ある程度の大きさの会社になると、お金を管理する人が必要です。
というのも、経営者は日々の経営に忙しく、お金を管理するところまでなかなか手が回らないためです。
そこで活躍するのが経理という職種です。
今回は、経理の仕事を詳しく解説します。
これから経理をめざす人、経理をしているが他業種の経理も経験してみたいと思っている人は、ぜひ参考にしてみてください。
経理の業種とは
経理とはどのような職種なのか
経理が会社の中で果たしている役割は、まずはお金を管理するということです。
売上があったらその売り上げの金額を管理し、会社から何か支払うものがあればお金を渡し、領収書を発行します。
ごく小さい企業だと、経営者が経理をしていることもありますし、庶務の人が兼ねていることもあります。
さらに、決算申告の時期になると決算報告書をまとめるという仕事もあります。
これも経理の仕事です。
経理は、営業とは違って直接売り上げたり、契約を取ったりすることはありません。
主に会社の中で働きます。
しかし、会社の利益には貢献していると言えます。
というのも、経理がお金の動きを把握することで、どれくらいの売り上げがあるのか、そのためにいくらの経費を使ったのか、その程度は適切といえるのかなどといったバランス面がよくわかるようになるためです。
個々の社員は、普段の仕事に忙しく会社全体のお金の動きや、その増え方を考えることは難しいです。
しかし、経理という職種があるからこそ、会社の内部におけるお金の動きを把握し、今後の収益活動につなげていくことができます。
一般の家庭について考えてみてください。
いわゆるザル勘定になってしまっていると、なかなかお金はたまりません。
入ってきた分を使ってしまうからです。
しかし、そこで1日や1か月の予算を組む人がいれば、その人の言うとおりにするだけで、ザル勘定ではなくなります。
経理は一定規模以上の会社を経営していくためには必須の存在なのです。
では、具体的にどのようなことをしているのか、項目ごとに解説していきます。
費用・売り上げの計算
まず、費用の計算です。
例えば、営業の社員が出張に行ってきたとします。
出張に使った電車賃や、ガソリン代を経費として計算し、清算する必要があります。
出張代は会社の経費です。
次に、売り上げの管理について考えてみましょう。
例えば店舗を経営しているとします。
店舗では、その日の売り上げが上がります。
逆に売れ残りもあります。
さらに、品質が落ちてしまったので割引をしたという商品もあるでしょう。
店舗ごとにレジが置いてあるので、金額は把握できていますが。
実際にそれを集計して、系列店舗の売り上げはどうだったのかを分析する必要があります。
日々の経費の管理、売り上げの管理なども経理の仕事です。
給与計算
支払う給料を計算するのも経理の仕事です。
ある社員が勤務したところ、そのうちのどこからどこまでが何月分の給料で、いつ支払われるのかというところも管理します。
正社員、契約社員、パート・アルバイトなどの職種がありますが、それに応じた社会保険料の計算なども行います。
社員からすれば、もし計算を間違われるともらえるはずの給料がもらえなくなるので、給与計算は責任重大な仕事です。
社会保険についても、負担金額がそれぞれ違いますので、計算を間違わないようにする必要があります。
万が一間違ったら次の月で調整ということになりますが、調整の手間もかかってしまうので、ミスがなく計算ができるというところが重要になります。
税金の計算
会社の売り上げ、それにかかった費用、そのほかの費用などの総結集として、決算報告と税務があります。
会社は法人ですので、法人税を支払います。
個人の場合は確定申告を行い、所得と支払うべき税額を税務署に申告しますが、会社も似たようなことを行います。
ただし、会社の場合日々のお金の動きが複雑であり大量なので、決算時期が近付くと経理部門はどうしても忙しくなります。
実際に税金の申告などの業務については税理士が関係していることもおおいですが、申告までの帳簿付けや、税金の計算管理などは経理がしていることが多いでしょう。
類似の職種との違い
財務との違い
会社の組織の中で、財務部門という呼び名を聞いたことがある人も多いでしょう。
会社によっては財務の機能も経理に含まれます。
財務部門は、主に規模の大きな会社に設置されており、どちらかといえばこれから使うお金についての管理をしています。
