新型コロナでも安全な国ランキングトップ10 日本は圏外に…1位はどこ?
(画像=blvdone/stock.adobe.com)

2020年11月から毎月発表されている「新型コロナ時代の安全な国ランキング(Covid Resilience Ranking)」で、大きな変化が起きている。最新のランキングでは、かつてトップ10入りしていた日本や台湾が大きく順位を下げ、米国や英国、スペインなど多数の犠牲者が出た国が上位に選ばれた。大逆転の決め手となったのは、「経済活動の正常化」だとされている。

新型コロナ時代の最も安全な10カ国

ランキングは米ブルームバーグが、世界53カ国・地域のコロナ耐性を評価したものだ。以下、最新(2021年6月28日付け)の順位を見てみよう。

10位(2020年11月順位4位) 韓国 耐性スコア68.6
9位(28位) 英国 68.7
8位(8位) 中国 69.9
7位(7位) オーストラリア 70.1
6位(41位) スペイン 72.0
5位(45位) フランス 72.8
3位(21位) イスラエル 72.9
3位(26位) スイス 72.9
2位(1位) ニュージーランド 73.7
1位(18位) 米国 76.0

上位は「正常化」が急速に進んでいる国

注目すべきは、ニュージーランドと中国、韓国、オーストラリアの4ヵ国を除いて、過去のランキングで順位の低かった6ヵ国がトップ10入りを果たした点だ。

大逆転のカギとなったのは「正常化」である。過去のランキングが各国・地域の感染者数や死者数など「ウイルスの抑え込み」に焦点を当てていたのに対し、今回のランキングは「パンデミック以前の生活への復帰」を重視している。

各国・地域が「コロナ危機からの経済復興を目指し、世界に対してどの程度開かれているか」を評価する。新たに「ワクチン接種率」「ロックダウンの深刻度」「フライト能力(過去4週間と2019年の同期間を比較した航空便数)」「ワクチン接種後の越境可能ルート(ワクチン接種後に往来可能な経路数)」の4つの指標が、従来の死亡率や感染者数、移動の自由、経済成長など10の指標に加わった。

感染が再拡大しているとはいえ、世界に先駆けて大規模なワクチン接種に成功した米国や英国、イスラエルは、いずれもワクチンを接種した人口割合が50%を超えている。スイスとフランス、スペインはワクチン接種率が40%以上で、かつワクチン接種後の越境可能ルートが350前後と最高水準であることが順位を押し上げた。

首位の米国「最善のシナリオを反映している」

ブルームバーグによると、「米国はワクチン接種率が高く、新規感染者が減少、フライト能力が100%近くまで回復し、ワクチン接種済みの人への旅行制限がほとんどない最善のシナリオを反映している」。同国では繁華街や飲食店が賑わい、ワクチン接種者はマスク着用の義務から解放され、ほぼ通常通りの生活に戻っているという。

また、英国を含む欧州圏でも、公共交通機関や一部の施設を除きマスク不要になってきている。大型イベント開催など規制が大幅に緩和されているほか、海外からの観光客を歓迎したり海外に旅行したりする国民が増えている国が多数ある。中国は事実上、国境を封鎖しているが、国内線が国際線の欠如を補う形でフライト能力が高い。

これらの国では日常生活の正常化に伴い、経済の高成長も期待されている。IMF(国際通貨基金)が4月に発表した世界経済の見通しによると、2021年の米経済は6.4%と世界GDP(6.0%)と先進国の平均(5.1%)を上回る。中国(8.4%)、スペイン(6.4%)、英国(5.3%)、フランス(5.1%)などでも見込まれている成長回復のペースは速い。

日本や台湾、ベトナムなどアジア太平洋圏は大幅ランクダウン

一方、可能な限り国境を封鎖することでコロナの封じ込めを図り、ワクチン接種で出遅れたアジア太平洋の国・地域は軒並み順位を下げた。

ランキング開始当時、世界2位だった日本は23位、3位だった台湾は44位、10位だったベトナムは40位へと大幅にランクダウンした。他にもシンガポールは11位から13位へ、香港は12位から30位へ、タイは15位から39位へ、インドネシアは19位から49位へと惨敗だ。

最下位はインド(50位)やマレーシア(51位)、フィリピン(52位)など、変異株の拡大とワクチン接種の延滞が深刻化している国となった。

ランキングの妥当性を疑問視する声も

一部からは、今回のランキングの妥当性を疑問視する声も上がっている。「力の強い先進国・地域が結局、十分なワクチンの確保を主な原動力に、他に先駆けてうまくコロナ時代を脱しつつある」「米国がパンデミックからの回復で世界をリードし、中国が遅れをとっている」という演出に過ぎないというのだ。

批判者の一人である中国グローバルテレビジョンネットワーク(CGTN)のジャーナリスト、Li Ruikang氏は、「各国・地域の経済活動再開は、国民の安全を考慮して決定されるべき」「パンデミックへの対処を最優先せずに、コミュニティの流動性やGDP成長予測などの指標で各国・地域のパフォーマンスを測定するのは無意味に近い」と反発した。

世界が直面するもう一つの課題

ランキングの受け止め方は人それぞれだが、あくまで「現時点における世界の流れを知る」といった観点から参考程度に留めるのが適切かも知れない。

リアルタイム統計サイト、ワールドメーターズ7月25日のデータによると、米国のコロナによる死亡者数は約63万人と世界最大となっている。英国・イタリア(各約13万人)、フランス(約12万人)と、今回のランキング上位国が「死亡者数ランキング」の上位に入っているのも事実だ。世界は人々の安全を確保し正常化に近づける一方で、このような深い傷跡をいかにして癒していくのかという重要な課題も抱えている。

文・アレン琴子(オランダ在住のフリーライター)

無料会員登録はこちら