イオンがキャンドゥ買収でダイソーは追放?変わる100均業界勢力図
(画像=Nagahisa_Design/stock.adobe.com)

イオンが、100円ショップを展開するキャンドゥの買収に乗り出した。買収により、イオングループの店舗へのキャンドゥの出店が加速するとみられる。そこで気になるのが、キャンドゥと競合するダイソーの今後だ。すでにイオンに出店しているダイソーは追い出されるのだろうか?

イオンがキャンドゥ買収に向けて動きだした

まずは、イオンが発表した内容を振り返っておこう。イオンは2021年10月14日、「株式会社キャンドゥ株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」というプレスリリースを出した。これは、キャンドゥをイオングループに迎えるためにTOB(株式公開買い付け)を実施し、キャンドゥの株式の51%以上を取得することを目指すというものだ。

イオンはプレスリリースの中でキャンドゥ買収の狙いについて、「キャンドゥにさまざまな形態の出店機会を提供することが可能となる」と説明した。さらには、「キャンドゥの出店拡大による業績の向上やコスト削減が見込めるなど、相乗効果が期待できます」と強調している。

イオンは、総合スーパーやスーパーマーケット、小型店舗など、さまざまな業態で小売店を展開しており、すでにキャンドゥが出店している店舗もあるが、恐らく買収が成立した後は、それぞれの業態にあった形でキャンドゥの展開が拡大されていくものとみられる。

詳細についてはまだ明らかにされていないが、例えば、総合スーパーであればテナントとしての出店拡大、スーパーマーケットや小型店舗であれば一ブランドとして特設コーナーを展開、といった具合ではないか。

100円ショップ業界の勢力図、最大手はダイソー

100円均一業界の勢力図についても、サマリー的に振り返っておこう。この業界で売上高が首位の企業は、ダイソーを展開する大創産業だ。直近の1年間の売上高は5,262億円に上り、国内では3,620店舗を展開している。

大創産業に続く売上高の規模となっているのがセリアだ。直近1年間の売上高は2,006億円で、1,787店舗を展開している。そしてセリアに続いて業界3位の企業がキャンドゥだ。直近1年間の売上高は730億円で、店舗数は1,155店舗となっている。

イオンがキャンドゥ買収でダイソーは追放?変わる100均業界勢力図

つまりイオンは、100円ショップ業界で3位の企業の買収に乗り出すということになり、買収後は業界最大手であるダイソーと戦う立場となる。

買収後、イオンはダイソーと競合関係になる

しかし冒頭触れたように、ダイソーはすでにイオングループの店舗に出店している。

「イオン高岡江尻店」(富山県)、「イオンタウン岡崎美合店」(愛知県)、「イオン名護店」(沖縄県)、「イオンタウン平岡店」(北海道)など、ダイソーの公式サイトの店舗検索ページで「イオン」と検索すると、全国古今東西のイオンがずらりと並ぶ。

このように、ダイソーはさまざまなイオンの店舗にテナントとしてすでに入居しているわけだが、キャンドゥを買収した後、イオンとダイソーは競合関係となるため、ダイソーはイオンの店舗から追い出されてしまうのだろうか。

この点についてイオン側は公式な説明をしているわけではないが、一部報道ではイオンの担当者の声を取り上げており、将来的にダイソーを追い出すということはしないという。

ダイソーを追い出すことは恐らくしないはず

そもそも、イオングループがもしダイソーの店舗を追い出すようなことになれば、「独占禁止法」(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)に抵触する可能性も出てきそうだ。独占禁止法の目的について、公正取引委員会は以下のように説明している。

「独占禁止法の目的は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることです」

さらに目的を細分化すると、「私的独占の禁止」「不当な取引制限」「独占的状態の規制」などが挙げられる。イオンがすでに入居しているダイソーを追い出したり、将来的に新たに入居させなかったりすると、このような点での違反を指摘されるかもしれない。

独占禁止法違反になるかどうかは公正取引委員会の判断であり、この記事で明確なことを述べることは避けるが、コンプライアンス(法令遵守)に力を入れているイオングループだけに、危ない橋は渡らないのではないだろうか。

うまくシナジーを創出していけるか注目

イオンによるキャンドゥの子会社化に向けたTOBはすでに始まっている。まずは買収が成立するのか、見守りたいところだ。

ただし、イオンが買収を成立させたとしても、この買収が自社にとってプラスになるか、マイナスになるかは、将来振り返ってみなければ分からない。100円ショップ業界は、ただでさえ各社の出店攻勢が続いており、競争が激しい市場だからだ。

うまく自社の小売事業とのシナジー(相乗効果)を創出していけるのか、注目したい。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

無料会員登録はこちら