売り上げの予測、それにかかる費用、これから始めるプロジェクトにかかる費用を何年で回収するかなど、財務がかかわる仕事はこれまでに使ったお金の話ではなく、これから使うお金の話です。
さらに、財務の場合は財務諸表という会計書類の分析も仕事の一つです。
こちらは、これまでに使ったお金、稼いだお金のいわば成績表見たなものですが、それを分析して、将来の経営に役立てる方法を考えます。
成績表をもらったらもらいっぱなしでは将来に役立てることが難しいのと一緒で、返ってきた結果を分析し、これかの経営に役立てていくことが重要です。
会計との違い
類似職種として会計があります。
会計を経理が兼ねていることもありますが、大きい会社では別となっていることが多いです。
会計は、これまでに使ったお金について管理をしています。
経費としていくらかかったのか、給料としてどれくらいお金が出っていったのかなどなど、使ったお金の管理や記録をしている部門です。
経理と財務と会計が一緒になっていることもある
会社によっては、経理と財務と会計がすべて一緒になっていて、部門の中の人が役割分担をしているところもあります。
したがって、部門の名前が財務部門だから給与計算はやらないのかというと、そのようなことはありません。
経理と財務と会計の実際の線引きはかなりあいまいなので、もしこれから経理・財務・会計の仕事をしたい場合には、実際にどのような仕事をしているのかよく尋ねてみることをおすすめします。
経理の仕事はとても幅が広いのです。
中小企業と大企業の経理の違い
中小企業と大企業で、経理の仕事に違いはあるのでしょうか。
基本的には同じなのですが、人数規模が違うので、役割分担が違います。
つまり、一人で様々な経理の仕事ができなければ回らないというのが中小企業の経理です。
一方で、大企業の場合は役割が比較的細分化されているので、税務の計算をしている人は税務、給与計算の人は給与計算など、計算や管理すべき対象が決まっていることが多いです。
中小企業の経理は、オールラウンダーとも言えます。
一人で様々な仕事をこなさなければならないので、大変といえば大変ですが、その分経理の仕事に広く詳しくなることができます。
一方で、大企業の場合は細分化と専門化が特徴なので、担当している業務についてはかなり詳しくなることができます。
ただし、一人で全部を把握するのは難しいので、オールラウンダーというよりは専門スタッフとして働くことになるでしょう。
会社の業種ごとの経理の特徴
小売業
同じ経理といっても、業種によって特徴があります。
まず、小売業の経理についてです。
小売業の経理は、売掛金、買掛金の管理が主な業務です。
ある品物を仕入れてきて、原価に利益をプラスして売るという簿記の一連の流れに似ているので、一番イメージがしやすいかもしれません。
小売業の場合は、大量の商品を扱うので、支払い業務が煩雑になりがちです。
製造業
製造業は、原材料を仕入れてきて、加工をし、他社に販売するという流れで仕事をします。
簿記で言えば、工業簿記や原価計算という分野にあたります。
小売業のような一般的な簿記ではないので、少々難しく感じる人もいるかもしれません。
また、原価と予算との差を分析することも仕事の一つです。
なぜ差が発生してしまったのか、例えば作るのに時間がかかったのか、原材料が高騰してしまったのか、作るところにかけるパワーは同じなのに、失敗作が多くて損失が出てしまったのかなど、理由はいろいろあります。
原価計算をして、原価と予算との差を分析することで、それらの原因を特定し、今後に生かすことができます。
金融業
金融業は、銀行や信用金庫などの業種です。
計算のミスなどにはとても厳しいことで知られています。
管理項目が多く、チェックも厳しいことが特徴です。
というのも、金融業の場合は他の業種と違って、お金を商品にして販売しています。
投資信託であったり、保険であったり、各種の金融商品は、小売業で扱うような物体という形はありません。
形はありませんが、金融商品という商品です。
金融商品が在庫であり、販売すべきものということになります。
不動産業
不動産業は土地の売買や、不動産の賃貸から利益を得て成立している業種です。
特に、不動産業の中でも開発を手掛ける会社は、開発プロジェクトが何年にもわたることが往々にしてあるため、会計上の処理も年度をまたいだ処理が行われます。
