地方創生に役立つ補助金制度は?対象者や金額、条件などを事例で紹介!
(画像=buritora/stock.adobe.com)
中川 崇
中川 崇(なかがわ・たかし)
公認会計士・税理士。田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。

近年、人口が減少している地方を活性化するために、さまざまな方策が講じられている。すでに地方創生という言葉を耳にしたことがある人は多いのではないか。今回は、地方創生の背景や動向をおさらいしつつ、関係する補助金制度について解説する。

目次

  1. 地方創生の背景と動向
  2. 地方創生を支援する2つの補助金
    1. 補助金1.起業支援金
    2. 補助金2.移住支援金
  3. 各地域における地方創生補助金の事例
  4. 地方創生に役立つ補助金以外の3つの支援策
    1. 支援策1.日本政策金融公庫の新規開業資金
    2. 支援策2.地方創生カレッジ事業
    3. 支援策3.地方拠点強化税制
  5. 地方創生の補助金を適切に活用

地方創生の背景と動向

地方創生が必要な最大の理由は、三大都市圏(東京・大阪・名古屋)に人口が集中していることだ。

2018年時点で、三大都市圏の人口は日本人口の半分を超えている。特に東京圏の人口割合(対全国比)は、1955年の20%前半から2018年には29%となり、一極集中化が危惧されている。

日本全体の人口減少も相まって、三大都市圏以外への移住が課題となってきた。2014年の第二次安倍内閣では、地方創生のスローガンのもと、法律制定など地域活性化施策を実施している。

最近では、新型コロナウイルスの影響が著しい三大都市圏を離れるために、地方へ移住する考えを持つ人も少なくない。そのため、地方では希望者を移住させる対応も求められている。

地方創生を支援する2つの補助金

地方創生を実現するための支援金制度もある。

代表的な制度としては、社会的事業を起業する方を支援するために都道府県が助成する起業支援金が挙げられる。また、東京23区から地方に移住して起業や就業を行う方のために都道府県・市町村が共同で支給する移住支援金もある。早速、それぞれの補助金について説明する。

補助金1.起業支援金

起業支援金は、地域の課題解決に資する社会的事業を新たに起業する方を対象に支給される補助金だ。

社会的事業には、子育て支援や買い物弱者支援など、各地域の課題に即した幅広い事業がある。

支給される金額は最大で200万円だ。条件は新規で行う場合と事業承継あるいは第二創業する場合で異なっている。

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Society 5.0とは、仮想空間と現実空間を組み合わせて、経済発展と社会的課題の解決を目指す人間中心の社会である。例として挙げられるのが、医療におけるAIを利用した画像診断や、自動運転による物流などだ。

補助金2.移住支援金

移住支援金は、東京23区内に在住あるいは通勤する人が、東京圏外に移住して起業・就業するときに受給できる支援金だ。

支援金額は100万円以内であり、受入先となる都道府県が設定する。単身者は60万円以内に設定されている。

この支援金は一定の条件を満たしたうえで、制度を実行している市町村に移住し、申請した場合に受給できる。

条件は交付する地方自治体によって多少の差がある。

地方創生に役立つ補助金制度は?対象者や金額、条件などを事例で紹介!

ここまで挙げたのは、あくまでも最低限の条件である。市町村ごとに条件を緩和したり、新たな条件を追加したりする場合がある。

たとえば長野市では、移住前の場所が東京圏でなくても、大阪府や愛知県でも適用できるとしている。

ほかにも多くの市町村が、5年以上当該市町村内に住むことを要求している。

各地域における地方創生補助金の事例

起業支援金や移住支援金以外にも、地域独自の地方創生補助金を設けている地域もある。

たとえば新潟市は、新潟市内で県外企業などが入居するサテライトオフィスやシェアオフィスといった施設を新たに整備・開発するビルオーナー等に対して、最大4,500万円の補助金を支給する制度を行っていた。

香川県多度津町は、空き家を活用する事業に対して最大で100万円の補助金を支給する制度を行っている。

福島県伊達市には、福島県外から伊達市内に転居する人向けに、住宅取得資金の一部を助成する制度がある。転居用の住宅を取得した人に対して、補助対象経費の2分の1に相当する額あるいは指定にもとづく算定額のいずれか低い額の補助金を受給できる。

なお、募集が終わっているケースもあるため、事例として参考程度にとどめていただきたい。

地方創生に役立つ補助金以外の3つの支援策

地方創生では、補助金以外にもさまざまな支援制度がある。融資や税制について地方創生に関連した制度を説明する。

支援策1.日本政策金融公庫の新規開業資金

日本政策金融公庫の新規開業資金は、新たに事業を始める人向けの融資である。地域や業種の限定はないため、開業時の融資として広く活用されている。

担保を不要とする融資における基準利率は、通常2.06~2.55%だ。しかし、地方創生推進交付金を活用した起業支援金の交付決定を受けて事業を始める場合、特別利率(1.41~1.90%)が適用されて利率が下がる。

起業支援金と移住支援金の両方で交付決定を受けて事業を行う場合、特別利率(1.16~1.65%)が適用されてさらに利率が下がる。

Uターンで事業を始めるなどして地域活性化に寄与する場合も、通常の金利よりも安い金利で借り入れできる場合もある。

支援策2.地方創生カレッジ事業

地方創生では、資金だけでなく関連知識を取得することも事業の成功に必要だ。

地方創生カレッジ事業では、地方創生に必要な知識をe-ラーニングで学習できるサイトを提供している。

講義内容は、地方創生のビジネスに直接関係するものばかりではない。会計士や税理士など関係者の知識も取得できる。

掲示板では、地方創生や人材募集に関する情報を取得したり、発信したりできる。

支援策3.地方拠点強化税制

税制面でも地方創生に関連したものがある。

本社機能を地方に移す場合や、地方で本社機能を拡充する場合、税制上の優遇を受けられることがある。

適用されるには、都道府県知事から事業計画の認定を受けたうえで、申告期間内に確定申告を行わなければならない。

優遇措置の内容として、従業員を雇用した場合に雇用人数に応じて法人税が減少される雇用促進税制が挙げられる。

事業用の建物を取得した場合、特別償却や法人税の減税が受けられるオフィス減税もある。減税額などは移転のほうが拡充よりも金額が大きくなるように設定されている。

地方創生の補助金を適切に活用

移住や地方の事業を推進する補助金を紹介したが、補助金の取得を目的に移住したり事業を開始したりするのは本末転倒だ。

手段と目的が逆転してしまうと、各地域に悪影響を及ぼす事態にもなりかねない。

地方で実現したいことや事業が成功する可能性を見極めたうえで、地方移転や補助金の申請を検討してほしい。

文・中川崇(公認会計士・税理士)

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