、あるいは申告漏れしているなどに対しては、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課されますが、これは、本来の納めるべき税金の他に10~30%程度になります。

しかも延滞税は、年率にして14.6%と、かなりの高率ですから、無申告、申告漏れ、滞納がいかに厳しい処分かがわかると思います。

特徴②:売り上げが伸びている

二つ目の税務調査を受ける個人事業主の特徴は、売り上げが伸びている個人事業主です。

売り上げが伸びているということは、事業規模が大きくなっていることを意味しますから、それに比例して修正箇所も増加していると考えられるのです。

修正箇所が多ければ多いほど、申告漏れ、修正申告の可能性が大きくなり、税務調査に入る意義が大きいということになります。

税務署の職員の数は限られていますから、やはり修正申告の可能性が大きい会社を調査することになるのです。

また、売り上が伸びているということは、今までのような細かい税務申告の作業に手が回らず、つい手抜きをしているのではないかとも思われます。

また、売り上げが伸びることで、従業員を増やすなどの人件費が増加する可能性もあります。

それと同時に、社会保険料、旅費交通費など、他の経費が増える可能性もあります。

その際に、増加額が妥当かどうかという観点でも調査されます。

そう考えると、赤字を計上している個人事業主の所に税務調査が入る確率はかなり低くなります。

ただ、いくら赤字と言っても、収入の額に比べて経費が異常に高いとか、接待交際費だけが突出しているなど、不審な点があれば、当然調査の対象になります。

特徴③:売り上げに不審な数字がある

三つ目の税務調査を受ける個人事業主の特徴は、数字に不審な点がある個人事業主です。

個人事業主の場合、取引先が、一年間の取引の合計額を毎年「支払調書」という形で税務署に提出しています。

ですから、この支払調書を作成するような会社と取引している場合には、自分の会社の売上額がほぼ判明していると思っても構いません。

つまり、売り上げとは、他の会社などとの関係から生じるものですから、虚偽はすぐにわかってしまいます。

従って、売り上げを過少に申告した場合には、すぐに税務署にわかってしまうことになり、税務調査が入る可能性があります。

特徴④:経費に不審な数字がある

以上は売り上げ、つまり収入に関することですが、他にも、経費について不審な計上があれば、税務調査に入られる可能性があります。

例えば、不動産の賃貸業なのに、あまり関係のない「接待費」や「旅費交通費」などの経費が多額に計上されているのは、不審に思われます。

特に、会社の経費とプライベートの出費との線引きが難しい経費で、領収書が保存できるものが多額の場合は、要注意です。

例えば、個人事業主の場合、自宅の一室を事務所として使用していることがあると思います。

この場合、個人的にマンションを賃借していても、その一室分を「地代家賃」として計上することは認められています。

しかし、家賃の全額を経費とすることはご法度です。

さらに、他の科目に入れられない経費を「雑費」として計上することがありますが、この雑費が他の科目と比べて異常に高額な場合も、目を付けられる要因となります。

同じく、携帯電話やインターネット代は「通信費」として計上しますが、自分が個人的に使用する携帯電話などの分も含めてしまうことは認められません。

また、何かを仕入れて販売する事業なのに、「棚卸資産」がまったくないなどの数値について、目を付けられることになります。

税務調査を受けないために

それでは、税務調査を受けないような税務申告を行うには、どうすればいでしょうか。

それは、申告際に税の専門家である税理士に代行してもらう、あるいは相談することです。

自分で確定申告をしたことがある人はわかると思いますが、「確定申告書」の表紙(第一表)の右下に、担当した税理士の署名欄があります。

ここに税理士名がない場合には、納税者本人が申告したことになります。

税務署は、ここに税理士名があれば、税理士の指導の下で申告をしていると認め、信用度が増すことになります。

逆に言えば、税理士名がなく、自分で申告しているような場合には、税理士のチェックが入っていないことになりますから、申告漏れ、記入漏れなどの可能性を考えます。

その結果、一度税務調査に入ろうということになりかねません。

税理士に申告をお願いすると、報酬が発生しますから、自分で申告したら節約になると考える人がいるかもしれません。

しかし、税理士は税の申告だけが仕事ではなく、経費の内容を精査したり、記帳を代行したり、節税方法のアドバイスに乗ってもらうこともできます。

また、申告の方法によっては、「青色特別控除」と言って65万円の控除を受けられる可能性もあります。

そうなると、税理士に報酬を支払っても十分に費用対効果があるということになります。

まとめ

税務調査は自分の会社には無縁という考え方は危険です。

税務署は、税務申告を見るプロですから、不審な点、数字があれば、すぐに不自然だ、おかしいと感じます。

いつ調査が入ってもいいように、帳簿を整理し、適正な申告を行うことが必要です。(提供:ベンチャーサポート税理士法人