〈2020年に急伸したネット受注も一巡〉
2021年もお歳暮の受注がスタートする時期となったが、新型コロナウイルスの感染が全国的に拡大してしまった夏のお中元商戦はどうだったのか。食品産業新聞社が首都圏、中京圏、近畿圏の主要百貨店に行ったアンケートによると、2020年よりも売り上げを落としたところが多かったようだ。
3回目の緊急事態宣言が6月20日まで延長されたことで、中元商戦の出だしが鈍った。7月12日から4回目の緊急事態宣言が発令された東京都では、7月下旬以降、新型コロナウイルスの感染者が急増した。これらの影響で前半の落ち込みを後半で挽回できなかった百貨店が多かった。昨年急伸したネット受注が一巡し、昨年ほど伸長しなかったことも売り上げの停滞に影響した。
中元商戦の前半と後半の動向は、首都圏と近畿圏で分かれた。首都圏は「前半(5月前期比125%増、6月5%増)は好調、後半(7月25%減、8月15%減)は感染拡大に伴い失速」(そごう・西武)、「6月は前年を超える推移をみせていたが、7月は緊急事態宣言の影響もあり大きく(前年を)割り込む」(松屋銀座本店)、「ギフトセンターは6月が4・2%増、7月は7・5%減」(京王百貨店)など、前半好調、後半失速というところが多かった。
一方で近畿圏は、「6月は緊急事態宣言の影響を受けた不要不急の外出自粛が影響し、店頭の客数は大幅減のスタート。しかし7月はワクチン接種の進捗に加え、6月の買い控えの反動が働き大きく回復。6月の売り上げ減をカバー」(高島屋大阪店)、「緊急事態宣言の期間とほぼ被った早期割引期間の店頭が落ち込んだ。7月以降回復傾向となった」(京阪百貨店)など、前半苦戦、後半回復というところが多かった。
ネット受注は、2020年の中元で前年比3〜5割増と大幅に伸ばしたところが多かった反動もあり、2021年は1ケタ台から10%程度の伸長にとどまった。ネットが前年の2倍以上となった松屋銀座本店は、2020年のネット受注は一部商品のみで、2021年はオンラインサイトの全面リニューアルで、全商品が受注できるようになったため。東急百貨店ではネットの売り上げが店舗の合計売り上げと同規模になり、東武百貨店もネットが中元全売り上げの4割を占めるなど、ネットが重要なチャネルになってきていることは確かだ。
商品ではギフトセンターの客数減で2020年に苦戦した洋菓子が、2021年は反動増となった。2021年は梅雨明けが早く、気温も上昇したことから、アイスクリームや水菓子などが大きく伸長した。巣ごもり需要の拡大で、有名パティシエ監修など、高単価なスイーツを「お取り寄せする」する需要も拡大している。
法人需要や儀礼需要が引き続き縮小する中、外出の自粛も後押しし、自宅用は引き続き伸長している。自宅での食事の充実に対応した惣菜が好調だったところが多い。レンジ対応の簡便メニューのほか、産地直送の惣菜の人気が高かったのが2021年の中元の特徴だった。