融資の種類と特徴を解説!無担保融資や制度融資など経営者が知っておきたいことまとめ
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事業を営んでいくうちに融資の利用を考える経営者は多いのではないだろうか。しかしひとくちに融資といってもさまざまな種類がある。そのためできれば無担保や無利子など「借りやすい」「返済しやすい」といった融資を選択することが好ましい。ただし公的融資・民間融資ともにメリットやデメリットがあるため、それぞれの特徴を知っておくことが大切だ。

そこで本記事では、公的融資や民間融資、さまざまな融資の種類や特徴を整理して紹介する。それぞれのメリットやデメリットを理解し融資利用に活かして欲しい。

目次

  1. そもそも融資とは?
  2. 融資の種類
    1. 1. 日本政策金融公庫の融資
    2. 2. 小規模事業者経営改善資金融資制度(マル経融資)
    3. 3. 制度融資
    4. 4. プロパー融資
    5. 5. ノンバンクの無担保融資
  3. 公的融資と民間融資の違いを特徴
    1. 1. 公的融資
    2. 2. 民間融資
  4. 融資を受ける手順
    1. 1.融資の申込先を決める
    2. 2.書類をそろえる
    3. 3.融資担当者に連絡
    4. 4.審査を受ける
  5. オンライン融資の検討も
    1. 主なオンライン融資(銀行、企業)を紹介
  6. 自社の事情に合った融資先を選ぼう

そもそも融資とは?

融資とは、その字が表す通り「資金を融通すること」だ。資金調達方法は、大きく分けると「出資」「融資」「社債」「助成金・補助金」といったものがある。そのうち融資は「事業資金の貸付制度」のことを指す。資金を借りる事業者側にとっては「融資を受ける」「融資を利用する」というのが一般的だ。なお融資とひとくちにいってもその種類は多岐にわたる。

例えば「公的融資」「民間融資」といった言葉を耳にしたことがある経営者も多いだろう。国や自治体、公的機関、銀行などのさまざまな機関が貸付を行っており、創業資金や運転資金、設備資金など資金の目的に応じた融資がある。また担保や保証(人)の必要有無も融資の種類によってさまざまなため、自社の事情に合致した融資を選ぶことが必要だ。

融資の種類

まずは、代表的な融資の種類を紹介する。それぞれの特徴やメリット・デメリットを確認しておこう。

1. 日本政策金融公庫の融資

日本政策金融公庫は、国が100%出資している金融機関である。一般の金融機関が行う金融を補完し、国民一般、中小企業者、農林水産業者の資金調達支援の目的で金融機能を担う。そのため基本的に無担保・無保証人で利用できるなど以下のように信用度に不安がある人でも借りやすいのが特徴である。

  • これから事業を始める人
  • 事業開始してまだ間もない人
  • 廃業歴がある人
  • 売上減少など業況が悪化している人など

融資制度の種類は、多岐にわたるが例えば以下のような制度がある。

【小規模企業向け】
・一般貸付
事業を営む人への貸付(ほとんどの業種で利用可)

・新規開業資金
新たに事業を始める人または事業開始後おおむね7年以内の人への貸付

・経営環境変化対応資金
売上が減少するなど業況が悪化している人への貸付

・新型コロナウイルス感染症特別貸付
新型コロナウイルス感染症の影響により売上が減少するなど業況が悪化している人への貸付

【中小企業向け】
・女性・若者・シニア起業家支援資金
女性または35歳未満か55歳以上の人で新たに事業を始める人または事業開始後おおむね7年以内の人への貸付

・中小企業経営力強化資金
外部専門家の指導や助言、または「中小企業の会計に関する基本要領」などの適用により、経営力の強化を図る人への貸付

他にもIT活用や海外展開、経営多角化などさまざまな目的に応じた融資制度が設けられている。融資制度や資金使途、融資期間、担保有無などに応じて適用利率は異なるが基本的に低めなので利用しやすい。一方で「審査に時間がかかる」といわれているため、余裕を持った資金調達が必要だろう。

2. 小規模事業者経営改善資金融資制度(マル経融資)

