情報を情報のままにしておいても、何も生み出しません。それをわかりやすく整理し、価値のある意味付けを行うのは、仕事をする上でも、チャンスを得る上でも役に立ちます。
例えば、以下のようなケースを見てみましょう。
Aさん(上司):「ところで、今君が担当しているエリアの店舗の状況はどうだい?」
Bさん(部下):「はい、婦人向け商品は前期比で売上89%です。子供向けも前期比90%の売上げです。それから、X地区とY地区にある店舗ではアルバイトがよく休んでシフト組みが難しいようです。そういえば、Z地区でも急に辞めてしまったスタッフの補充がまだできていません。また、店舗で必要だと思われるけれど今はないディスプレイ用の什器がいくつかあります。これは後で発注申請をかけてもいいですか?」
Bさん(部下)の答えを聞いたAさん(上司)はどう思うでしょうか。では、別の部下Cさんが、同じ質問に以下のように答えたらどうでしょうか。
Aさん(上司):「ところで、今君が担当しているエリアの店舗の状況はどうだい?」
Cさん(部下):「はい、商品・接客スタッフ・設備の3点でテコ入れが必要な状況です。商品カテゴリでは、女性・子ども向けの売上げが前期比約90%と不調で、原因を調べています。接客スタッフについては、X/Y/Z地区の店舗で安定的に配置できるよう施策を打つ必要があります。設備面では、売上げ向上に必要だと考えているディスプレイ用の什器がいくつかありますので、発注申請を後ほど検討いただきたいと思います。」
言っている情報はほぼ同じなのですが、受ける印象が大きく違います。Cさんの方がわかりやすく、有能で、信頼できる印象を受けるのではないでしょうか。さて、このようなやり取りが何カ月か続いた後、この会社で新しいプロジェクトが始まる時、BさんとCさんのどちらにチャンスが与えられそうでしょうか。
あなたが行う上司への報告や会議での発言は、Bさんタイプ・Cさんタイプのどちらが近いですか?
情報に付加価値を与える
Cさんが行ったことは以下の二つです。
1)カテゴリ分けをしてわかりやすくまとめて話している
2)その情報にはどういう意味があるのか?というCさんなりの意味付けがなされている
こう書くととてもシンプルですが、本当にわかりやすく網羅的なカテゴリ分けや、納得感の高い情報への意味付けというのは訓練が必要です。日頃から、情報や事象は、それをどのように捉えてどう対処するのかという示唆が得られてこそ価値があるということを念頭に置きながら、本を読んだり、ニュースを見たり、データを見るたびに以下のように考えてみると、よいトレーニングになります。
「それは自分にとってどういう意味があるのか?」
「それは○○さんにとってどういう意味があるのか?」
「それは○○という組織にとってどういう意味があるのか?」
「これらの意味をカテゴリ分けしてまとめてみると、どうなるのか?」
上記のトピックで友人や同僚とディスカッションするのも効果的です。私はこれまで国外で仕事をしてきて日本で何かあるたびに「この人がプライムミニスターになることは、日本にとってどういう意味があるのか」「それはあなたにとってどういうことなのか」などとまわりに聞かれ続け、その時は説明にとても苦労したのですが、後になって思うと非常にいい訓練になったと感じています。
情報に意味付けをするだけでは終わりではありません。その先がまだあります。これについて、あるバングラデシュ出身の大学教授が言っていた言葉がとてもわかりやすかったので、ご紹介します。
『情報は、そのままだとただの「Information」(情報)だ。
それをどのように活かすかがわかると「Knowledge」(知識)になる。
さらにそれを実際に生活や仕事で活用できれば「Skill」(スキル)となる。
スキルから汎用的な価値を見出だせば「Insight」(洞察・見識)が得られ、
さらにそれを将来に当てはめることができれば「Foresight」(先見の明)となる。
先見の明のあるのが「Wisdom」(智慧・賢人)である』
ただのInformation(情報)から、そこに意味を見出し、実務に活かし、スキルを得て、最終的にはWisdom(智慧・賢人)にまで昇華出来るような頭の使い方とコミュニケーション、そして行動ができるように、日々を過ごしたいものですね。
(執筆者:小早川 鈴加)GLOBIS知見録はこちら