政府がZEHに力を入れていることをご存じだろうか? ZEHに関する事業を行いながら収益を出している企業も存在する。今回はZEHの概要を説明しつつ、メリットやデメリット、対応ハウスメーカー、補助金制度などを紹介する。
ZEHの活用を検討している方はぜひ参考にしてほしい。
目次
ZEHとは?
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、エネルギーの供給量が消費量より多い家のことだ。ZEHの基準を満たしている家には大きく3つの特徴がある。
特徴1.エネルギーを生成できる
消費量<供給量にするには、家でエネルギーを生成しなければならない。したがって、創エネルギーシステムを備えている必要がある。
たとえば太陽光発電は、太陽光パネルに照らされる光を集めて電気(エネルギー)を生成しているため、創エネルギーに該当する。太陽光発電のほかには、ガスコージェネレーションや燃料電池などがある。
特徴2.省エネルギーに特化
家庭で発生しているエネルギーを削れるように設計されている。たとえば、消費エネルギーが少ないLED照明やエアコン、高効率な給湯システムの導入は省エネに適した特徴といえよう。
特徴3.断熱性がある
室内が温まりやすい素材を使って家の断熱性を高めているのもZEHの特徴だ。外気が入りにくい窓にする方法もある。
断熱性が高くなれば暖房の設定温度を低くしたり、暖房器具を使わずに生活を送れたりするかもしれない。結果、消費エネルギーを抑えられる。
ZEHの目的
ZEHの目的は、一次エネルギーの収支を0にすることだ。一次エネルギーとは、人間が手を加えることなく供給されるエネルギーをさす。
たとえば、石油や石炭、天然ガス、太陽熱などが該当する。ちなみに一次エネルギーは、電気やガスを消費するときに使う。
ZEHによって電気やガスの消費量が減れば、同時に一次エネルギーの消費量も減る。さらに、一次エネルギーの消費量が減ると、低炭素化も進む。つまりZEHの促進は、地球温暖化対策として大事な試みだといえよう。
ZEHの3つのメリット
ZEHの3つのメリットを確認してみよう。
メリット1.光熱費を抑えられる
ZEHは、ほかの家と比べて光熱費を抑えられる。自宅でエネルギーを生成できるからだ。
たとえば、発電した電気を家で利用すれば電気代が安くなる。しかも余った電気は売却できるため、家庭によっては利益が生まれる場合もある。
メリット2.室内の温度を保ちやすい
ZEHは断熱性が高いので、室内の温度が急激に下がりにくい。この特徴は、室内の温度差から生じるヒートショックの予防にもつながる。
ヒートショックは、暖かい部屋から寒いトイレや風呂場などへ移動したときに発症する。ZEHの基準を満たしている住宅であれば、トイレや風呂場の温度も低下しにくい。
メリット3.停電時でも電気を使える
停電になっても太陽光発電であれば電気を使える。自家発電装置や蓄電池なども停電対策になる。
ZEHの2つのデメリット
続いてZEHの2つのデメリットを確認してみよう。
デメリット1.費用が割高
ZEH基準の家を建設する場合、一般的な建設費と比べると費用が割高だ。通常と比べて高価な素材を使ったり、太陽光発電装置を完備したりするからだ。
ZEHの建築費用を抑えたい人は建設業者に相談してみるとよいだろう。
デメリット2.屋根の形状に制限がある
ZEHを建設するときは、屋根の形状に制限を受けるケースがある。なぜならZEHに太陽光パネルを付ける場合、確保する電力が決まっているからだ。
屋根の一方にだけ傾斜がある片流れ形の屋根を指定されることもある。屋根の形状にこだわる人には辛いかもしれない。
ZEHに関わる5つのハウスメーカー
国内のハウスメーカーでもZEHを建築している。ここでは、ZEHに対応したハウスメーカーを見てみよう。
ハウスメーカー1.ミサワホーム
ミサワホームは1967年に設立された会社だ。断熱効果を発揮できるよう、オリジナルの木製パネルを壁に埋め込んでいる。「熱交換型24時間フロアセントラル換気システム」を導入し、エアコン使用時の換気に生じるエネルギーも抑えられる構造だ。