小規模事業者経営改善資金融資制度(マル経融資)も日本政策金融公庫が行う融資制度の一つだ。この融資は、商工会議所や商工会などの経営指導(原則6ヵ月以上)を受けている小規模事業者の商工業者が、経営改善に必要な資金(運転資金・設備資金)を無担保・無保証人・低金利で利用できるというもの。ただし利用に当たっては、商工会議所会頭、商工会会長等の推せんが必要となる。

3. 制度融資

制度融資は、融資利用者の負担軽減や円滑な資金調達を図ることを目的に地方自治体・銀行などの民間金融機関・信用保証協会が連携して行う融資制度である。中小企業や個人事業主が金融機関に融資を申し込む際に、信用保証協会がその連帯保証を受託することで融資が実行される。

地方自治体は、融資の利用者が信用保証協会に支払う信用保証料の補助や金融機関に対して貸付原資の預託といった役割を担う。地方自治体ごとに融資要件や内容が異なるが基本的に無担保・低金利という特徴がある。信用保証協会が保証することで金融機関から融資が実行されやすい点は、メリット。しかし保証を受けられるかどうかは、保証協会の審査結果次第となる。

利用申込者にもよっても異なるが、審査は2週間〜2ヵ月と長めの期間が必要だ。場合によっては、申請額に対して減額回答のケースもある。なお万一金融機関への返済が継続して滞ってしまった場合、信用保証協会が金融機関に代位弁済するが、利用者は信用保証協会に対して代位弁済した借入金の残債の一括返済が必要だ。

保証協会の保証は、あくまで金融機関に対する「保証」で「保険」とは性格が異なる点に注意しておきたい。

4. プロパー融資

プロパー融資は、民間金融機関が直接融資する方法だ。これまで紹介した融資と比べて自治体や保証協会などを通さないため、審査・融資の決定可否が早いのが特徴。融資限度額や返済期間などは、民間金融機関が決定するため、公的機関の制限を受けることはない。その分銀行側は、リスクに慎重で審査が厳しい傾向だ。

事業の実績、信用などが審査に大きく影響するため、3期以上の決算の実績がない事業者の場合、融資を受けるのは難しい。

5. ノンバンクの無担保融資

ノンバンクとは、銀行・信用金庫などのように預金業務を行っていない貸金業務専門の金融機関を指す。例えば商工ローンやビジネスローン専門金融機関、不動産担保融資専門会社などがある。これまで紹介した公的融資やプロパー融資が受けられない場合は、ノンバンクからの資金調達を検討することも方法のひとつだ。

一般的にノンバンクは、審査の時間が早く急を要する資金調達に便利だ。しかし金利が高めに設定されているため、返済負担が大きくなる。また一度ノンバンクからの融資を受けてその内容が決算書類に掲載されていると「公的融資や民間金融機関から融資が受けられない企業」という見方をされる可能性も否めない。

そのため別の融資を利用するうえで審査に影響する可能性が高いだろう。そのためノンバンクはできるだけ利用しないに越したことはない。やむを得ず利用する場合には、民間金融機関が出資しているノンバンクのビジネスローンなどを検討したい。

公的融資と民間融資の違いを特徴

ここまで紹介した主な融資の種類を見て大きく「公的融資」と「民間融資」の2つに分けられることが理解できたのではないだろうか。それぞれの融資の特徴をまとめてみよう。

1. 公的融資

公的融資は、中小企業や小規模企業、個人事業主、起業予定の人などを支援することを主な目的として国(日本政策金融公庫)や商工会議所、地方自治体などが融資を行うものだ。基本的に無担保で金利は低く実績のないまたは少ない事業者でも融資を受けやすいなどのメリットがある。一方で審査期間が長めであることや融資額の上限が低めな点はデメリットだ。

返済負担などを総合的に勘案すると、まず公的融資を検討するのがいいだろう。

2. 民間融資

民間融資は、メガバンクや地方銀行、信用金庫、信用組合、ノンバンクなどが行う融資である。公的融資に比べると金利が高めだが資金使途や利用限度額などの自由度は高く、必要に応じた融資を見つけやすい。しかし金利や審査の難易度の高さ、審査が下りるスピードは、メガバンクかノンバンクかといった金融機関の業態によって大きく異なる。

