矢野経済研究所
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2020年度の次世代型養殖技術(スマート水産(自動給餌機システム、沖合養殖システム)・陸上養殖システム・低魚粉飼料・昆虫タンパク質飼料)の国内市場規模は172億円

~今後の大規模養殖事業者の参入により、次世代型養殖技術の普及拡大に期待~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内における次世代型養殖技術を調査し、市場規模、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。

次世代型養殖技術(スマート水産(自動給餌機システム、沖合養殖システム)・陸上養殖システム・低魚粉飼料・昆虫タンパク質飼料)市場規模推移・予測

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1.市場概況

国際的な水産物需要の高まりから世界的には養殖生産が拡大していくなか、世帯構造の変化や食生活の変化により、定質・定量・定価格・定時に対応しやすい水産物が求められるようになってきている。今後、国内外において、国内の養殖水産物が評価され、安定して供給していくためには、成長の良い品種の開発や魚粉代替飼料の開発、省人・省力化、漁場の有効活用などによるコスト削減を図ることが必要である。こうした課題を解決するため、ICT技術を活用した自動給餌機システムや沖合養殖システム等の「スマート水産」や、陸上で養殖する「陸上養殖システム」、魚粉量を少なくした「低魚粉飼料」、昆虫を原料とした「昆虫タンパク質飼料」などの次世代型養殖技術が注目を浴びている。

2020年度の次世代型養殖技術の国内市場規模(事業者売上高ベース)を172億円と推計した。主要技術分野別にみると、スマート水産(自動給餌機システム+沖合養殖システム)が7億7,400万円、陸上養殖システム(掛け流し方式+閉鎖循環式)が67億1,500万円、低魚粉飼料が97億400万円、昆虫タンパク質飼料が700万円であった。

2.注目トピック

マーケットイン型養殖業の転換を目指す「養殖業成長産業化総合戦略」が策定

農林水産省は、2018年6月の「水産政策の改革」で本格的に養殖業を振興させるため、国内外において量的・地域的な需要拡大が見込まれ、養殖業の強みを生かせる養殖品目(戦略的養殖品目)を設定し、生産から販売・輸出に至るまでの総合戦略を立てることを発表した。これを踏まえ、2020年7月には「養殖業成長産業化総合戦略」がまとめられ、国内外市場向けに各々の取組み目標を設定し、それぞれの課題を踏まえた施策を推進する。

国内養殖業は、定質・定量・定価格・定時の生産物を提供できる特性を最大化することが重要である。そのために国内外の地域需要に応じた養殖品目、加工などの用途や質・量の情報を積極的に入手し、需要と生産サイクルに応じた計画的な生産を図ることで、従来の生産者主導のプロダクト・アウト型から需要先行の「マーケット・イン型養殖業」へ転換させる方向である。

3.将来展望

2025年度の次世代型養殖技術の国内市場規模(事業者売上高ベース)は、254億5,800万円まで拡大すると予測する。主要技術分野別内訳は、スマート水産(自動給餌機システム+沖合養殖システム)が31億5,500万円、陸上養殖システム(掛け流し方式+閉鎖循環式)が99億8,000万円、低魚粉飼料が112億1,500万円、昆虫タンパク質飼料が11億800万円に拡大する。

スマート水産は、今後、ICT技術による作業の効率化・省人化が期待されるとともに、水産バリューチェーンが一体となったデータプラットフォーム※の構築と同取組みの全国展開が想定されていることから、今後の普及拡大に期待が掛かる。なかでも、沖合養殖システムは、波浪の影響を受けづらい浮沈式イケスによる沖合養殖が開発されるなど技術が進展している。今後、地域活性化を図りたい自治体を中心に、沖合養殖システムの導入が増えるものと考える。

また、陸上養殖システムでは既存の養殖事業者の飼育規模の拡大に加えて、2022年以降大規模養殖事業者が新たに参入することから市場全体を牽引するとみる。

低魚粉飼料では従来の植物性原料・動物性原料に加え、昆虫や単細胞タンパク質、微細藻類などの原料利用が期待されており、昆虫タンパク質飼料では、商業生産が活発化すると見込まれることから、市場拡大に寄与すると考える。

※ICT等の利用により生産現場や試験研究機関等が収集する各種データを相互に利用することで、水産資源の管理やデータに基づく漁業・養殖業を支援するための取組み(出所:水産庁)

調査要綱

1.調査期間: 2021年4月~7月
2.調査対象: 次世代型養殖技術(スマート水産(自動給餌機システム、沖合養殖システム)・陸上養殖システム・低魚粉飼料・昆虫タンパク質飼料)を展開している参入事業者、養殖事業を展開している企業、その他大学・関連官公庁、研究機関など
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail等によるヒアリング調査および文献調査併用
<次世代型養殖技術市場とは>
本調査における次世代型養殖技術とは、①スマート水産、②陸上養殖システム、③低魚粉飼料、④昆虫タンパク質飼料の4つの技術分野を対象とする。なお、市場規模は当該4技術分野における参入事業者を対象とし、国内における事業者売上高ベースで算出している。各々の技術分野の定義は以下のとおりである。

①スマート水産は、波浪が高く潮流の 急な沖合海域で魚の養殖を行う沖合養殖システムと、給餌作業を自動的に行う自動給餌機システムを対象とする。
②陸上養殖システムとは、陸上に人工的に創設した環境下で養殖を行う陸上養殖システムをさし、掛け流し方式、半閉鎖・完全閉鎖循環式いずれも対象とする。
③低魚粉飼料とは、魚粉の含有率を50%以下にした低魚粉飼料をさす。
④昆虫タンパク質飼料とは、昆虫を原料とした昆虫タンパク質飼料をさす。
<市場に含まれる商品・サービス>
①スマート水産(自動給餌機システム、沖合養殖システムを実現するためのセンサー、カメラ、画像解析ソフトウェア、自動解析ソフトウェア、システム運営・利用費(クラウド含む)等)、②陸上養殖システム(飼育槽、ろ過槽、脱窒装置、調温装置、ポンプ関連、計測装置等)、③低魚粉飼料、④昆虫タンパク質飼料

出典資料について

資料名2021年版 養殖ビジネスの市場実態と将来展望 ~期待高まるスマート水産・陸上養殖・低魚粉/昆虫飼料の方向性~
発刊日2021年07月29日
体裁A4 277ページ
定価209,000円 (本体価格 190,000円)

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