ジニ係数はどんな経済指標?日本と世界の実情や、所得格差が広がる4つの要因
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世界の格差問題は、世の中の企業に深刻な影響を及ぼす恐れがある。そのため、経営者は格差を表す指標のひとつであるジニ係数を理解し、現状をしっかりとつかむことが重要だ。どのような情勢変化にも対応できるように、日本と海外の所得格差について一度考えてみよう。

目次

  1. ジニ係数とは? ビジネスとの関係性
    1. ジニ係数との関連性が強い「SDGs」とは?
  2. 日本のジニ係数はどれくらい? 世界の実情と比較
    1. 日本のジニ係数は右肩上がり──近年は改善の兆候も
    2. 米英よりは低いものの、主要国全体では日本のジニ係数はやや高め
    3. 所得再分配の重要性
  3. 日本の所得格差はなぜ広がる? 経営者が押さえたい4つの要因
    1. 1.非正規雇用者の増加
    2. 2.税金をはじめとした社会保障の逆進性
    3. 3.製造業の海外移転
    4. 4.雇用環境の低水準化
  4. ジニ係数は絶対的な指標ではない? 批判的な見方も
  5. 現状が続けば、国民生活や企業活動に弊害が生じる恐れも

ジニ係数とは? ビジネスとの関係性

ジニ係数は、各世帯の所得格差を表す代表的な指標だ。1936年にイタリアの統計学者「コンラッド・ジニ」が考案したことから、考案者の名前をとってこの名称がつけられている。

算出方法を覚えておく必要はないが、どのような指標なのかイメージしやすくなるため、以下ではジニ係数の算出方法を簡単に紹介しよう。

○ジニ係数の算出方法

ジニ係数はどんな経済指標? 日本と世界の実情や所得格差が広がる4つの要因

ジニ係数は0から1の間で推移し、大きくなるほど所得格差が開いている状態を表す。一般的な目安は「0.5」と言われており、この数値を超えると所得格差がかなり大きい状態となるので、国民の生活を安定させるには何かしらの対策を進めなくてはならない。

言うまでもないが、国民の所得格差は全国の企業に大きな影響を及ぼす。例えば、地方格差が広がると地域によって収益や人件費、物件関連費などが変わってくるため、出店先や進出先をより慎重に判断することが必要になる。また、商品やサービスの需要はもちろん、非正規雇用者数に変化が生じる点も企業にとっては軽視できないポイントだ。

ジニ係数との関連性が強い「SDGs」とは?

ジニ係数と関連する予備知識として、「SDGs」も合わせて覚えておきたい。SDGsとは、2015年に開催された国連サミットで採択された、国連加盟国が達成すべき目標のことだ。

SDGsには17の具体的な目標が設定されており、そのなかには「貧困をなくそう」「人や国の不平等をなくそう」など所得格差に関する目標が存在している。シンプルに考えれば、ジニ係数を下げることがこれらの目標達成につながるため、ジニ係数はSDGs用語として扱われることも多い。

SDGsは世界中から注目されており、今後ますます社会的な意義が強まっていくと予想されるため、これまで意識してこなかった経営者はこれを機に情報を集めてみよう。

日本のジニ係数はどれくらい? 世界の実情と比較

日本や世界のジニ係数をチェックする前に、ジニ係数には以下の2種類があることを押さえておきたい。

○ジニ係数の2つの種類

ジニ係数はどんな経済指標? 日本と世界の実情や所得格差が広がる4つの要因

上記を見ると分かるように、当初所得ジニ係数と再分配所得ジニ係数は全く異なる指標だ。2つのジニ係数を混同すると、データから各国の実態を読み取ることができなくなってしまう。

この点をしっかりと踏まえた上で、日本と世界の所得格差の実情をチェックしていこう。

日本のジニ係数は右肩上がり──近年は改善の兆候も

日本の当初所得ジニ係数と再分配所得ジニ係数は、以下のように推移している。

○日本におけるジニ係数の推移

ジニ係数はどんな経済指標? 日本と世界の実情や所得格差が広がる4つの要因

上の表を見ると分かるように、日本のジニ係数はいずれも右肩上がりの状態にある。特に当初所得の格差は急速に広がっており、2005年にはついに基準となる0.5を超えてしまった。

とは言うものの、2014~2017年のデータに着目すると、近年に関しては改善の兆候があるように思える。この時期の減少は「景気好転による中間所得層の増加」が要因とされるため、今後も安定した景気が続けば所得格差は少しずつ解消されるかもしれない。

米英よりは低いものの、主要国全体では日本のジニ係数はやや高め

では、世界の主要国と比べると、日本のジニ係数はどれくらいの水準になるのだろうか。

○主要国のジニ係数(2018年頃のデータ)