とくに開発をしない、いわゆる中小の不動産業者であれば、中小企業の一般的な経理に近い処理です。
一日の仕事の流れ
普段の仕事
経理の仕事を理解しやすいように、とある一日にどのような仕事をしているのか紹介します。
決算時期などの特別な時期とは関係のない、通常の時期の場合について説明します。
出社 | 出社してきたら金庫の確認を行います。 念のため、中身を確認し、減っていないかどうか調べます。 |
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現金の管理 | 現金の出し入れをします。 他の社員に渡す分の精算などがあれば、取り分けて用意しておきます。 |
小切手の受け取りなど | 小切手で送金されてきたお金を現金に換えます。 |
預金の管理 | 業務で忙しくならないうちに、預金通帳を記帳しに行きます。 この時、必要な金額分の出し入れをします。 残高の確認なども同時に行います。 預金の管理については、一日の終わりにしに行く会社もあれば、昼ごろにするという会社もあります。 時間帯はそれぞれですが、業務があまり忙しくない時間帯と、銀行が比較的すいているタイミングを狙ってATMに行きます。 |
昼休み | 適宜昼休みを取ります。 お昼の時間帯はリフレッシュに使う人もいますし、会計系の資格を取るための勉強にあてるという人もいます。 |
仕訳と帳簿への記録 | 仕入れ、売り上げ、売掛金、買掛金、各種経費などの記録をします。 領収証やレシートから、複式簿記の形に記帳するのが仕訳です。 仕訳が終わったら、それぞれの項目に分けて転記していきます。 エクセルで仕訳や帳簿付けを行っている会社もありますが、会計ソフトを使っている会社もあります。 会計ソフトの場合、自動で決算書なども出力することができるので、最近は会計ソフトを導入しているところが多いのではないでしょうか。 入力すれば自動的に転記されるのでとても便利です。 ただし、簿記検定などの試験で出てくるのは会計ソフトではなく、手計算でした場合の処理であり、伝票の使い方なので、アナログで慣れてしまっている人はソフトになれることが大事です。 |
伝票や書類の管理 | たまっている伝票類を整理整頓します。 書類もわかりやすいように分類してファイリングしていきます。 散らかっていると、必要なものがなくなったり、間違って捨ててしまったりなど、ミスが発生しやすくなります。 すっきりとした書類管理をするのも仕事のうちの一つです。 |
退社 | 今日のお金の動きをきちんと記録したことを確認して、金庫を保管庫にしまいます。 鍵をかけ、鍵を返却し、業務は終了です。 お疲れ様でした。 |
日によって発生する仕事
仕入れと売り上げの計上 | 業種にもよりますが、毎日発生するものではない場合はその都度記録します。 |
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買掛金管理と支払い | 買掛金は、簡単に言えば付けで買い物をした分の金額です。 まだ支払っていない金額が買掛金として記録されています。買掛金を支払ったらその都度記録します。 |
売掛金管理と回収 | 売掛金は、相手が付けで買い物をした分の金額です。 つまり、回収しなければなりません。 期日までに回収ができなければ請求を行います。 売掛金の回収も経理の仕事です。 |
未払金管理と支払い | 支払うことは決まっているもののまだ支払っていない金額があれば、管理・支払いを行います。 |
経費の精算 | いつもあるとは限りませんが、社員が立て替えているお金があれば精算します。 |
領収書・請求書の発行 | 領収書や請求書を発行します。 |
固定資産計上 | 固定資産があれば計上します。 固定資産とは、高額な備品や、自社ビルなどの資産のことです。 ずっと同じ価値なのではなく、会計的にはどんどん目減りしていく資産ですので、減価償却という手続きをして、帳簿上の残高を減らしていきます。 例えば、今まで使っていたパソコンが、いきなり壊れたとします。 この場合、まだ価値が残っていればその分をゼロにする会計処理をします。 |
在庫管理 | どれくらい在庫が残っているのか、在庫のうちだめになっているものはないかなど、在庫を管理します。 |
