日本M&Aセンターはオンラインセミナー「TOKYO PRO Market上場準備の話~実践編」を開催しました。大きな注目を集めている東京証券取引所のプロ投資家向け市場『TOKYO PRO Market(TPM)』。日本M&AセンターはJ-AdviserとしてTPMへの上場を支援しており、本セミナーでは、日本M&Aセンター 上席執行役員 TPM事業部長の雨森良治と、上場指導・審査を担当している上場審査部の光浦正也が、経営者の知りたいスケジュール感や上場準備の実務内容を分かりやすく解説しました。
特徴的な上場審査
一般市場に比べて、TPMの上場基準は緩やかな基準が設定されています。上場時に必ずしも株を売り出す必要がないため、経営の自由度を維持したまま上場することができます。売上や株主数、時価総額などの形式基準がない分、門戸は広く、中堅・中小企業でも上場を狙えるマーケットです。また、一般市場では監査期間が二期分必要ですが、TPMは一期分のみと上場期間も短縮することができます。雨森は「上場準備は“簡単”ではありませんが、どの会社でもチャレンジできるため、TPM上場を目指さない手はありません」と語ります。
一般市場の上場審査は東証や証券会社が実施しますが、TPMの場合は日本M&Aセンターなど東証が認証したJ―Adviserが審査を担います。上場準備の指導と審査を一括して担当する伴走者(J-Adviser)の存在も、企業には魅力的です。上場準備期間を短縮できる分、コスト面も一般市場より抑えることができますが、「信用力・知名度の向上」「経営の透明性の向上」「組織体制の強化」など、上場メリットは一般市場と同様のものを享受できます。
TPM上場に必要な管理機能の強化
上場審査業務20年以上のキャリアを持つ光浦は、準備期間に「2年~2年半ぐらいは必要になります」と説明します。審査における上場適格性要件をクリアするには、企業の管理機能を強化しなければなりません。例えば内部管理や決算・開示体制などの社内体制を強化し、監査法人による会計監査を受ける必要もあります。そのため上場準備作業に入ると管理本部の業務量は格段に増え、外部人材の登用や内部の人材育成も必要となります。「上場準備をスムーズに進めるためには管理本部の体制強化が重要になります」と光浦は強調します。
上場を契機に、ワンマン経営と言われるような経営者や限られた社員による属人経営から組織経営に移行する必要も出てきます。組織経営の基本は全ての組織単位に責任者を配置し、権限を付与することです。業務分掌規程やマニュアルをつくり、業務の権限と責任を明確にすることが組織経営の基礎となります。経理と財務の責任者を兼務させないなど社内不正が起こりにくい組織づくりの対策も必要です。
上場のキーマンはCFO
上場準備で業務量が増える管理業務全般を統括するのが管理部門責任者(CFO)となります。光浦は「CFOが上場準備の鍵を握ります」と明言します。上場企業として求められる月次決算や決算短信の作成から規定・マニュアルづくり、中期計画や予算作成など経営企画に関する多種多様な業務を責任者としてコントロールしなければなりません。管理部門責任者の理想の人材として、上場準備の経験者や大企業の管理部門の業務フローを熟知した人材など経験と知見のある幹部ポストを登用できるかがポイントになります。
上場準備を始める際に「まず会社の組織図を考えてほしい」と光浦は提案します。外部から人を招聘するか、内部育成するかなど組織で適材適所を図り、人材を確保することが重点項目とも言えます。光浦は「上場のための課題を整理し、どう管理本部のあるべき姿を描けるかが重要になります」と話します。上場を検討する経営者から度々質問される“管理部門責任者を採用する方法”について、雨森は「上場準備の際に周辺の関係者に上場を目指すことを伝えることで、周りから人材を紹介してもらいやすくなります」とアドバイスします。日本M&Aセンターは成長を志す経営者の皆様を全力で応援いたします。
大手証券会社とIPOコンサルタント会社で上場支援業務に従事。その他にも外資系証券や事業会社系証券で引受審査業務もサポートし、IPO審査で20年以上のキャリアを持つ。2019年に日本M&Aセンターに入社し、上場支援を担当。