ジニ係数はどんな経済指標? 日本と世界の実情や所得格差が広がる4つの要因

日本の再配分所得ジニ係数は、アメリカやイギリスに比べると低い水準で推移している。しかし、主要国のなかではやや高い水準であることから、所得格差が小さい国とは決して言えないことが分かる。

世界的に見れば日本は豊かな国ではあるものの、1980年代から所得格差が開き続けている事実はしっかりと受け止めなくてはならない。

所得再分配の重要性

上記のデータに関しては、「所得再分配の重要性」も押さえておきたい。日本のジニ係数を見ると分かるように、当初所得ジニ係数と再分配所得ジニ係数には大きな差がある。

つまり、日本は税金や社会保険などによって所得を再分配することで、国民の所得格差を是正しているのだ。世界の主要国も必要に応じて所得を再分配しており、例えば社会保険などが充実している北欧はジニ係数が低い傾向にある。

日本の所得格差はなぜ広がる? 経営者が押さえたい4つの要因

再分配所得ジニ係数は比較的安定しているものの、日本の当初所得ジニ係数は1980年代から急速に上昇している。このような所得格差と真剣に向き合うのであれば、格差を生む「要因」も理解しておかなくてはならない。

そこで次からは、経営者との関連性が強い4つの要因をまとめた。

1.非正規雇用者の増加

非正規雇用者の増加は、大きな所得格差を生む要因となる。正規雇用者と比べると、非正規雇用者は全体的に所得が低く、社会保障をはじめとした待遇面も充実していないためだ。

総務省統計局が公表した「労働力調査」によると、日本の非正規雇用者は年々増え続けており、2018~2019年にかけては約70万人増加した。企業にとってはコストやリスクを抑えやすい雇用形態だが、非正規雇用が所得格差を助長することは十分に理解しておきたい。

2.税金をはじめとした社会保障の逆進性

日本は所得再分配によって格差を是正しているが、税金や社会保障のなかには逆進性の一途をたどっているものも存在する。例えば、所得税は1970年代から一貫して累進緩和が進んでおり、少しずつではあるが低所得者の負担が増えてきている。

このような制度の逆進性が止まらない限り、国内の所得格差を根本的に解決することは難しい。税金や社会保障の逆進性は、高収入とは言えない経営者にとって深刻な問題になり得るだろう。

3.製造業の海外移転

意外に感じるかもしれないが、実は製造業の海外移転も格差拡大につながっている。製造業の会社が海外移転をすると、主に地方を中心として生産性の低い非製造業への依存が高まり、地方民の所得が下がりやすくなるためだ。

例えば、2016年度のデータを参照にすると、東京都と九州各県の県民所得は年収にして200~250万円ほどの開きがある。もちろん、製造業の海外移転だけが地方格差の原因ではないが、海外進出をすると多方面に影響が生じることはしっかりと理解しておきたい。

4.雇用環境の低水準化

世界の主要国と比べると、日本の雇用セーフティネットは充実しているとは言えない。特に、国の予算に対する「積極的労働市場政策費(※職業訓練などに関わる費用)」は低比率であり、実際に失業したまま困り果てている労働者も多く存在している。

一方で、ジニ係数が低いデンマークなどは、多くの積極的労働市場政策費をねん出している。企業と政府が一体となって何かしらの対策を進めない限り、日本の雇用環境が大幅に改善されることは難しいだろう。

ジニ係数は絶対的な指標ではない? 批判的な見方も

ジニ係数は一般的に広く利用されているものの、実は所得格差を示す絶対的な指標ではない。世帯数と所得の累積比をもとにした指標であるため、算出される結果はどうしても相対的な値になってしまうのだ。

その影響で、実際に所得格差が開いているケースであっても、同比率で所得が変化した場合にはジニ係数が変わらないといった事態が起こり得る。「格差を正確に測定できない」といった懸念の声も聞かれるので、ジニ係数はあくまで目安のひとつとして参考にしておきたい。

ちなみに、所得を再分配すればジニ係数は低下していくが、超高齢社会が到来した日本においては、高齢者の社会保障が充実する代わりに若者の負担が増えていく。所得再分配は当初所得ジニ係数を下げるひとつの対策に過ぎないため、本当の意味で所得格差を減らしたいのであれば、別の観点から対策を進めることが必要になるだろう。

現状が続けば、国民生活や企業活動に弊害が生じる恐れも

ジニ係数の推移を見ると分かるように、日本の所得格差は徐々に広がっている。この状態が続けば、SDGsの目標達成が難しくなることはもちろん、国民の生活に大きな弊害が生じてくる恐れもあるだろう。

ひいては、企業活動に悪影響が及ぶ可能性も十分に考えられるため、世の中の経営者は引き続きジニ係数の推移や世の中の実情をチェックしておきたい。

文・片山雄平(フリーライター・株式会社YOSCA編集者)

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