一か月の仕事の流れ
上旬 | 在庫を管理します。 どれくらいのものが残っているのか計算します。 帳簿上残っている品数と、実際の品数があっているかどうかをチェックします。 計算し忘れた費用がないかアナウンスをした後、月次決算をして前月のお金の動きをまとめます。 |
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中旬 | 毎月10日までに、先月分の給与から徴収した源泉所得税と住民税を納めます。 給与の締め日は15日、20日という企業が多いです。 給与の締め日がきたら給与の計算、社会保険料の計算、振り込みを行います。 |
下旬 | 仕入れの代金支払いはこの時期が多いので、支払いを行います。 末日には社会保険料の納付と伝票類の取りまとめを行います。 |
一年間の仕事の流れ
会社の会計年度の期首が4月、期末が3月の場合について紹介します。
4月・5月 | 年次決算を行います。 年次決算書類を作成します。 |
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6月 | 株主総会で決算を報告します。 税務申告を行い、各種税を納付します。 |
7月 | 労働保険の年度更新と社会保険料の算定基礎届の提出時期です。 |
8月~10月末 | この時期は決算などの特別な仕事はないので、主に社内での仕事に集中できます。 11月の中間税務申告の準備はしておきます。 |
11月 | 中間税務申告をします。 |
12月 | 年末調整の時期です。 貸与計算と振り込み、支払届の提出をします。 |
1月 | 法定調書、給与支払い報告書の提出をします。 |
2月・3月 | 決算書類作成に向けて棚卸などを行います。 忙しい時期です。 |
経理に関する疑問
求人票にある一般的な企業の経理事務経験とは今回ご紹介したように経理といってもかなり業務に幅があります。
この仕事というように具体的に割り振られるのではなく、雇用したい側としてはオールラウンダーを求めているのかもしれません。
一般的な企業の経理事務経験とあったら、念のためどの程度の能力を求めているのか尋ねることをおすすめしま。
一般的とあるので、金融業や製造業といった特殊な分野の能力までは求めていないと思われます。
残業は多いのか
決算時期が近くなると残業をしないと仕事が終わらないということはあります。
経理は最初から経理として雇用されるのか
これも、企業によって違います。
最初はすべての社員に経理以外の経験をさせてから、経理を希望する社員に異動をさせて経理部門に配属することはしばしばあります。
中途採用の場合は、ある程度経理の能力があるという前提の採用ですので、経理に直接配属というケースもあります。
採用面接時に質問してみましょう。
経理には資格が必要か
特別な資格は不要ですが、経理は特殊な知識が必要な職種のため、採用されてから勉強することが多いでしょう。
基本的には帳簿をつけるための簿記の知識、給与や社会保険についての知識が必要です。
資格という形になっていることは必須ではありませんが、資格という形になっていれば、誰から見てもわかりやすいのでアピールしやすくなります。
経理を助けてくれる専門職
経理は人事労務的な側面、会計担当としての側面の両方があります。
経理に配属されたら、関係する専門職の先生方に相談できるようにしておくことをおすすめします。
経理を助けてくれる専門職とは、具体的には税理士と社会保険労務士です。
税理士は、税務に関する知識が豊富で、実際の申告業務の代理を行うことができます。
税務申告の際にはお世話になると思われますので、早めに連絡を取っておくことが大事です。
次に、社会保険労務士は給与計算や社会保険についての手続きに詳しい専門家です。
特に社会保険は頻繁に法律が改正されますので、間違った手続きや計算をしてしまうと大変です。
わからないことがあったら社会保険労務士にすぐに相談できるようにしておきましょう。
まとめ
今回は、経理の仕事について詳しく解説しました。
会社によって仕事の幅や内容が違うので、具体的には採用、配属されてから仕事を把握していくということになるかと思われます。
今回ご紹介した内容はごく一般的な経理の仕事なので、経理に興味がある人は参考にしてください。(提供:ベンチャーサポート税理士法人)