雇用調整助成金の支給額ランキング 3位近鉄、2位オリエンタルランド、1位は?
(画像=satur73/stock.adobe.com)

コロナ禍はさまざまな企業の業績に大ダメージを与えている。税金が原資である「雇用調整助成金」を頼りに、何とか事業を継続している企業も少なくない。この記事では、どの企業がどれだけ雇用調整助成金の支給を受けているかを、ランキング形式で紹介する。

そもそも雇用調整助成金とは?

新型コロナウイルスの感染拡大がなかなか収束しない。日本国内でワクチン接種が進み始めたと思ったら、デルタ株が猛威を振るっている。日本国内で再び感染者数が増え、1日の感染者数は全国で2万人を超えた。過去最大の水準だ。

このように先行きが不透明な中、コロナ禍の影響が直撃している企業にとって「雇用調整助成金」は非常に心強い。

雇用調整助成金自体は、新型コロナウイルスの感染拡大が起きる前からあった制度だ。災害や景気悪化によって事業を縮小せざるを得ない企業を対象とする制度で、従業員に対する休業手当の一部を国が補填するという性質のものである。

そして国はコロナ禍において、この雇用調整助成金の特例措置を緊急対応として実施しており、助成率と上限額を引き上げている。特例措置の期間はこれまでに複数回延長されており、現時点では2021年9月30日とされるが、さらに延長される可能性もある。

ちなみに、通常時の助成金の日額上限は8,370円だったが、特例措置の期間中は最大1万5,000円まで引き上げられているほか、休業などに関する計画届の事前提出も不要だ。

税金から捻出されている雇用調整助成金の意義

民間企業が雇用調整助成金を受け取ることで、企業は従業員の雇用を継続しやすくなる。そして、雇用の安定は国全体の経済の安定につながるため、雇用調整助成金に税金が投じられることには、一定の意義があると言える。

そのため、雇用調整助成金を受け取っていること自体は批判されるべきことではないが、税金が原資である以上、どの企業がどれだけ雇用調整助成金を受け取っているのか、気になる人も少なくないのではないか。

では早速、コロナ禍において雇用調整助成金を多く受け取っている企業をランキング形式で紹介していこう。

上場企業における雇用調整助成金の計上額ランキング

参考にするのは、民間調査会社の東京商工リサーチが2021年5月に発表したデータだ。東京商工リサーチは、2021年4月末までに公表された上場企業の決算資料から、各社の雇用調整助成金の計上額を抽出した。

発表データによれば、雇用調整助成金の計上額の上位10社は次のようになっている。

<雇用調整助成金の計上額上位10社>

雇用調整助成金の支給額ランキング 3位近鉄、2位オリエンタルランド、1位は?

観光業・旅行業に関連する企業がずらりと並んでおり、トップは航空大手のANAホールディングスで437億円だった。ANAは2021年4~6月の決算で511億円の最終赤字を計上しており、この時期の赤字は前年に続くものとなっている。

計上額が100億円を超えたのはANAホールディングスを含め4社で、東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドが223億800万円で2位、近鉄グループホールディングスが124億4,000万円で3位、HISが100億1,300万円で4位となっている。

ちなみにこれらの計上額は、2021年4月末までに公表された上場企業の決算資料から判明したもので、現在においてはさらに雇用調整助成金の受け取り額が上積みされているはずだ。

また、東京商工リサーチによれば、雇用調整助成金の計上・申請が判明した上場企業は716社に上っており、全上場企業の約19%に相当するという。

国民の負担が将来的に増える可能性はあるものの…

雇用調整助成金に意義があることは先ほど説明した通りだが、多額の税金が特定の民間企業に投入される分、国民の負担が将来的に増えたり、国のほかの予算が削られたりする可能性があることは、頭の片隅に入れておきたい。

ただし、現在は未曾有のパンデミックが起きている状況であり、将来的な国民の負担増などにつながるとしても、当面の間は企業が雇用をしっかりと維持できるよう、国は特例措置を継続させるべきという声は多い。

2021年は年末に向け、自民党の総裁選や衆議院議員選挙を控えている。その中で雇用調整助成金に対する方針がどうなっていくのか、引き続き注目してみていきたいところだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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