保育園の常識を変える!「スマート保育園®」を提供するチャイルドケア・テック
(画像=THE OWNER編集部)

待機児童問題の解消を目指す上で、大きな課題となっている「保育士不足」。そんな社会課題の解決をICTの活用によって実現しようとしているのがユニファだ。同社では乳幼児の睡眠チェックから連絡帳アプリまで、保育施設に向けた多様なサービスを提供している。土岐CEOに話を聞いた。

會田武史
土岐 泰之(ユニファ株式会社 代表取締役CEO)
1980年生まれ。九州大学経済学部卒。2003年住友商事に入社し、リテール・ネット領域におけるスタートアップへの投資および事業開発支援に従事。その後、外資系戦略コンサルティングファームのローランド・ベルガー、デロイトトーマツにて、経営戦略・組織戦略の策定および実行支援に関与。そして二児の父として自身の「共働きの中での育児の大変さ、子育て環境を支えるサービスの必要性を痛感」した経験をもとに、2013年5月にユニファ株式会社を設立。全世界から1万社以上が参加した第一回スタートアップ・ワールドカップ(2017年)で初代優勝をする。

保育の現場を効率化する各種サービスを提供

――ユニファの提供するサービスについてご説明ください。

土岐 最新のテクノロジーを活用し、子ども・保護者の安心向上、保育業務の負担軽減を実現する「スマート保育園®」構想を掲げ、各種サービスを提供しています。

たとえば「ルクミー®午睡チェック」は、センサーとアプリを利用して、睡眠中の園児たちの「うつ伏せ寝」や「体動停止」を検知し、アラートで教えてくれるサービス。「キッズリー」は、連絡帳や登降園状況管理など、保護者と保育者のコミュニケーションを深めるさまざまな機能が統合されたサービスです。

その他、検温と記録を効率化できる「ルクミー®体温計」、園内の子どもの写真や動画をオンライン上で購入できるフォトサービス「ルクミー®フォト」、保育者のシフト表を迅速に作れる「ルクミー®シフト管理」など、いろいろなサービスを提供しています。

保育園の常識を変える!「スマート保育園®」を提供するチャイルドケア・テック
(画像=ユニファの描く「スマート保育園®」のイメージ/画像提供:ユニファ株式会社)

――他の保育園向けICTサービスとの違いは?

土岐 フォトサービス、連絡帳サービス、午睡センサーなど、それぞれ単体でサービスを提供している会社はありますが、保育施設に関する幅広いサービスをワンストップで提供しているのは当社のみです。

また、当社は凸版印刷と資本業務提携をしており、同社グループで保育園とのネットワークを持つフレーベル館と共に当社サービスの販売を行っています。保育施設の業務全体をカバーするプロダクトと、強力な販売体制を持つ点が他社にはない強みと考えています。

――どれくらいの保育施設に導入されているのでしょうか?

土岐 導入延べ数は2020年末時点で1万件を超えます。私立の保育園に導入されるケースが多いです。厚労省「保育所等におけるICT化推進等における補助金」に対応していることや、コロナ禍で検温サービスに注目が集まったことなどを背景に、導入件数は急速に伸びています。

保育者にも保護者にも大きなメリット

――サービスを導入した保育施設ではどのような効果が出ているのでしょうか?

土岐 たとえば睡眠中のチェックの業務。従来なら睡眠中の園児の体の向きを5分おきに確認して、手書きで記録をすることが一般的でした。ユニファの「午睡チェック」を利用すれば、センサーが園児の体の向きを検知し、アプリが自動で記録してくれます。目視と機械によるダブルチェックによって命の見守りの質を向上させつつ、保育者の業務負担を大きく軽減できます。

園児の写真販売に関する業務でも同様です。従来は、園児の写真を撮影し、プリントして、それを壁張りしたりアルバム張りしたりして保護者に見せ、注文を取って、焼き増しして販売するといった業務がありました。ユニファのフォトサービスを利用すれば、保育者は写真を撮るだけで、それ以外の作業はすべて自動化されお任せいただけます。

各サービスをまとめて導入していただいた場合には、1施設で150時間くらいは業務時間を削減することができます。保育者は書類系の業務や精神的な負荷の高い業務が軽減されることで時間と心のゆとりが生まれ、しっかりと園児と向き合い、本来あるべき保育や、より質の高い保育を提供できるようになります。

――保育士不足の解消にも役立っているのでしょうか?