また、太陽光パネルは比較的軽く、屋根への負担を小さくしてくれる。種類はストレートと瓦の2種類だ。理想とする屋根の形をイメージしながら決めるといいだろう。
ハウスメーカー2.トヨタホーム
トヨタホームはトヨタ自動車から2003年に独立した企業だ。トヨタホームでは、建築作業のうち85%前後を工場で行っている。建築中に雨で断熱材が濡れる機会が少ないので、劣化を抑えやすい。
また、発電装置には発電効率46.5%の「エネファームTypeS」を採用しており、家で使う電気(戸建住宅4人家族想定)の80%前後をまかなえる。
ちなみに保証期間は家が60年、太陽光パネルが15年だ。
ハウスメーカー3.ヤマト住建
ヤマト住建は1987年に創業した会社だ。自社のハウスブランド「エネージュ」は、優れた省エネ住宅を建設した会社に送られる「ハウス・オブ・ザ・イヤー」に11期連続で選ばれている。
しかも2014年と2017年においては、大賞を獲得した。現在は「KIKUBARUの家」と呼ばれるブランドで、低価格のZEH関連住宅を販売している。価格は868万円~だ。
ハウスメーカー4.旭化成ホームズ
1972年設立の旭化成ホームズでも「へーベルハウス」と呼ばれるブランドで、ZEHを取り扱っている。室内には給気口を配置し、常時外気を取り込める設計になっている。
さらにキレイな空気を取り入れるために、PM2.5を取り込まない微小粒子用フィルターを装備している。また、屋上は30年耐えられる防水設計になっており、長期間雨に打たれても水漏れしにくい。
ハウスメーカー5.サンヨーホームズ
サンヨーホームズは1969年に創立した会社だ。ZEHに対応した戸建住宅の建設を標準対応しており、過去には「ハウス・オブ・ザ・イヤー」にも選ばれた。
サンヨーホームズでは、一般的に設定されるZEHの基準よりも、さらに厳しい基準を設定している。建築後のランニングコストを抑えるプランを設けているのも特徴だ。
ZEHの補助金を管轄する3つの省
ZEHを建築・購入した場合、条件に該当すれば国から補助金を受け取れる。最後に3つの省で実施している補助金制度を紹介する。
1.経済産業省
「住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業」と呼ばれるプロジェクトで予算を組んでいる。
省エネや一次エネルギーの消費を0にするプロジェクトについて企業を補助する制度だ。条件に該当すればプロジェクト費用の一部を受け取れる。
ZEHに関する事業も対象プロジェクトの一部だ。補助率は、大きく分けると2分の1、3分の2、3分の2以内、定額の4通りであり、プロジェクトの内容によって決まる。
2.環境省
環境省はZEHの購入者や保有者向けの補助金に関する予算を組んでいる。
経済産業省と国土交通省が連携して行うプロジェクト「戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業」では、令和3年度の予算案として65.5億円を組んでいる。
「既存住宅における断熱リフォーム・ZEH化支援事業」では、戸建住宅(注文・建売)についてZEHの条件を満たすよう新築・改修する人に一戸あたり60万円、既存戸建住宅で断熱リフォームをする人に費用3分の1を補助する支援などが見受けられた。
そのほか、集合住宅を対象とした「集合住宅の省CO2化促進事業」もある。ZEHの利用者やZEHの利用を検討している方はぜひ確認してほしい。
3.国土交通省
国土交通省では「サステナブル建築物等先導事業」と呼ばれる名称で予算を組んでいる。これはZEH関連工事の中で、先導的だと認められた分の費用に対して補助金を受け取れる制度だ。
そのほかにも「地域型住宅グリーン化事業」と呼ばれる補助金制度を組み、一戸あたり最大140万円補助するプロジェクトも実施された。
ZEHに関する補助金の動向に注目
ZEHの基準を満たす家に住む人だけではなく、ZEH関連の事業者も補助金を受け取れるチャンスがある。一般的に補助金の制度は流動的であり、見過ごしてしまうこともあるだろう。ZEHに興味を持っている方は、貴重なチャンスを逃さないように、補助金の動向にも注目してほしい。
文・津田剣吾(フリーライター)