経営者が身につけたい「人を活かす経営の新常識」
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

イギリスに続き日本も孤独担当大臣を新設

イギリスでは、2018年に世界初の「孤独担当大臣」を設置したことをご存知でしょうか。同国内の2014〜2016年の調査では、65歳以上の4割である約390万人が「テレビが一番の友だち」と回答し、成人の2割である900万人が常に孤独を感じていることが判明。この状況に危機感を持った当時のメイ首相が、担当大臣を任命したのです。

そしてついに日本でも、2021年2月、「孤独・孤立対策」担当大臣が、兼務ながら新設されました。コロナ禍の下で増加する自殺や引きこもり、貧困世帯の深刻化など、社会的孤立に省庁横断で取り組むためとされました。ただ私は、孤独・孤立は日本社会に深く根差していた問題で、コロナ禍で先鋭化したと捉えています。

敗戦を経た昭和の高度成長期以来、この国は豊かさを求め経済成長を追求してきました。かつての若者の多くは地縁・血縁のしがらみから脱し、教育と仕事と収入が得られる東京を目指しました。東京一極集中が進み、衣食住に必要なモノはもちろん、家事・育児・介護まで何でもサービスとして買える便利な生活を手に入れました。

しかし人間関係の煩わしさからの解放は、核家族化・一人世帯の増加にも通じ、都会で孤独に暮らす人が増えてしまったわけです。若者が流出してきた地方でも、高齢化と過疎化が進み、孤立する高齢者が増え続けていました。ここに盆暮れ正月の帰省も寸断するコロナ禍が、一気に追い打ちをかけたのです。

経済的貧困は、地方より東京が深刻⁉

2021年1月に、国土交通省がショッキングなデータを発表しました。都道府県別の中間世帯(所得の上位40〜60%)の可処分所得と基礎支出との差額で、経済的な豊かさを順位づけしたところ、東京都は全国42位で、通勤時間で失われる機会費用を差し引くと、何と最下位だったのです。

1位は三重県の23万9996円。2位の富山県23万7390円。3位の山形県23万7202円。これに対し、47位の東京都は13万5201円。豊かさを目指して人が集まってきた東京が、物価の高さに加え、地方では地域や親族の支え合いで済むことにまでお金がかかるため、最も経済的貧困状態にあるとは、悲劇としかいいようがありません。

いま、リモートワークの普及で、豊かな自然と落ち着いた暮らしや子育て環境を求めて、あるいは老親を支えるために、東京から郊外や地方への転出が増えています。私は「豊かさ」には、二つあると考えています。一つは経済的な豊かさで、私たちが長らく追い求めてきたもの。もう一つは人間同士の絆、美しい自然やゆとりある暮らしなど、心の豊かさです。
私たちは懸命に豊かさを求めてきたはずが、両方とも失いかけている。そんな想定しなかった危機に直面しているのです。

地域に貢献する企業の活躍が望まれる時代

私たちは、本当の豊かさが、人と人との繋がり、生きがいや働きがいなど心の豊かさであり、お金に換算できないことを実感し始めています。コロナ禍によって人と人との絆が遮断されているから、なおさらです。

長い年月をかけて深刻化してきた孤独・孤立問題の解消は、一筋縄ではいきません。ただ、これまでも地域の需要や期待に応え良質なサービスを展開してきた企業や、地域貢献に取り組んできた企業であれば、地元で親しまれ、地域社会と共に歩み、支えてきた歴史があることと思います。

「健康経営」や「幸福(well-being)経営」が注目を集めている今日、社員の健康や幸福の実現に取り組むとともに、世界が直面している孤独問題をいかに視野に入れ、取り組むか、一つの大事なテーマとして考えたいものです。

※本稿は前川孝雄著『人を活かす経営の新常識』(株式会社FeelWorks刊)より一部抜粋・編集したものです。

職場のハラスメントを予防する「本物の上司力」
前川 孝雄
株式会社FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師/情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。(株)リクルートを経て、2008年に人材育成の専門家集団㈱FeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ、バワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」等で、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年(株)働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、(一社)企業研究会 研究協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業 審査員等も兼職。連載や講演活動も多数。著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の「上司力」』(大和出版)等30冊以上。近刊は『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks、2021年9月)及び『50歳からの人生が変わる痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所、2021年11月)

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