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ゴールセッティングにはどんなパターンがある?
なぜビジネス書を書きたいのか自問自答しよう
さて、ビジネス書を書くにあたって、まずやることは、ゴールセッティングです。ビジネス書でよく言われることでありますが、何事も望むべき最終地点を設定し、いかに効率良くそこにたどり着くかの方法を考えなくてはなりません。
あなたの本を書く目的は何であるか自問自答してください。
「なぜ、あなたはビジネス書を書きたいのか?」
私は、自分のセミナーの冒頭で、受講者に質問するようにしています。
『もしドラ』や、『ビリギャル』のようなミリオンセラーを書きたい。
今やっている仕事のスキルを多くの人に伝えたい。
昔から文章を書くのが好き。
読む人にわかりやすい本を書きたい。
今いる業界の問題点を解決したい。
世の中の貧困問題をなくしたい。
人によって答えは千差万別ですし、中には「一言では言えません」などという人もいます。
まずは6つのパターンから選んでみる
しかし、私が言いたいのは、そのような小難しい話ではありません。
本には著者なりの伝えたいテーマが書かれている、ということは言うまでもありませんが、それとは別に、著者が本を出すことによって成し遂げたいと思っている「裏目的」とでも言うべきものがあります。要するにそれが、著者自身のゴールがどこかという「ゴールセッティング」でもあります。
大まかには、次の6つのパターンに分かれます。
パターン①テレビ・政界進出型
パターン②情報商材を売る・セミナーをする
パターン③副業から独立への道
パターン④趣味のブログ→夢の書籍化→人生の思い出作り
パターン⑤企画持ち込み→仕事の依頼→大ベストセラーを書くぞ
パターン⑥どうしても書きたいこと、伝えたいことがある
以下、それぞれについて見ていきましょう。
パターン①テレビ・政界進出型
これは、本を書くことによって、「取材殺到→雑誌掲載→講演会→TV→政界進出」という道を目指しているパターンです。出版にあたって、昔からある王道パターンと言えるでしょう。
まずは、本を出す。そして雑誌の取材やテレビ、ラジオの出演の機会を狙いながら、雑誌の連載などをして文化人、知識人、コメンテーター、評論家を目指すのです。
このパターンに当てはまる人は、まずはありとあらゆる機会を狙って露出を増やし、顔と名前を売ることを考えるべきです。
ある意味、形を変えたタレントデビューと言っていいかもしれませんが、最後の政界進出だけは「状況次第」でもあります。
なぜ「状況次第」かというと本人は最終的には、政府の委員会などを経て政界進出を狙っていたりしても、先にそういった意向を表明すると、出馬できなくなるケースが多いためです。そこで、ギリギリまで伏せている人も多いようです。
たまに、「○○さん、そろそろ政界進出どうですか?」みたいな質問を受けても、「考えていません」などと答えるのがベストでしょう。
ただし、著作内において政治的な発言が増えてくると要注意と言われています。内心は、出馬する気は満々だと予想できます。勝間和代氏も『勝間和代の日本を変えよう』(毎日新聞社)を出版した頃は「狙っていた」のではないでしょうか。
いずれにせよ、典型的なだけにわかりやすいパターンであり、またTVやラジオの露出などにより本人の知名度が上がると、本のセールスも出やすいため、多くの人が密かに狙うゴールセッティングとなります。
パターン②情報商材を売る・セミナーをする
パターン②は、情報商材を売るためや、高額なセミナーに集客するために本を出すパターンです。名刺代わりに本を書いて、後は集客商売に専念します。あるいは最初から商材やセミナーの顧客確保のための出版の場合もあります。
この場合、本をフロント商品としてバックエンドの商材やセミナーが本線という商売の仕方になります。
「誰でも(主婦やフリーター、学生など)簡単に儲けられる」とか「1日30分で数千万円儲けられます」式のタイトルの本に、このパターンがよく見られます。
また、付録のCDが付いていたり、ホームページでレポートをダウンロードする権利などが付いていることも多いでしょう。そこまでは無料ですが、高額なバックエンド商品がホームページに用意されていたり、無料の会員登録をすると、商材案内のメルマガなどが届くようになっています。
