大塚家具が最新決算で7年ぶりの増収を果たした。ヤマダホールディングス(HD)と始めた連携販売が功を奏した形だ。まだ赤字は続いているが、「親子喧嘩」も終わり、さらに業績も回復傾向にあることで、大塚家具の株主はほっと胸をなで下ろしている。
大塚家具の「親子喧嘩」について振り返る
大塚家具は大塚勝久氏が1969年に創業した日本の家具販売店だ。勝久氏は全国に店舗を展開し、一代で日本を代表する家具メーカーとなるまで企業を大きくした。まさに実力派社長であると言える。
その勝久氏の娘である久美子氏が2009年に社長に就任してから、勝久氏と久美子氏の親子喧嘩が始まった。経営方針や企業ガバナンスの在り方をめぐって意見が対立し、久美子氏の社長解任・社長復帰を経て、大塚家具の実権は最終的に久美子氏が握ることとなった。しかし、久美子氏が率いる大塚家具は経営不振に苦しみ、久美子氏は最終的に大塚家具を去った。
久美子氏が社長在任中にヤマダHDの子会社に
ただし、久美子氏が社長に在任中に、現在の業績の回復につながる布石が打たれたことも知っておきたい。2019年12月、大塚家具はヤマダHDの子会社となった。ヤマダHDが大塚家具の株の過半数を取得し、大塚家具を買収した形だ。
ヤマダHDは、それまでに住宅関連事業を新たな売上の柱にしようと動いた経緯があり、大塚家具の買収で同事業を強化する狙いがあった。そして子会社化によって、販売の連携が始まる。大塚家具で家電を、ヤマダHDの店舗で家具を販売するようになったわけだ。
そしてこの「連携販売」が、大塚家具の最新決算における売上増に寄与する結果となった。
最新決算で売上高が前年同期比3.0%増に
では大塚家具の最新決算を紐解いていこう。
大塚家具は2021年3月11日、2021年4月期第3四半期の連結業績(2020年5月〜2021年1月)を発表した。売上高は199億8,400万円で、前年同期より売上高が5億7,400万円増え、約3.0%の増収となった。
この増収に大きく貢献したのが、ヤマダHDとの連携による家具・家電販売だ。この販売分の増収が25億6,000万円に上っている。今期の通期の業績予想は28億9,000万円の赤字となっているが、連携販売による売上高がさらに伸びれば、将来的な黒字転換も見えてくるはずだ。
ここ数年の大塚家具の売上高の推移をみると、いかに今回の増収が重要な節目であるかが理解できる。2015年の売上高は580億400万円だったが、2018年には400億円台を割り、2020年は348億5,500万円まで落ち込んでいる。
このように、下降の一途をたどっていた売上高が、ついに上昇トレンドに推移しつつあるわけだ。このような点は、大塚家具の株主にとっても良いニュースとして捉えられている。
増収により株価も回復、投資家からの期待感高まる?
大塚家具の株価は近年、右肩下がりの状況が続いている。2017年に1株1,000円台を割り、2018年には500円台を割った。2020年の年初は200円台で推移していたが、2~3月ごろに100円台となり、最近も100円台と200円台を行ったり来たりの状況だった。
しかし、2021年4月期第3四半期の連結業績が発表された3月11日を境に、株価のトレンドが変わった。
決算発表の翌日の3月12日の終値は前日比5.7%減の228円と振るわなかったが、週末を挟んで3月15日に株価が前日比14.0%増の260円、さらに翌日の3月16日には前日比10.7%増を記録し、288円まで高まった。300円台をうかがうところまで株価が回復したわけだ。
その後は上昇が一服し、3月24日には250円まで株価が下がったが、それでも決算発表前よりは高値を維持している。
売買の量を示す出来高も決算発表後に急増しており、多くの投資家が大塚家具の株の売買に参加したと考えられる。これまでの大塚家具の業績低迷によって、同社の株を過去に手放した株式投資家も多いはずだが、改めて自身のポートフォリオに大塚家具の株式を加えた人は、少なくなかったであろう。
上場廃止の危機を回避できるかが今後の焦点
久々の増収と株価の上昇は大塚家具の業績回復に確実な追い風となるが、予断を許さない状況は続いている。現在、大塚家具は上場廃止の猶予期間に入っているからだ。
猶予期間入りが発表されたのは2020年7月である。その理由について東京証券取引所は、「最近4事業年度における営業利益及び営業活動によるキャッシュ・フローの額が負であること」とし、猶予期間内にこの状況を解消することなどを上場継続の条件としている。
上場が廃止されれば大塚家具のブランドイメージに大きなキズがつき、売上が再度落ち込むことも十分に考えられる。そのため、上場維持が大塚家具の目下の目標となる。猶予期間は2022年4月30日までである。大塚家具が上場廃止を回避できるかが、しばらくは焦点となりそうだ。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)