毎年日本各地を襲う大型地震。2021年に入ってからも福島県沖で震度6強を観測するなど、東日本大震災の余波は今なお続いている。首都直下地震の発生も懸念されており、東京が被災した場合、その被害はどれほどに上るのか。可能性や対策についてまとめてみた。
最近も東北で最大震度6強の地震
東北地方では、2021年に入ってからも2月13日に福島県沖でマグニチュード(以下M)7.3、最大震度6強の地震を観測したほか、3月9日に宮城県沖でM4.9・最大震度4、同17日に福島県沖でM5.2・最大震度4、同20日に宮城県沖でM6.9・最大震度5強の地震が発生している。
気象庁によると、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(以下東日本大震災)の余震域における地震回数は減少傾向にあるものの、依然として本震発生以前に比べ多い状態が続いているという。
余震域で発生したM4.0以上の地震回数は、本震発生後1年間は5,387回を数えたが、直近の1年間(2020年3月11日~2021年3月11日)では212回と25分の1まで減少した。ただし、本震発生前の10年間における年平均は138回となっており、今なお高い水準が続いている。
改めて地震の怖さを世間に知らしめた
2月13日の福島県沖の地震では、死者1人、負傷者186人、住家全壊24棟、住家半壊67棟などの被害が発生した。
気象庁のまとめによると、人的被害を伴った国内における大規模地震は、2016年に7回、2017年に4回、2018年に3回、2019年に6回、2020年には4回、それぞれ発生している。
中には、273人の犠牲を出した熊本地震や、同43人の北海道胆振東部地震なども含まれている。大規模地震は決して他人事ではない。各地で地震が起こるたび、戦々恐々とする人も多いのではないだろうか。
首都直下地震が起きる可能性と想定被害
文部科学省に設置されている地震調査研究推進本部地震調査委員会が公表した「全国地震動予測地図2020年版」によると、伊豆諸島・小笠原諸島を除く東京都において、今後30年の間に震度5強の地震が発生する確率は92.2%、震度6弱が47.2%、震度6強が8.6%だ。
一方、内閣府に設置されている首都直下地震対策検討ワーキンググループが、2013年に発表した「首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)」によると、首都直下のM7クラスの地震が30年間に発生する確率は70%だ。
M7クラスとしては、東京都区部及び首都地域の中核都市などの直下が想定される地震として、フィリピン海プレート内の地震(M7.3)、地表断層が不明瞭な地殻内の地震(M6.8)の2種を挙げている。断層の直上付近では震度6強、その周辺の広域で6弱、地盤の悪いところでは一部震度7を観測する可能性があるという。
地震の揺れによる被害は、全壊家屋約17万5,000棟で、建物倒壊による死者は最大約1万1,000人、要救助者は最大約7万2,000人を想定している。
また、市街地火災により最大約41万2,000棟が焼失し、建物倒壊等と合わせると最大約61万棟が被害を受ける。想定される死者の数は、最大約1万6,000人、建物倒壊等と合わせ最大約2万3,000人だ。
電力や水などのライフラインは、東京都区部の約5割が停電・断水し、地下鉄は1週間、私鉄・在来線は1ヵ月程度運行停止する可能性があるという。
首都直下地震が起きた場合の東京の対策は?
東日本大震災の発生を踏まえ、東京都は木造住宅密集地域の改善を図る「木密地域不燃化10年プロジェクト」を2012年に立ち上げるなど、「燃えない」「倒れない」震災に強い都市づくりを推進している。
延焼被害の恐れがある木造住宅密集地域は、2016年の約1万3,000ヘクタールから2020年には約 8,600ヘクタールに減少している。
2021年度から10年間に行う「防災都市づくり推進計画」において、耐火建築物等への建替えを促進する不燃化特区制度や、延焼遮断帯を形成する主要都市計画道路(特定整備路線)の整備を5年間延長し、引き続き整備地域の不燃化を強力に推進していく方針を打ち出している。
このような不燃化が進むことで、有事の際の避難場所も確保しやすくなる。東京都は、2021年4月時点で213の避難場所を指定しているほか、不燃化が進み広域的な避難を要しない地区内残留地区を37ヵ所設定している。
また、多くの帰宅困難者が発生した東日本大震災を契機に、帰宅困難者対策条例の制定や帰宅困難者対策実施計画を策定した。情報を一元的に集約したポータルサイトの整備や情報発信を行う「帰宅困難者対策部門」の設置、一時滞在施設の確保などを進めている。
企業に対しても、防災備蓄倉庫や非常用発電室の整備を促進するなど、施設内待機を可能にして一斉帰宅を抑制する計画の整備などを促進している。
首都機能移転論争が再燃
日本では以前から、首都機能移転論争が繰り返されていたが、東日本大震災による首都機能の麻痺を契機に論争が再燃した。結果として、文化庁が京都市に2022年度をめどに本格移転するほか、消費者庁が2020年度に一部機能を徳島市に移転している。
慎重な議論を要するため一朝一夕とはいかず、論争の火種は小さくなったようだが、一極集中のメリットとデメリットのせめぎ合いは今後も続きそうだ。
常日頃からシミュレーションを行うことが大事
昼間人口、夜間人口ともに膨大な東京では、個々人に寄り添うような防災対策は現実的に難しい面がある。故に、震災被害を最小限にとどめる施策が目立つ印象だ。有事の際において自分の身を守るのは自身に他ならない。所属する企業や地域の防災計画や避難所情報などに改めて目を通し、常日頃からシミュレーションしておくことが肝要だ。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)