モデルケースとしては『働かないで年収5160万円稼ぐ方法』(三笠書房)の川島和正氏、『ネットで月収1000万円! 情報起業の不思議な稼ぎ方』(中経出版)の菅野一勢氏、最近では「秒速で1億円稼いで、秒速で失った」というふれこみの与澤翼氏がこうしたパターンといえます。
ただし、私は決してこのパターン②が悪いと言っているわけではありません。
この本を読んでいる人の中にも、情報商材を販売している方、お店やセミナーに集客したいと真剣に考えている人もいるはずです。そういう人の場合、変に他のゴールセッティングのパターンにハマってしまうと効率が悪いので、徹底的にパターン②の戦略を貫くべきではないでしょうか。
パターン③副業から独立への道
パターン③は、「副業執筆→ベストセラー→コンサル作家」という道を目指すものです。まずは会社勤めしながら副業作家としてデビューし、運よく売れれば独立も視野に入れます。本を出し、給料と印税のダブルインカムを狙いながら、今後の自分の人生の展開を考える、といったパターンです。
会社でのポジションに不満がなく、かつ執筆が認められており、勤めながら週末作家として本を出したり取材を受けたりすることが可能であれば、ある意味、もっとも堅実で、まともな人生を歩めそうなパターンと言えるでしょう。
勤めながらでも本を出すことで自分自身のブランディングにもなるし、リストラや会社の倒産があろうとも生計を立てられそうな見通しとなれば、会社生活にもゆとりや自信が生まれます。
代表的なケースとしては、藤井孝一氏、内藤忍氏、小室淑恵氏、小山龍介氏などが挙げられます。
藤井孝一氏は、自身が『週末起業』(筑摩書房)という本を出された後に「週末起業」を考えている人たちの相談に乗るような形でコンサルティングをスタートし、現在はコンサル会社の経営をしながら様々な活動をしています。
投資やマネー、仕事術の本を出されている内藤忍氏はマネックス・ユニバーシティの代表取締役だったし、『IDEA HACKS!』(東洋経済新報社)などの「HACK!シリーズ」の著者、小山龍介氏は松竹に勤務していました。
また、小室淑恵氏も現在は自分で会社を経営していますが、もともとは化粧品会社で新規事業の企画が認められ、その多忙な生活の中で家庭や育児を両立するためにワーク・ライフ・バランスの重要性を意識するようになった、というようなことが著書に書かれています。
パターン④趣味のブログ→夢の書籍化→人生の思い出作り
「ブログやメルマガを一生懸命書いているうちにアクセス数や知名度が上がり、それが出版社の目に留まり出版のオファーが来て1冊、本を書きました。そして1冊出した後は、またこつこつと、何事もなかったかのようにブログやメルマガの更新に励みます。それが何か?」
そんなパターンです。
最近はこのパターンからベストセラー著者が出るケースが増えています。その代表的なのが「金融日記」の藤沢数希さんや「ちきりんの日記」のちきりんさんでしょう。
藤沢数希さんは『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?―あるいは、お金持ちになれるたった一つのクールなやり方』(ダイヤモンド社)で有名ブロガーから著者成りし、今や論理的で鋭い筆致で金融・ビジネスコーナーの人気著者となっています。
ちきりんさんも『自分のアタマで考えよう』(ダイヤモンド社)が大ヒットした後、続々と本を出したり取材を受けたりと大活躍であり、素顔こそ公開していないものの「有名人」と言っていいでしょう。ちきりんさんは、こうした経緯を『「自分メディア」はこう作る!』(文藝春秋)で次のように書いています。
2012年の半ばに、もう新企画は受け付けないと宣言したため今ではかなり減りましたが、それでも過去数年の間に50社近い出版社から書籍出版の企画を頂きました。
書籍企画以外でも、取材、対談、コラム執筆、講演などの依頼が次々と届きます。献本や、推薦文の依頼もあります。
ビジネス書ではありませんが、異常に鋭い観察眼と文章力で知られる「スポーツは見るもの語るもの〜フモフモコラム」のフモフモさんも、『自由すぎるオリンピック観戦術』(ぱる出版)を出した後も精力的に更新しています。
ブログでもメルマガでもありませんが、「謎の主婦。ツイッターで独自の恋愛観を綴り、一般人としては異例のフォロワー22万人。サブアカウントではフォロワーの恋愛相談にも乗り、こちらも異例のフォロワー約15万人」というDJあおいさんも、『じゃあ言うけど、それくらいの男の気持ちがわからないようでは一生幸せになれないってことよ』(ワニブックス)で著者デビューし、人気を博しています。
