企業から資金を切り離すSPCとは?導入する2つのメリット
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内山 瑛
内山 瑛(うちやま・あきら)
公認会計士。名古屋大学法学部在学中に、公認会計士試験に合格。新日本有限責任監査法人に入所し、会計監査・コンサルティング業務を中心に研鑽を積む。2014年に同法人を退所し、独立。「お客様の成長のよきパートナーとなる」ことをモットーに、記帳代行・税務申告にとどまらず、お客様に総合的なサービスを提供している。近年は、銀行評価を向上させる財務コンサルティングや内部統制構築支援、内部監査の導入支援にも力を入れている。

SPCという言葉を聞いたことがあるだろうか。不動産などへの投資に関心がない人にとってはなじみの少ない言葉かもしれないが、企業を経営するうえでも、その存在について、知っておいて損はない。

SPCといってもその意味するところは幅広い。そのうえ、多くのスキームがあり、それぞれにメリットやデメリットがあって理解しにくい。通常の中小企業の経営をしている者にとっては、なかなか想像しにくい世界ではあるが、どのようなものなのか、知っておくと投資の選択肢は確実に広がるだろう。

目次

  1. SPCとは
    1. SPCの実態
    2. SPCは資金を調達する手段
  2. SPCを導入する2つのメリット
    1. 1.資産の保持
    2. 2.資産の切り離し
  3. SPCを導入する2つのデメリット
    1. 1.コストや手間がかかる
    2. 2.不正利用
  4. SPCの代表的な3つのスキーム
    1. SPCの基本スキーム
    2. 1.合同会社匿名組合スキーム
    3. 2.特定目的会社スキーム
    4. 3.投資法人スキーム
  5. SPCを理解し、資金調達に活用

SPCとは

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(画像=THE OWNER編集部)

SPCとは「Special Purpose Company」の略で、日本語では「特別目的会社」と呼ばれる。企業が不動産など特定の資産を企業内部から切り離し、その特定の資産やプロジェクトのためだけに作られる会社である。

SPCの実態

日本では1998年に成立したSPC法(特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律)で、特定目的会社を設立することができるようになったことにより、普及が進んだ。会社といっても、企業本体の資産を保有する受け皿として機能するだけで、その実態はペーパーカンパニーである。

通常、資産を会社で保有していれば、その資産を運用する部門や人員がいるはずであり、資産だけの会社というものはあまり想定されない。しかし、SPCは単なる受け皿であるため、その運用などについては、他の法人または個人が行うことになる。

SPCが保有する資産は不動産が代表的なものであり、大規模なSPCの多くが不動産に関わるものであるが、ほかにも、売掛金・住宅ローン・太陽光発電など、多種の資産におよんでいる。

SPCは資金を調達する手段

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不動産や太陽光発電など、高額の資産を単独で所有するには多額の資金が必要である。SPCを設立して資産を売却、本体企業から切り離すことで、広く資金調達できる。企業本体はSPCに使用料を支払い継続的に資産を活用することが可能になる。

SPCを導入する2つのメリット

SPCは、資産をもともと所有している法人や個人から分離することが目的であるため、それに関連する効果がメリットとなる。

1.資産の保持

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まず挙げられるのは、資産の保持である。SPCは資産を保有することが目的であるため、不動産などの資産を保持できるのがメリットとなる。SPCは原則として(その仕組み上)倒産することがないため、もし本体の会社が倒産してしまったとしても、SPCが保持する資産は守られることになる。もちろん、SPCの持分自体については、倒産した場合に、差し押さえ等の対象となる。

2.資産の切り離し

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2つめのメリットは、資産の切り離しである。高額の資産を単独で所持していると、その資産に見合う資金調達を継続的に行っていく必要があり、会社に投資する投資家にとって好ましい成果を出しにくくなってしまう。そこで、SPCを設立してそこへ資産を売却し、本体の会社から特定の資産を切り離すことで、自己資本比率、総資産回転率やROAなどを改善できるメリットがある。

売却した会社は、SPCに対して資産の使用料を支払うことで継続的にその資産を活用することが可能である。このような、SPCを利用した資産の切り離しは、バランスシート(貸借対照表)から資産を除外して「資産のオフバランス化」ができる。

SPCを導入する2つのデメリット

SPCは、これまで述べたような目的で設立されるが、もちろんメリットばかりではなく、デメリットもある。

1.コストや手間がかかる

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SPCに係るデメリットとしてまず挙げられるのは、コストである。特に、SPCのなかでも特定目的会社を活用するスキームにおいてコストは顕著となる。例えば、会社法での会社設立においては、資本金は1円でよいことになっているが、特定目的会社の設立を行うと、最低10万円の資本金が必要となる。また、会計監査人による会計監査や、投資家に対する適宜の報告など、運用面においても一定のコストがかかることになる。

そのほかにも、内閣総理大臣への届出、資産流動化計画および業務開始届出の提出、監査役の選任など、設立に手間がかかる。さらに、一般的に不動産などをオフバランスしてSPCに譲渡した場合については、証券を発行して投資家から資金を集めていくことになるため、その資産の使用価値について社外に流出することもデメリットといえるかもしれない(もっとも、その部分については、譲渡益というかたちで先に享受している)。

2.不正利用

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また、SPCは不正に使われることもある。かつて、SPCに関する会計基準が発展途上だったころ、SPCの特定の資産を本体の会社から切り離すことができるという性質を用いた不正が横行していた。

