矢野経済研究所
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欧州のバッテリー政策は「アジア排除」にあらず、欧州におけるバッテリーバリューチェーンの構築には欧州とアジアの協業が必須

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、 欧州におけるバッテリー産業を調査し、現状の政策背景、バッテリー規制、研究開発プロジェクト、 参入企業動向、将来展望を明らかにした。

1.調査結果概要

欧州では政策主導でxEV(次世代車)の普及を進めている。排ガス規制を厳格化し、罰則を設けているため、自動車会社は対応せざるを得ない状況であるが、一方ではxEVの急速な普及においてバッテリー(二次電池)の調達が課題となっている。

バッテリーのサプライチェーンはアジアが中心であり、欧州にはほとんど拠点が存在していない。そうした中、韓国や中国のセル(電池)メーカーが欧州に拠点を構築しているが、欧州における膨大なxEV向けのバッテリー需要を満たすためにはアジア企業の生産能力だけではバッテリーが不足している。また、xEVのコア技術であるバッテリーをアジアに依存したままでは利益の多くがアジアに流出するため、経済防衛上好ましくないという懸念があり、欧州ではバッテリーを中心としたサプライチェーンの構築を欧州主導で、かつ欧州以外のメーカーを排除した形で行おうとしている。
ただ、技術的には未熟であり、経験が不足している欧州企業だけでサプライチェーンを構築するのは現実的ではなく、様々な規制や思惑がある中で、欧州とアジアが共存できる道はどこにあるのかを探ることが必須である。

2.注目トピック

欧州におけるバッテリーバリューチェーン構築に向け、政策総動員

欧州におけるバッテリーバリューチェーン構築に向けた政策のベースは2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みである「パリ協定」である。 その後、欧州は環境政策を主柱とした、自身の成長戦略「欧州グリーンディール」を2019年末に発表し、野心的な長期目標である2050年気候中立目標を制定した。その達成に向けて、モビリティやエネルギー分野のクリーン化は必須であり、今後、バッテリーをコア部品とするEVやエネルギーストレージの普及はその鍵となる。

一方で、現状の欧州は、バッテリーバリューチェーンのコア部分とも言えるローマテリアル(原料調達はアフリカ)からマテリアル、コンポーネント、 バッテリーセルまでのサプライチェーンをほぼアジアからの輸入に頼っており、欧州でバッテリー産業が比較的確立しているのは バッテリーパックの組み立てや、EV製造、バッテリーリサイクルといった段階のみである。このような依存状況を打開し、自立したバッテリーバリューチェーンを構築することは欧州が2050年気候中立目標を達成するにあたり極めて重要な要素であり、様々な環境・バッテリー政策、バッテリー規制、産業構築に向けた資金供与がなされている。

調査要綱

1.調査期間: 2020年9月~2021年2月
2.調査対象: 欧州におけるバッテリー関連政策、及びバッテリー産業構築に向けた企業動向
3.調査方法: 当社専門研究員による文献調査
<本調査について>
欧州、おもにEU域内で構築されるバッテリー(二次電池)のバリューチェーン(ローマテリアル[鉱物資源]、マテリアル、コンポーネント、セル、リサイクルまでのサプライチェーン含む)を対象とし、調査を実施した。

※参考資料
車載用リチウムイオン電池世界市場に関する調査を実施(2021年)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2671
xEV世界市場に関する調査を実施(2020年)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2491
リチウムイオン電池のリユース・リサイクル動向に関する調査を実施(2019年)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2213
<市場に含まれる商品・サービス>
バッテリー

出典資料について

資料名2021 欧州におけるバッテリー産業の現状と将来展望
発刊日2021年02月26日
体裁A4 115ページ
定価150,000円(税別)

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