利用後の社会的信用もメガバンクとノンバンクを利用している場合では、大きく変わる点は押さえておきたい。

融資を受ける手順

ここで融資を受けるための手順を説明しておこう。さまざまな書類が必要になるため、抜かりなく準備しておきたい。

1.融資の申込先を決める

まずは、日本政策金融公庫や銀行、ノンバンクなど融資の申込先を決定する。融資の種類ごとに融資条件や金利、上限金額、審査の厳しさなどが異なるため、自社の求める条件に応じて選ぶようにしたい。大切なのは、自社が最も有利に資金調達でき返済しやすい方法を提供する金融機関を選ぶことだ。

2.書類をそろえる

融資の審査では、決算書をはじめたくさんの書類の提出が必要だ。融資の目的(創業資金、運転資金、設備資金など)によっても異なるが、一般的には、以下の書類が必要とされている。

  • 創業計画書(創業資金の場合)
  • 商業登記簿謄本(申し込みする金融機関との取引が初めての場合)
  • 会社の案内書や経歴書、会社概要など
  • 決算書類2~3期分(確定申告書や決算書、勘定科目明細書など)
  • 試算表や月次資金繰り表
  • 事業計画書
  • 資金使途資料
  • 借入申込書
  • 納税証明書

例えば日本政策金融公庫のように借入申込書や企業概要書など所定の様式がある場合、公式サイトからダウンロードできる場合もある。

3.融資担当者に連絡

日本政策金融公庫をはじめインターネットでの融資申し込みができる金融機関も多い。しかし事前に金融機関の融資担当者へ連絡および相談してから申し込みするのがおすすめである。なぜなら融資のアドバイスを受けられたり信頼関係を築いたりすることが期待できるからだ。またインターネットで申し込みをした場合、担当者から面談の連絡がある。

営業状況(計画)や資産・負債が分かる書類をそろえて誠実な態度で面談に臨もう。

4.審査を受ける

決算書類や事業計画書などをもとに金融機関で審査が行われる。信用度を損なわないよう必要書類は正確に記入して提出しよう。また資金使途や金額の根拠を明確かつ具体的に示し、資金の客観性や経営者の分析力などをアピールできるようにしたい。

オンライン融資の検討も

近年は、融資の申し込みから実行までの手続きすべてをオンラインで完結できるオンライン融資も出てきている。オンライン融資は、通常の融資と比較して膨大な資料の準備や面談の必要がなく、会計データなどをもとに人工知能(AI)が与信モデルを使って審査を行う。審査や実行までの期間が短いのが特徴だ。無担保のものも多いなどのメリットもあるため、資金調達の選択肢として検討したい。

主なオンライン融資(銀行、企業)を紹介

オンライン融資は、民間金融機関や会計ソフト会社などが提供している。ここでは、4社の商品を紹介しておこう。具体的なサービス内容は、それぞれの公式サイトで確認して欲しい。

  • みずほスマートビジネスローン(みずほ銀行)
  • BizSTATION(三菱UFJ銀行)
  • オンライン融資サービス(オリックス株式会社)
  • 資金繰り改善ナビ(freee finance lab /フリーファイナンスラボ)

自社の事情に合った融資先を選ぼう

事業資金の貸付制度である融資は、創業資金や運転資金、設備投資資金など種類はさまざまだ。融資を提供する機関には、国や自治体、公的機関、銀行、ノンバンクなどがあり担保や保証(人)の必要有無や融資の条件、金額、審査の難易度などが異なる。今回、代表的な融資の種類をいくつか紹介したが、融資の利用を検討する際は自社の事情に合致した融資を選ぶことが重要だ。

また書類の準備などで信用度を損ねないよう細心の注意を払うようにして欲しい。

續 恵美子
著:續 恵美子
ファイナンシャルプランナー(CFP®)。生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。こうした経験をもとに、生きるうえで大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などを行う。
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