「国家公務員はボーナスをもらいすぎ…」、こんな批判の声をよく聞くが、実際のところはその通りなのだろうか。2021年夏の賞与は9年ぶりの減額となったが、それでもまだ高いのか。国家公務員のボーナスの支給額の推移を確認しつつ、民間企業の支給額と比べてみる。
国家公務員の夏賞与が9年ぶり減となったニュース
2021年6月末、国家公務員に対して「期末・勤勉手当」が支給された。いわゆる「夏のボーナス」だ。支給額の平均額は66万1,100円(管理職を除いた職員の平均額)で、2020年の夏のボーナスと比べると1万9,000円少ない金額である。減少幅は2.8%で、減少となるのは9年ぶりだ。
夏のボーナスの金額が前年より少なくなったのは、民間企業との賞与の格差をなくすことを目的に、ボーナスの額が0.025ヵ月分引き下げられたことなどが理由である。
ちなみに、特別職である最高裁判所長官には569万円ほど(試算ベース)、衆議院と参議院の議長には527万円ほど(同)がそれぞれ支給されたものとみられる。また、行財政改革のために総理大臣は支給額の30%、閣僚は支給額の20%をそれぞれ自主返納することにしており、返納後の額は総理大臣で398万円ほど、閣僚で332万円ほどとなるようだ。
国家公務員の賞与額と民間企業の賞与額を比較してみる
先ほど触れた通り、国家公務員のボーナスの支給額は民間企業との格差を無くすために、都度調整が行われている。そのため数字上は、民間企業と極端に大きな差は出ていないはずだ。では、本当にそうであるかを比較してみよう。
まず、以下が国家公務員のボーナスの支給額の推移だ。
続いて、民間企業のボーナスの支給額の推移について以下に示す。民間企業に関しては、厚生労働省が発表している「勤労統計」を参考にした。ちなみに、平均支給額と算出されている金額は、ボーナスの支給があった企業・事業所の平均値となっている。
この2つの表を比べてみるとよく分かるが、国家公務員のボーナスの支給額と民間企業のボーナスの支給額では、約30万円前後の乖離がある。しかも、民間企業のボーナスの平均支給額は、ボーナスの支給があった企業・事業所の平均値であり、ボーナスの支給がない企業もあるため、実際の支給額の乖離はさらに大きくなる。
つまり、最初に触れた「国家公務員はボーナスをもらいすぎ」というのは、数字的には大きく誤った指摘ではないということだ。
「国家公務員はボーナスをもらいすぎ」という指摘は正しいが・・・
先ほど「数字的には誤った指摘ではない」と書いたが、その理由は、ボーナスの支給額が見合っているかどうかは、その職業に就くために必要な努力の量なども関係してくるからだ。これは、民間企業においても同じことが言える。
例えば、慢性的な人手不足に悩んでいるブラック企業であれば入社のハードルは低いが、年収も高くて人気のホワイト企業であれば入社のハードルは高い。この2社の賞与額が同じ金額だとすれば、違和感を感じないだろうか。
国家公務員試験は合格倍率が5~20倍程度と決して低くはない数字だ。そのような難関を乗り越えて国家公務員になった人に対しては、「年収も高くて人気のホワイト企業」くらいのボーナスはもらっても良いと考える人もいるだろう。
中にはボーナスの差を「妥当」と感じる人も?
結論を言えば、国家公務員の方がボーナスは多くもらっており、業績によってボーナスが不支給ということもないため優遇されていると感じる方もいるだろう。ただし、国家公務員になること自体が難関であることも考えれば、この差は妥当なのかもしれない。日本全体が新型コロナウイルスによる不況にあえぐ中、国家公務員のボーナスは改めてやり玉にあげられている。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)