税理士が作った経営者の教科書,労務編,社会保険,基礎知識
(写真=Jirsak/Shutterstock.com)

労務編の第2回は社会保険の中でも「雇用保険」と「労災保険」についてご紹介させていただきます。

前回で「厚生年金保険」と「健康保険」についてご紹介しましたので、今回の2つを押さえれば社会保険の基礎知識については万全です。

パートやアルバイトの人は次の条件を満たす人は加入することになります。

①1週間の労働時間が20時間以上
②31日以上継続して雇用する予定

この2つの要件を満たす人は、たとえパートやアルバイトと言っても、雇用保険の対象となります。

ただし次の人は従業員であっても雇用保険に入ることができません。

①代表者と同居している親族
②65歳以上の人

また雇用契約を結んでいない、いわゆる「外注さん」も雇用保険に加入することはできませんのでご注意ください。

次は「いくら納めるのか」についてです。

雇用保険の保険料は、一般の事業については賃金総額に13.5/1000をかけた金額となり、会社が8.5/1000を、従業員が5/1000を負担します。(平成24年現在)

例えば月給が20万円の人なら、会社負担が1,700円、本人負担が1,000円で合計2,700円の雇用保険が掛かるということになります。

またこの「月給」には定期代などの通勤手当や、残業代、賞与なども含まれますので、注意してください。

ちなみに雇用保険は、最初に支給する給料から天引きをしていきます。

これは前回にご説明しました「厚生年金保険」と「健康保険」とは扱いが異なります。
(厚生年金と健康保険は、翌月の給料から天引きすることになっています)

最後に「いつ、どうやって納めるのか」についてですが、これは今から説明します「労災保険」と一緒に納付しますので、労災保険の説明の後にご紹介します。

では次は「労災保険」を見ていきましょう。

「労災保険は誰にかかるか」からです。

労災保険の対象となるのは、役員を除く全ての労働者です。

雇用保険と違って、パートやアルバイトも全てが対象になります。

つまり1週間の労働時間や、雇用される期間には関係なく、労働の対価として賃金を受け取る人全員が対象になるということです。

ただし代表者と同居の親族は原則的には労災の対象からはずれます。

次は「いくらの保険料がかかるか」についてですが、まず知っていただきたいのは、労災保険は雇用保険と違って全額会社が負担することになるということです。

従業員は1円も負担しません。

保険料は「賃金総額」に「業種ごとの保険料率」を掛けた金額になります。

保険料率は業種によって細かく規定されていますが、サービス業は3/1000、小売業は3.5/1000、通常の建設業は13/1000になります。(平成24年現在)

最後に雇用保険と労災保険は「いつ、どうやって納めるか」をご説明します。

雇用保険と労災保険は1年に一度、同じ書類で、同じ時期に申告・納付をします。

基本的な考え方としては、まず1年分を概算で前払いし、翌年度に正しい金額を計算して精算するという方法をとります。

具体的には、一番最初の保険加入時には1年間の概算保険料を計算して納めます。

その後は毎年7月10日までの間に、前年の4月1日から今年の3月31日までに支給された賃金に対する雇用保険や労災保険を正しく計算し、前年に概算で納めた保険料との差額を精算します。

つまり、納めた金額が少なければ差額を追加して納め、納めた金額が多ければ差額が戻ってくるということになります。

そして精算と同時に翌年の保険料を概算で納めることになります。

「概算保険料」は通常、計算した前年の保険料の金額です。

ですので、先ほど前年の概算額が精算額より多い場合はお金が戻ってくると書きましたが、ほとんどのケースでは多かった金額を納める概算保険料から差し引いて、差額を納めることになります。

また「概算保険料」が40万円以上の場合は、3回に分けて納めることが認められます。

これを延納と言います。

納める時期は第1期が7月10日、第2期が10月31日、第3期が翌年の1月31日が納期限となります。

このように雇用保険と労災保険は、「概算保険料の精算」と「翌年の概算保険料の納付」を同時に申告・納付していくのです。

これを「年度更新」といいます。

労働基準監督署から毎年6月頃に送付されてくる「概算・確定保険料申告書」と「納付書」に必要事項を記入し、保険料を添えて、銀行で申告・納付します。

さてこれで雇用保険と労災保険の基本的な知識はバッチリです。

手続きの話は実際に行ってみるまでイメージが付きにくいところもあるかと思いますので、概要だけ押さえてもらえればOKです!(提供:ベンチャーサポート税理士法人