税理士が作った経営者の教科書,会計編,損益計算書,読み方
(写真=PIXTA)

今回の会計編は「損益計算書の実践的な読み方」についてお話をさせていただきたいと思います。

以前に「損益計算書の基本的な読み方」をお伝えしたかと思います。

基本的な損益計算書のルールを押さえていただいた後は、実践的に「損益計算書をどう経営に活かすか」を知る必要があります。

今回は「売上の推移」をどう読むかを考えてみます。

売上高は単月で見てもあまり意味がありません。

単月の売上高に加え、推移を見ることで会社の勢いを見ることが重要なのです。

そして良かったときは良かった要因を、悪かったときは悪かった要因を月に一度で良いので考えることが「会計を経営に活かす」ということの基本なのです。

要因を掘り下げて考えた場合、「たまたまで、同じ状況で同じ結果が起こるかどうか」という視点も重要です。

たまたまの成功はありますが、たまたまの失敗はないと言われています。

成功の要因、失敗の要因は実は表紙から一番読み取れるということを知って下さい。

グラフでビジュアル的に全体像を捉えたあとは、具体的な数字でも裏づけしてください。

「ちょっと悪い」や「かなり良い」などの曖昧な言葉だけでは会計を経営に活かせてはいません。

キチンと数字でも経営状態を語ってください。

またアメリカの超有名なマーケッターのジェイ・エイブラハムは売上を上げるためには次の3つしかないと言っています。

①お客の数を増やす
②一人あたりの平均販売数量を増やす
③リピート回数を増やす

聞くと「当たり前」のことですが、頭の中にこういったスキームを持っていると、事業プランに不備がないかを確認することに役立ちます。

また中小企業では、ライバル他社を設定してもなかなか情報が入手できません。

ライバルを前年の自社として1年前の自社の売上を超えているかどうかを常に確認することも重要です。

前年を確実に超えていくことが中小企業のボーダーラインとお考え下さい。

さて最後は「損益分岐点」です。

損益分岐点売上は、固定費をペイするために必要な売上で、会社の最低限の目標と言えるでしょう。

この損益分岐点がいくらなのかを経営者は頭に入れておく必要があります。

ちなみに損益分岐点は役員報酬を高く設定していると高くなります。

売上高は経営状態を語る上で基本中の基本の指標ですが、それと合わせて「粗利益」と「正味利益」は絶対に確認しなければいけません。

「会社は儲かってなんぼ」です。

しかし多くの社長さんは売上が増えていくことに目が行きがちで、それに応じた経費がどれだけ出ているか、結果的にどれだけ儲かったかが、後回しになりがちです。

特に粗利益は重要です。

「粗利益こそが会社の実力」と言われます。

粗利益率については、粗利率が落ちているということは、安く売っている傾向になっている、もっと言えば商品の競争力が落ちているということを示します。

また実際の経営は当然「率」ではなく「額」で行うものです。

利益率は商品やサービスの競争力を示す重要な指標ではありますが、ときには利益率が悪くても「額」の大きいビジネスを狙うときもあります。

これはどちらが良いわけではなく「経営のバランス」ということになりますが、起業当初は「利益額」を重視しても良いと思います。

粗利益の額から固定費を引けば経常利益になります。

固定費は基本的には変動せず社長の努力と意識に関係なく発生します。

ということは、社長が意識的に支配できるのは粗利益までなのです。

いかにして粗利益率を上げ、粗利益額を上げるか、これが経営の要諦といっても過言ではありません。

粗利益は一つ一つの商品の粗利益を上げることも重要ですが、それよりも粗利益率の高い商品を重点的に売るという方が現実的です。

さて「粗利益」を確認した後は、「正味事業利益」を見て下さい。

「正味事業利益」というのは「役員報酬などの節税をする前の段階でどれだけ利益が出ていたか」を示す指標です。

起業当初、無駄な税金は支払うべきではありません。

節税をしないと、会社にお金が残らないことになります。

ですが「税金が低くなる」=「会社の利益が少なくなる」ということですので、節税ができている状態というのは利益が少ない状態のことなのです。

もし「利益」しか見ないと、節税で利益が減っているのか、業績が悪いから利益が減っているのかがわからなくなりますよね。

ですので、「節税をする前の利益」=「正味事業利益」が重要になるのです。

これらの「粗利益」や「正味利益」も売上高と同様に、単月の実績だけではなく推移が重要です。

単月の利益は「今月どれだけ儲かったか」ですが、推移は「今の方向性で会社は大丈夫なのか」を読み取る指標です。

流れを読む、という視点を意識してください。

さて次は「固定費」の見方です。

固定費については、「異常値がないか」をみるのが基本です。

基本的には毎月変わらないからこそ「固定費」ですので、金額の多寡はそれほど問題にはなりません。

ところがたまにいつもの月より明らかに高い金額「異常値」が出ることがあるのです。

この異常値が出た場合に、なぜ異常値が出たのかを考える必要があります。 ただし、「異常値=悪」というわけではありません。

固定費は大きくわければ3つに分類することができます。

①将来の利益を上げるために支出する投資的な費用
②今の売上を維持するために支出する守りの費用
③無駄な費用

の3つです。

異常値が①や②であれば問題ありません。

何かしらの意図があっての支出である可能性が高いからです。
③であるときには注意しておく必要があるでしょう。

またコスト削減を気にする社長も多いですが、①や②のコストを削ってしまっては将来がありません。

固定費を見るときは、①や②の経費がどれだけあるかを確認するのも大事なことです。

今日は損益計算の見方の応用編ということで、「変動損益計算書」の見方をお伝えしてきました。

今回の内容は会計を経営に活かすという点で非常に重要な意味を含んできます。(提供:ベンチャーサポート税理士法人