これは、資金を迂回させるなどして、含み損のある資産を簿価で売却したことにし、損失を計上しないようにする方法である。

かつては、SPCを連結対象にしなくてもよい制度だったので、多額の減損や貸倒引当金が発生する可能性がある含み損を抱えた資産をSPCに売却することに(したことに)よって、連結決算上においても含み損を計上しないことが可能であった。

現在は、SPCを連結対象から外すための要件が厳格化されたことによって、SPCを利用した粉飾決算は難しくなった。

SPCの代表的な3つのスキーム

SPCの基本スキーム

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SPCの仕組みを整理する。投資家から資産に対して出資を受け、配当により利益を還元する。同時に金融機関からも融資を受け資産を保持するという仕組みだ。実質的に営業するのは本体企業となっている。

具体的には3つのスキームがある。合同会社匿名組合スキーム・特定目的会社スキーム・投資法人スキームの3つである。どのスキルが使いやすいか、事例に応じて、メリット・デメリットを個別に判断する必要がある。

1.合同会社匿名組合スキーム

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まず、合同会社匿名組合スキームについて解説する。

SPCとして合同会社を設立し、投資家からの匿名組合出資と金融機関からの借入により、不動産などの信託受益権を取得するなどして運用するスキームである。合同会社は、会社法に定める会社形態の一つであり、公証人の定款認証が不要であるなど、株式会社よりも設立が容易だ。そのうえ、法人の維持管理のために要求されるコストが低く、会社の組織も簡素でよいことから、もっとも利用されるSPCである。

匿名組合とは、商法上の組合のことを表し、当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の営業のために出資し、その営業より生じる利益の分配を受けることを約束する契約形態をいう。組合という名称がついているが、商法535条に規定されている契約の一種であり、法人格があるわけではない。

集団での契約ですらなく、匿名組合は投資家と営業者との二者間契約である。なお、匿名組合が利用されるのは、二重課税を回避しながら、事業から生じる利益を投資家に還元できるからである。

二重課税とは、同一の所得に対して2度以上課税されることだ。例えば、株式会社に投資をした場合には、投資先の株式会社において利益が計上された時点で法人税などが課税され、投資先から配当があり自社で利益が計上された時点でさらに法人税が課税されることになる。これが二重課税である。

もちろん、受取配当金には益金不算入の制度が設けられてはいるものの、完全に二重課税を回避するには完全子法人株式でなければならないなど、厳しい制限が課せられている。匿名組合を利用すれば、SPCの利益に法人税が課され、法人税を控除したあとに分配される配当についても投資家に課税される二重課税を回避できる。

匿名組合では契約に基づき、営業者が各投資家に分配した後の残額が、その営業者の損益となるため、営業者に対しては、分配後の利益に対して課税される。分配後の利益の帰属に基づき1回のみ課税されるため、二重課税が発生しない。

このように、1つの収益に対して、途中の段階では課税を差し控えることをパススルー課税という。

2.特定目的会社スキーム

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2つ目のスキームは、特定目的会社スキームである。SPCとして「資産の流動化に関する法律」にもとづく特定目的会社を設立し、金融機関からの特定借入や特定社債と、投資家からの優先出資により、不動産信託受益権または現物不動産を取得して運用するスキームである。

ところで、「特定目的会社」と「特別目的会社」は、非常に似た言葉であるが、意味するところは異なる。特定目的会社は、特別目的会社の一種であり、「資産の流動化に関する法律」という特別な法律により設立される法人である。

特定目的会社を設立することによって匿名組合と同じようなメリットを享受することができ、法人格がある分、出資者を募集することが容易だ。

特定目的会社スキームを利用するメリットとして、1つめは一定の要件下で誰でも投資家を募集できること、つまり一定の期間を決めて監督庁から許可を得れば、金融商品取引業としての登録をせずに、投資家を募集することができる。金融商品取引業の登録のハードルは高いため、このメリットは非常に大きい。

2つめは、投資できる財産や財産権の豊富さである。ほとんどの資産や財産権に投資することができ、不動産信託受益権に限らず、債権や現物不動産を取得資産とすることが可能だ。また、3つめとしては、各種税金や公租公課等の優遇措置があることや、一定の要件の元、パススルー課税が実現できることも大きなメリットである。

3.投資法人スキーム

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3つめのスキームは、投資法人スキームだ。SPCとして投資法人・投資信託に関する法律にもとづく投資法人を設立し、投資家から資金を集めて運用する。投資法人も一定の条件下で配当が損金算入可能になり、二重課税が回避される仕組みになっている。

合同会社匿名組合スキームや特定目的会社スキームは、特定の資産について、3~5年程度の運用期間で募集することが多いのに対して、投資法人スキームは、一定のテーマを定めた法人をつくり、運用期間を設けずに長期の運用を行うことが多い。

また、合同会社匿名組合スキームや特定目的会社スキームは特定の資産を流動化して、オフバランスをすることを目的として利用されることが多いのに対し、投資法人スキームは、先に資金を集めて収益性の高い資産などに対する投資を行うために利用されることが多い。

SPCを理解し、資金調達に活用

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SPCの役割は、企業から資産を切り離して保有することであり、SPCを設立することにより資金を調達しやすくなる。そのスキームは3つあり、それぞれにメリットが異なることなどを理解し、資金調達や資産管理の選択肢として活用していただきたい。

文・内山瑛(公認会計士)

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