オンライン化で潮目が激変。IT部門を全てフリーランスで揃える地方企業も現わる
(画像=代表取締役社長 CEO 秋好陽介)

2020年3月期決算で過去最高水準の売上高・売上総利益を記録したランサーズ。発注側の企業と受託側の個人スキルをオンラインでマッチングするマーケットプレイス(電子市場)の先駆者だ。コロナ禍を追い風に双方とも登録者が増え、企業にも個人にもさまざまな変化が見られたという。

創業代表の秋好陽介氏は、ランサーズの創業時から個のエンパワーメント(能力開花)をミッションに示し、事業を広げてきた。今でこそ、性別で差別されない機会の平等や多様性が叫ばれており、時代がランサーズに追いついてきた。今回は秋好氏に、事業に込めた想いや今後の展望などを伺った。

地方の企業と地方のランサーたちが結ばれ始めた

ランサーズのサービスでは、IT職種のデジタル人材とそれを求める企業とのマッチング案件が多い。これまでは特に、システム開発やWeb制作、デザイン、ライティング、写真や動画撮影のスキルを持つフリーランスへのニーズが高かった。ところが秋好氏は、「2020年コロナ禍以降、潮目が激変しました」と、これまでを振り返る。

「事業の伸びが顕著になり、今までと異なる業種の企業や職種、年齢層のフリーランスが当社サービスに登録いただくようになりました。

たとえば、中部地方のキッチン用品のメーカーさん。これまでのように実演販売で商品を見てもらう機会が減り、オンラインで販売せざるを得なくなったそうです。しかし、地方にはWeb制作を担えるエンジニアなどの人材が少なく、直接は雇用できない。そこで、オンラインで依頼しようとランサーズをご利用いただくようになったのです」

これまで発注側は6割が東京の企業で、多くはIT企業だった。コロナ禍をきっかけに、例えば不動産会社のような非IT企業が、オンライン・EC・DXに舵を切り、IT化を推し進める流れができたのだという。

一方、仕事を請けるフリーランス側は、もともと7割が地方在住者。変化したのは組み合わせだ。たとえば、長野にある企業が大阪在住のマーケターへ発注するというように「地方企業から地方在住者へ依頼する」流れが、新しい現象として起きた。

また、副業解禁やコロナ禍でのオンライン化の流れを受けて、これまでランサーズで見られなかった年齢層や職種の登録者が増えたのだという。

「今までは20〜30代の会社員か40〜50代のフリーランスが多かったんです。ところが今は、会社勤めの30〜50代のマネージャーや部長クラスの方が登録してくださるようになりました。プロジェクトマネジメントという今までは無かった登録が増えており、副業でマネジメントを教えるニーズも急激に高まっています」

かつては、不特定多数を相手に応募を告知する「クラウドソーシング」式が主流だったが、現在は顔写真の付いた特定の個人を企業が指名する形式が主流に。かつてのクラウドソーシング式は取引量のうち10%にも満たないという。

「私の秘書をお願いしているのは、タイのバンコクに住んでいる方です。決算説明資料もホームページ制作もオンラインでフリーランスの方に依頼しました。自社の社員にお願いするのと同様の感覚で依頼しています。しかも、クラウドソーシング式より報酬の平均単価が4〜5倍は高い。一度、信頼関係ができれば継続して受発注が続く点も、受託するフリーランスにとってメリットが大きいですね」

フリーランス同士がチームを組めるサービス『マイチーム』にも力を入れているという。これまでフリーランスは個人の信用度の限界から、高額でも月100万円程度が限度額だった。『マイチーム』を通じてエンジニアやデザイナー、マーケターがチームを組んで受注することで、月単価1,000万円クラスの案件も受けることも可能だそうだ。

「個人の幸福の追求」に共感して集まったメンバーたち

「個のエンパワーメント」のミッションには、個人も企業も自分たちらしく働ける世の中を願う想いが込められている。SDGsやサステナブルという言葉が流行する前から秋好氏が意識してきた言葉だ。

その思いの原点は、インターネットに初めて触れたときにさかのぼる。

「インターネットに初めて触れたときから、誰もが情報にアクセスできるインターネットは全てを民主化させ、個人が活躍できる時代が来ると思っていました。2000年頃からは2ちゃんねるやヤフオクが登場し、1つのプロダクトが何万人に使われることに衝撃を受けた。あの世界観を創りたいと思いました」

大学時代はフリーランスエンジニアとして活躍し、IT企業を経て2008年、実弟とともにランサーズを創業。

「創業時から『個のエンパワーメント』と言ってきました。テクノロジーで誰よりも自分らしく働ける人を増やし、適正な報酬を得られる人を増やすこと。企業が、能力のあるフリーランスに直で発注できる場がオンラインにあればお互いハッピーになれるのに、場がなかった。そのためにランサーズを始めたんです」

ところが2019年にマザーズ上場を果たすまで、すんなりと事業を拡大できたわけでは無かった。当初は閑古鳥が鳴いていたのだ。

「まるで、無人島の中に豪華な遊園地を建てたようなものでした。せっかくいいものを日々作っているのに、誰も使ってくれない状態は苦しかったです。向かっている方向が良いのか悪いのか、ユーザーがいなければ仮説検証もできませんでしたから」

しかし次第に「どうやって見つけてくれたのかは不明ですが」、ユーザーが訪れてくれるように。その方たちへ向けて最大限、いいと思ってもらえるように向き合った。やがてクチコミが評判を呼び、ランサーズのサービスは広まっていったのだという。

「もともと、儲けたいから始めた事業ではありません。オンラインを通じて、時間にも場所にもとらわれない個人を増やし、その幸福を追求したい、との想いで創業しました。それに共感してくれたメンバーが集って成り立っている会社です」

教育と金融で個のエンパワーメントをより強力に

日本企業のDXが進めば、デジタル人材は今後もますます必要とされるだろう。その中で特にランサーズが注力したいのは、中小企業向けサービスだそうだ。日本のフリーランス人口やオンライン化率は、アメリカに比べると著しく低い。それだけ、地方でマーケターやエンジニアを直接雇用できない企業の力になれる伸び代が多いとも言える。

「ランサーズを使ってくださっているのは2,3代目社長が多いんです。初代の意向を受けて跡を継ぎ、従業員は60代が中心の中で、30〜40代くらいの若い2,3代目社長がITを武器に新しい時代を切り拓こうとする。そんなパターンが多いんです。

2,3代目がIT事業を立ち上げて、部員は全員フリーランス、なんてことをやってらっしゃいます。そんな方々を当社で支援したい。DX推進に悩んだら、一度お声がけいただければと思います」

IT分野以外では、教育分野の拡大を視野に入れているという。すでに現在、オンラインメンターサービス『MENTA』を運営し、個人同士が教え教わる機会を創出している。

「これまでは新卒一括採用された若手が会社の中で育成されていました。しかし現代は変化の時代であり、社会人になってからもずっと学びを続ける必要があります。当社では、業務遂行に必要なスキル習得のための教育分野を強化し、教育の効率化、オンライン化を推進していきます」

ほかにも、フリーランスが生きていく中でぶつかる課題、例えば「住宅ローンが組みにくい問題」などを解決すべく、金融面での支援事業を強化したいと考えているそうだ。個が活躍できる場は揃ってきた。あとは、個人の意識と社会が変わる番かもしれない。

<会社情報>
ランサーズ株式会社
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3丁目10-13 TOKYU REIT渋谷Rビル 9F
https://www.lancers.co.jp/

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