約25%の女子学生がセクハラ被害? 近鉄グループ採用担当が「就活セクハラ」
(画像=ИгорьГоловнёв/stock.adobe.com)

企業の新卒採用が活発な時期となった。そのような状況で、近鉄グループホールディングスの採用担当者が、就職活動中の女子学生に不適切な行為を行ったことがニュースになった。これまでにもたびたび問題となっている「就活セクハラ」だ。その実態とは、どのようになっているのだろうか。

近鉄の採用担当者が就活生に不適切な行為

まず、近鉄グループホールディングスの採用担当者が行った不適切な行為について、報道されている内容や同社が発表した内容をまとめてみる。同社が社員のこの不適切な行為について発表したのは、2021年6月2日のことだ。

報道によれば、この採用担当者は同社の人事部の男性社員で、初めて女子学生と会ったのは2021年1月中旬に行われたインターンシップの場だったという。その後、男性社員はチャットアプリ「LINE」を使って女子学生と連絡を取るようになり、女子大生を食事やホテルに誘っていたようだ。

今回の男性社員の不適切な行為に対し、近鉄グループホールディングスは「あってはならないことであり、当社として深く反省」とお詫びし、男性社員に対しては「今回の事態を重く受け止め、厳重な社内処分を行います」とした。

再発防止策を発表、専用相談窓口の開設も

今回の騒動を近鉄グループホールディングス側も重く受け止め、再発防止策も発表している。例えば、採用活動に関わる社員に対し、専門の外部講師による研修を継続的に行っていくという。

また、就職活動中の学生がハラスメントなどに関する相談をできるよう、専用相談窓口を社内と弁護士事務所にそれぞれ設けることも発表している。

OB訪問で就活セクハラを受けるケースも続出

今回の近鉄グループホールディングスのように、就活セクハラはほかの企業でも起きているが、「OB訪問」でセクハラの被害を受けるケースも少なくない。

ある大手総合商社の社員は、OB訪問を受けた女子学生に対して不適切な行為をしたとして、刑事事件の被告となった。この被告は、女子学生と個室居酒屋で酒を飲んだ後、カラオケ店で一気飲みを強要するなどしたあと、ホテルで不適切な行為に及んだという。

ちなみに、このようなOB訪問は、民間企業が提供するOB訪問マッチングアプリなどを通じて行われるケースが多く、企業の目が届かないところで起きることもあり、企業側も対応に苦慮している。

厚生労働省の調査から見て取れる就活セクハラの実態

これらの就活セクハラの実態は、厚生労働省の調査として2021年3月に発表された「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書からも見て取れる。

就活セクハラを受けた経験がある女性は25%に上り、その内訳は「何度も繰り返し経験した」が2.9%、「時々経験した」が6.7%、「一度だけ経験した」が15.5%となっている。

そして、就活セクハラの内容としては「性的な冗談やからかい」が最も多く、5割近くに上っており、その後、「食事やデートへの執拗な誘い」「性的な事実関係に関する質問」「不適切な身体への接触」と続く。「性的な関係の強要」も10%弱に上る。

この調査では、セクハラ行為を受けた場面についてもアンケートを取っている。最も多かったのは「インターンシップに参加したとき」で40%弱となっており、「企業説明会やセミナーに参加したとき」「就職採用面接を受けたとき」と続いている。

そして10%には満たないものの、「SNSや就活マッチングアプリを通じて志望先企業の従業員とやりとりや相談などを行っていたとき」や「大学のOB/OG訪問のとき」と答えた女子学生もいる。

セクハラ被害を減らすためには

このようにして就活セクハラの実態に目を向けると、企業担当者によるセクハラと、企業が関与できないOB訪問などでのセクハラという、2種類の就活セクハラが起きていることが分かる。

前者については企業側の対策が求められるが、後者に関してはなかなか有効な対策がとりにくいのが現状だ。そのため現時点では、就活生側も被害に遭わないよう、OB訪問をしないようにするといった対応策をとるしかない。

また、セクハラ被害は就職後に受ける可能性もある。このような可能性を低くするには、就職を目指す企業選びが重要だ。

例えば厚生労働省は、女性管理職が多いなどの条件を満たした企業を「女性の活躍推進企業」として認定し、「えるぼしマーク」を与えている。このえるぼしマークの認定を受けた企業から就職活動先を絞っていくのも1つだろう。

また、同省は「女性の活躍推進企業データベース」を運営しており、このデータベースから男女の平均勤続年数の差異などを調べることもできる。

今後より求められる防止策

就職活動は、学生にとって社会人としての第一歩となる。その企業に就職したいという思いにつけこむ行為は、到底許されるものではない。国や企業をあげた防止策が今後、より求められる。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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