出版社では、ワニブックスさんが、『口ベタ営業マンが渋谷ギャルをナンパし続け半年後に1億の契約をとった件』をはじめブログから著者を積極的に発掘しています。
こうして見ると、経歴も素顔も隠して書いている人ばかりです。仕事やプライベートとリンクさせないから純粋に面白いことを思いっきり書けるのかもしれません。
趣味で続けているブログが書籍化したからといって変に浮ついたりせず、また淡々と更新を続けているという人もけっこう多いものです。しかし、初めての著者がベストセラーになり、人生の思い出作りというより、人生が変わってしまった人もいるのです。
パターン⑤企画持ち込み→仕事の依頼→大ベストセラー作家への道
このパターンには2種類あります。主に得意分野の執筆で生計を立てている場合と、本業がありながら執筆している場合です。学者やコンサルタントで本を書いている人が、このパターンになっているケースもあります。
前者のパターンは、心理学者の内藤宜人氏、千田琢也氏、ドラマにもなった『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)の水野敬也氏などがそれに当てはまり、後者は、ベストセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか』(光文社)の著者で公認会計士の山田真哉氏などが当てはまるのではないでしょうか。
パターン①と似ている部分もありますが、そこまで露出を目指しているわけではなく、取材の依頼があれば受ける程度、というケースが多いです。
また、パターン①の場合、ゴーストライターを使っていることが多かったり、本を書くより名前を売るのが優先されるように見受けられることが多いのに対し、パターン⑤の場合は、もともと書くこと自体が好きで、基本的に自分で書いているという人が多く、小説などフィクションに挑戦するケースも目に付きます。
このあたりは、最近は小説家でも純文学、エンタテインメント系に限らず、「それだけでは食えない」「将来が不安」などの理由で、普段は勤めているケースも多く、広い意味での執筆業というくくりでは、好きなことを書いてヒットを狙う、大ベストセラーを狙う、という部分でボーダーレス化や執筆ジャンルのクロスオーバーが増加していく傾向にあるのかもしれないと個人的には思っています。
パターン①が形を変えたタレントデビューだとすると、こちらはさしずめ形を変えた作家デビューを狙っているというケースかもしれません。
パターン⑥どうしても書きたいこと・伝えたいことがある
基本的にどうしても書きたい・伝えたいことがあるというパターンには、例えば『鏡の法則』(総合法令出版社)の野口嘉則氏や、『そうじ力』シリーズの舛田光洋氏、『どんな仕事も楽しくなる3つの物語』(きこ書房)の福島正伸氏などが当てはまります。
意外に思うかもしれませんが、私も自分ではこのパターンだったと思っています。事業に失敗し、負債を3億円も抱えて、なぜ今生きているのか不思議に思うこともあるのですが、結局はそこで見た人生でもっとも大事なこととは何かという価値観や、お金と人間関係、お金と幸せの関係などを伝えたいと思って書いています。
そうでなければとっくに死んでいてもおかしくなかったし、今現在は金や美食や美女など俗世の誘惑や欲望にはあまり興味はなく、基本的に1日中執筆していて人と会わなくても自分自身は幸せだったりします。
あまりマスコミに取材されることに興味がなく、自分自身の露出は避ける傾向がある人が多いのも特徴かもしれません。
ちなみに私自身は作家デビュー時から一貫して、顔出しもマスコミ取材もほぼNGで、プロフィール対策など「キャラ立ち」もさせないスタンスです。タレントやミュージシャンで言えば、TV出演はNGでCDのリリースとライブだけというパターンでしょうか。昔の「ZARD」、もしくは最近の「GReeeeN」みたいなスタンスだと言えるかもしれません。
イメージを固めて動くことでゴールが近くなる
さて、ここまでご紹介してきた6つのパターンで、自分に当てはまりそうなものはあったでしょうか?
この中のどのパターンであっても、私自身は決して悪いものではないと思っています。
作家デビューを果たしたものの、次第に自分自身の考えが変わったり、周囲からの影響もあって、また別のパターンに移行するケースもあるかもしれません。それはあくまで臨機応変な対応で構わないでしょう。
ただし、ある程度出版後の自分のイメージを固めて動くことで、より自分の願っていたゴールに近づくことができるはずです。