長引く新型コロナウイルスの流行は、さまざまな業界に影響を及ぼしている。生活密着度の高いコンビニやスーパーも例外ではない。この記事では、大手のコンビニとスーパーの売上の推移を追い、小売業に与えている影響を数字で読み解いていく。
スーパー2社とコンビニ2社の売上高の推移を比較
では、イオン(イオンリテール)とイトーヨーカ堂のスーパー2社、ファミリーマートとローソンのコンビニ2社をピックアップし、2021年2月期(2020年3月~2021年2月)の売上高の推移を見ていこう。各社とも数値は前年同月比(%)を表す。
企業名 | 2020年3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 |
---|---|---|---|---|---|---|
イオンリテール | 87.4 | 79.5 | 89.6 | 95.6 | 92.0 | 91.2 |
イトーヨーカ堂 | 90.5 | 70.1 | 83.2 | 101 | 98.8 | 99.9 |
ファミリーマート | 92.5 | 84.8 | 86.2 | 91.7 | 89.7 | 91.9 |
ローソン | 93.3 | 88.0 | 89.6 | 90.1 | 91.2 | 89.5 |
企業名 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 2021年1月 | 2月 |
---|---|---|---|---|---|---|
イオンリテール | 80.7 | 100.5 | 94.9 | 94.0 | 92.1 | 90.8 |
イトーヨーカ堂 | 89.0 | 106.9 | 100.7 | 98.9 | 98.9 | 94.6 |
ファミリーマート | 94.5 | 103.2 | 101 | 96.8 | 95.5 | 91.6 |
ローソン | 91.2 | 94.0 | 97.3 | 93.9 | 93.3 | 92.7 |
各社とも、傾向はおおむね同じようだ。新型コロナウイルスの影響が本格化し始めた2020年3月に数字を落とし、1回目の緊急事態宣言が発された4月に底を見せている。その後緩やかに回復し、秋ごろにはほぼ前年同期並みとなったものの、第3波が到来した年末ごろから再び悪化した。
なお、最新の2021年3月については、イオンリテールが102.5%、イトーヨーカ堂が102.2%、ファミリーマートが101.8%、ローソンが101.3%と、コロナ初年度の3月に比べ各社とも持ち直している。
スーパー・コンビニ各社の業績は?
次に、各社の2021年2月期決算を見ていこう。
イオンは連結で営業収益8兆6,039億円と前年並みを計上したものの、リーマンショック以来12年ぶりとなる710億円の赤字となった。ただし、内⾷需要の獲得でスーパーマーケット事業単体では、営業利益506億円(前期比135.7%増)の黒字となっている。
一方、イトーヨーカ堂を擁するセブン&アイ・ホールディングスは、連結で営業収益5兆7,667億円(同13.2%減)、当期純利益1,793億円(同17.8%減)となった。このうちスーパーストア事業は、営業収益1兆8,109億円(同2.1%減)、営業利益296億円(同39.3%増)の減収増益だ。イトーヨーカ堂単体の営業利益は77億円となっている。
ファミリーマートは、2020年11月に上場廃止したため決算資料ではなく業績概況を参照するが、営業収益は4,733億円(同8.5%減)、当期利益は164億円の赤字決算となった。なお、事業利益は人員数適正化をはじめとした販売管理費減少により、712億円(同10.4%増)となっている。
ローソンは、連結で営業総収入6,660億円(同8.8%減)、当期純利益は86億円(同56.8%減)と減収減益となった。なお、セグメント別の経常利益は、コンビニ事業のローソンが261億円(同42%減)、スーパーマーケット事業の成城石井は111億円(同22%増)と前年を上回ったようだ。
どうコロナ禍を戦い抜く戦略を立てているのか
さらに、各社の戦略ビジョンを見ていこう。
イオン:ネットスーパーの受け取りサービスの実施店舗を拡大
イオンは、コロナ対策として「イオン新型コロナウイルス防疫プロトコル」を策定したほか、需要が急増したネットスーパーの受け取りサービスの実施店舗を拡大したり、フルセルフレジ・セミセルフレジの導入を進めたりした。2021年度は、新たな中期経営計画のもとデジタルシフトなどを進め、200~300億円の黒字化を目指すとしている。
イトーヨーカ堂:店舗の構造改革やDXの推進
イトーヨーカ堂は、コロナ禍による消費行動の変化に伴って「ワンストップショッピング」のニーズが高まっていることを受け、店舗の構造改革を進めている。
グループ全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しており、配送効率の最適解の追求に向け、ECプラットフォームと連動する「ラストワンマイルDXプラットフォーム」の開発も進めているようだ。
ファミリーマート:在宅需要に対応した商品を拡充
ファミリーマートは、惣菜や冷食といった在宅需要に対応した商品を拡充するなど、消費動向の変化に対応しながら収益力を強化していく方針だ。2021年度計画では、営業収益を微減に留めつつ経営効率化を図り、当期利益810億円の黒字を目指すとしている。
ローソン:フードデリバリーサービスを強化
ローソンは、巣ごもり消費や買いだめ需要に対応した取り組みとして、強みのデザートや「まちかど厨房」の商品強化を図るとともに、需要が高まった生鮮品・冷凍食品・日配食品・酒類・常温和洋菓子の5つのカテゴリーで商品拡充を進めている。
また、コロナ禍でニーズが高まるフードデリバリーサービスを強化する。従来から展開してきた「Uber Eats(ウーバーイーツ)」に加え、2020年11月からは「foodpanda(フードパンダ)」の導入も開始しており、サービス導入店舗数は2021年2月末時点で1,472店舗にまで拡大している。
好調なスーパーに対し、減益目立つコンビニ
全体的には、コンビニ・スーパーともに内食需要の取り込みなどで客単価を高め、収益力を高めている印象だ。コンビニ・スーパーの比較では、コンビニの減益が目立つ。多店舗展開しているコンビニは、スーパーに比べ経営効率化・合理化を図りづらい面がありそうだ。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)