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日本M&Aセンターが行うM&A大学。 その卒業生として最前線で活躍するOB・OGバンカーにインタビューする企画の第8弾。

今回は千葉興業銀行 営業支援部 コンサルティング支援室 調査役 小笠原 晃良氏にインタビューした。

M&A大学とは
日本M&Aセンターが協業する地域金融機関に向けて行う、研修・出向制度。M&A大学入学者(地銀からの出向者)はM&Aシニアエキスパート研修(JMAC)、評価・概要書研修などの座学と日本M&AセンターとのコンサルタントによるOJTなどを経て、自ら顧客への提案からM&Aの成約、契約の締結までを完結できるM&Aコンサルタントとなることを目指す。

――当社への出向が決まった時、どういう風に感じましたか?

私は出向前、営業支援部コンサルティング支援室の法人エリア担当という仕事をさせていただいておりました。

法人エリア担当の仕事は担当するエリア内の営業店の事業承継、人材、経営効率化の3大ニーズを中心としたコンサルティング営業の推進でした。私が担当していたエリアは千葉の県東部のエリアで、都市部というより郊外エリアを担当していました。

どの支店に行っても、ご子息が事業を継がないとか、社長が高齢で80歳を過ぎても最前線に出ているなど、事業承継の話題は出てくることが多く、事業承継は経営上の大きな課題となっているということを肌で感じていました。

事業承継における選択肢は主に親族承継、社内承継、M&Aの3つですが、その中でもM&Aの分野はこれまでの銀行員生活の中で関わることがほとんどなく、理解できていない分野でした。

この分野を学ぶ機会をいただいたのは大きなチャンスでもあり、事業承継で大きな課題を抱えるお客さまの課題解決を手助けできると思いました。

――M&A大学に入学(実際には当社に出向)して、一番面白かったこと、役に立ったこと、印象に残ったことはありましたか?

日本M&Aセンターの弊行担当コンサルタントの方と一緒に様々なM&Aの案件に参加させていただきました。様々な案件に触れることで感じたのは、M&Aは最後まで油断ができないということです。

最終局面である株式譲渡の最終契約を締結し、譲渡代金を決済する段階まで行かないと、本当に気が抜けないなと感じました。今までの自分の感覚では、譲渡企業側と譲受候補企業側のトップ面談で双方のご意向と価額さえ合えば、話がトントンと進み、成約に進むと思っていましたが、全く別の論点で突然、破談するケースを経験しました。

担当コンサルタントの方とご一緒させてもらった案件のトップ面談では、双方の経営者同士の息がピッタリで事業シナジーも明確、まさに理想のお相手だ!という非常に良い雰囲気でトップ面談を終えました。しかしその後、譲受候補企業側からコンプライアンス上の問題となりそうなことがあるため見送りしたいとの連絡が入り、破談してしまったのです。

コンサルタントの方からすれば当たり前のことかもしれませんが、M&Aで成約するまでには価額等の提示されている条件以外にも多くの論点があり、その全てを双方が納得できなければ成約できないということを身にしみて体験することとなりました。

極端な話ですが、銀行なら融資した資金が回収可能かという財務的な面でほぼほぼ与信判断を下すことができると思いますが、M&Aは、財務面、法務面、労務面等のあらゆる論点があり、銀行の与信判断以上に検討すべき論点が多く難しいなと、実際に肌で感じました。

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――今のお話はトップ面談でのご体験でしたが、当社のコンサルタントと仕事をして面白かったこと、印象に残ったことはありましたか?

 コンサルタントの方々は、あらゆる状況のお客さまの案件を数多く手掛けられているので、いつ休んでいるのだろうと思うぐらい働いてらっしゃいました。

また、お客さまからのお問い合わせやご相談に対しては常に真摯に応対し、寄り添っている姿をすぐ隣で目にしていました。

このコンサルタントの方々の細やかな寄り添う姿勢と動きがあるからこそ、譲渡企業側の魅力を最大限引き出す事ができ、譲受企業側にもその魅力を余すことなく伝えることができる。そして、このことが結果として譲渡企業側にも譲受企業側にも信頼に繋がり、M&A成約率の高さに繋がっているんだなと感じました。

お客さまの中には、仲介業者を入れないほうがコストをかけずに安くできるとおっしゃる方もいますし、私自身も出向する前は、売りたい、買いたいというお客さまがいれば、相対でもすぐに成立する話で、仲介業者を入れるのは余計にコストがかかるだけなんじゃないかという思いを少なからずもっていました。

しかし、実際にM&Aの現場を見ているとそうではなく、逆に仲介業者がいることで本来出会うことすら出来ない相手に会うことができたり、双方の気持ちの折り合いをつけることができるなど、仲介業者が入るからこそで成立するM&Aがあることを近くで見ることができました。それがやはり印象的でした。

――千葉興業銀行さんは、いち早くオンラインセミナーを取り入れられましたよね。

当行では、毎年、事業承継とM&Aをテーマにしたセミナーを企画しており、2020年度はコロナ禍の影響でリアルのセミナーを行うことができず、急遽オンラインセミナーに切り替え、日本M&Aセンターと共催にて開催する運びとなりました。

コロナ禍でも、ちば興銀が事業承継(M&A)に力を入れていることを千葉県内のお客さまにアピールできたのは非常に良かったと思います。

――千葉興業銀行さんの使命は何だと考えられていますか??

ちば興銀の企業理念は「地域とともに、お客さまのために、『親切』の心で」です。地域の皆さまのお役に立つことが使命であると考えています。千葉県は東京都から近いのに実はM&Aがあまり進んでいません。

エリア担当の時にも感じていましたが、事業承継に悩みを抱えるお客さまは数多くいらっしゃいます。今後も、ちば興銀がお客さまの事業承継の悩みを解決する手段としてM&Aの活用を積極的に提案していきたいと思います。

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