ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が開業20周年を迎えた。今年を「20周年イヤー」と位置付け、さまざまなイベントを開催するが、コロナ禍の影響で集客面では懸念が大きい。20周年イヤーを成功させ、アフターコロナに弾みをつけることができるのだろうか。
業績悪化からのV字回復を果たしたテーマパーク「USJ」
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは日本を代表するテーマパークの1つだ。大阪府大阪市で開業したのは2001年3月で、その後、毎年のようにさまざまなアトラクションや新エリアが導入されていった。
しかし、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの運営状況は決して順風満帆であったわけではない。開業初年度は入場者数が1,100万人に達するなど順調なスタートを切ったが、その後は入場者数が落ち込み、2009年には700万人台前半まで減った。
運営会社は2007年に東京証券取引所のマザーズへ上場したが、2009年には業績を立て直すために投資ファンドの傘下に入り、上場廃止となっている。そしてその後、USJはV字回復を果たす。その立役者となった人物が2010年入社の森岡毅氏で、次々と大改革を成功させた。
新型コロナウイルスで臨時休業、業績に大きなダメージ
このようにV字回復の歴史を持つユニバーサル・スタジオ・ジャパンだが、最近は厳しい状況が続いている。2020年から始まった新型コロナウイルスの感染拡大の影響をダイレクトに受けているのだ。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは感染拡大の防止に向け、2020年2月29日から6月18日までパークを臨時休業した。当初は5月中旬までの予定だったが、緊急事態宣言が延長されたことを受け、開園時期を後倒しした。
その後、感染防止対策を徹底した上で来場者の入場制限をかけながら営業をしていたが、7月にユニバーサル・スタジオ・ジャパンに勤務するクルー1人が、新型コロナウイルスに感染したことが判明し、来場者の不安感を煽った。
ただし、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでクラスターが発生したという報道はなく、「密」が発生しやすいテーマパークで感染拡大を防止できたことについて、高く評価する声も少なくない。
まん延防止等重点措置が20周年イヤーの開幕に冷や水
このような状況の中でユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、2021年3月31日、開業から20周年を迎えた。この節目の日に、本来であれば華々しいセレモニーを実施する予定だったが、感染防止の観点から大規模なイベントの開催を見送らざるを得なかった。
また、4月に入ってからもパークの営業に逆風が吹く。新型コロナウイルスの感染者が増えたことにより、大阪で「まん延防止等重点措置」が適用されたのだ。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは1日当たりの上限入場者数を2万人から5,000人へと引き下げ、年間パスの新たな販売も一時取りやめる措置をとった。また、大阪府の吉村知事は2021年4月19日、国に対して緊急事態宣言の発出を要請する考えを示し、宣言が出ればデパートやテーマパークにも休業要請を行う方向で調整するという意向を示した。20周年イヤーが始まったばかりでこの状況だ。
しかも、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは20周年イヤーに向けて先行投資もしている。その代表的な先行投資が新エリア「スーパー・ニンテンドー・ワールド」だ。
スーパー・ニンテンドー・ワールドは、任天堂をテーマにした世界初のエリアで、USJのJ.L.ボニエ社長兼CEO(最高経営責任者)は「このエリアは、誰もが夢にまで見た『マリオになる』ことができる場所です。そうです、WE ARE MARIO!なのです。現実になったゲームの世界で、全身を使って暴れまわってください」と語っている。
スーパー・ニンテンドー・ワールドはすでに3月中旬にグランドオープンしており、本来であれば多くの来場者を引き寄せるはずだった。しかし、まん延防止等重点措置が冷や水を浴びせた格好となった。先行投資した費用の「回収」が遅れると、業績の悪化はより顕著になっていく。
USJの「今後」については悲観的になる必要はなし!?
では最後に、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの「今後」を考えてみるが、この点に関しては特段、悲観的になる必要はないと思われる。
まず、新型コロナウイルスが世界的に収束し、訪日観光客も戻ってくれば、入場者数がビフォーコロナの水準まで戻るのにはそう多くの時間はかからないと思われる。入場者数が戻るにつれ、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの業績は確実に回復していくだろう。
そしてこれまでにもやや触れたが、コロナ禍が収束するまでにクラスターを発生させなければ、安全・安心面でユニバーサル・スタジオ・ジャパンへの信頼度は以前より高まり、テーマパークとしてのブランド力も増すはずだ。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが、V字回復の歴史・経験を有していることも大きい。過去に挫折を味わった人ほど強い。それは企業も一緒だ。コロナ収束後は、ビフォーコロナ以上の楽しさやときめきを多くの人に与えるテーマパークとして、復活するのではないだろうか。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)