土岐 そういった声もいただいています。保育者不足の昨今、1人の保育者を採用するには100万円程度の費用が掛かります。1年に4、5人が辞めれば、年間400、500万円の採用経費がかかってしまいます。当社サービスを導入して保育業務のICT化を進めることは、保育者の業務負荷・精神的負荷を軽減することになり、離職防止に役立ち、採用経費の抑制につながります。

さらに「キッズリー保育者ケア」という機能を使えば、保育者一人ひとりのコンディション変化を観察し、適切なタイミングでフォローすることで離職を未然に防ぐこともできます。

このように、ICTの導入によって働きやすい環境を構築することは、採用活動の際のアピールにおいても有効です。昨今の保育者は就職活動の際、保育施設のICT化の状況を重視する傾向にあります。保育者に選ばれる保育施設になるためも、当社サービスの導入は大きな役割を果たしています。

――保護者にとってもいろいろなメリットがありそうです。

土岐 そうですね。たとえば園内の写真販売について、保護者にとっては「写真が少ない」「動画もほしい」「プリントではなくデータでほしい」などの不満がありました。当社のサービスを使えばこれらの不満を解消できます。

連絡帳についても同様です。当社の提供する連絡帳には写真添付機能やスタンプ機能も付いているので、表現力がアップし、園児の様子がより伝わりやすくなります。またスマートフォンでお子様の登園・欠席・遅刻を報告できるので、保育園に電話をかける必要がなくなります。こういった機能は保護者にとても好評です。

自分の子育てでの苦労をきっかけに起業を決意

――なぜ、保育施設向けのサービスを提供しようと考えたのでしょうか。

土岐 共働き世帯が増え女性の就業率が上昇する中で、保育施設の利用率は大きく上昇しており、保育施設は社会インフラとなっています。一方で、保育者は業務負担が大きいため、離職率が非常に高いことが社会課題となっています。特に若手保育者の離職率は18%もあるといわれます。

保育者の離職を防ぎ、保育者不足を解決することは、女性の活躍支援や日本経済発展に欠かせません。そのような社会課題をICTで解決したいと考え、各種サービスを提供しています。

――起業したきっかけは?

土岐 もともと私は、社会課題の解決に対して大きな関心があったわけではありません。ただ、住友商事や外資系コンサルティング会社などで働き、いろいろな経営課題に向き合うなかで、自分にとって命がけで取り組めるテーマを見つけて起業したいと考えていました。

そして自分が二児の父になったときに、共働きをしながらの育児で大変な思いをし、「こんなに子育てが大変では家族が幸せになれない」と痛感。子育て環境を支えるサービスが必要と考え、2013年にユニファを設立しました。

「家族の幸せ」を目指し世界ナンバー1の事業規模へ

――今後のビジョンは?

土岐 全国に保育園やこども園は5.6万施設あると言われていますが、その半分程度には当社のサービスを広げていきたいと考えています。現在は民間の施設がメインですが、福岡市や横浜市などでの実証実験が進むなど、公立の施設でも受け入れられる下地が整いつつあります。全国の施設での「保育の質の向上」を当社サービスで実現したいと思います。

2019年には総額約35億円のシリーズC資金調達を実施しました。この資金を生かし、既存サービスの改善や新規サービスの立ち上げを含めて事業基盤の強化を図り、「スマート保育園®」の実現に向けて加速していきます。そして近い未来にIPOを行うために準備も進めています。

さらに中長期的には、「スマート保育園®」に蓄積された乳幼児に関連する健康・発達データを活用して、子どもの成長を支援するサービスを提供していきたいと考えています。たとえば、子どもの興味関心に合わせて絵本やおもちゃを推薦する、健康状態や発達状態に合わせて適切なアドバイスを提供する、といったこともできるようになるでしょう。小児科医やベビーシッターと連携すれば、もっと多様なサービスも実現できます。また、アジアを中心に海外にも展開していきます。

私たちのパーパス(存在意義)は、「家族の幸せを生み出すあたらしい社会インフラを世界中で創り出す」です。このパーパスに沿った事業であればどんどんチャレンジしていきたい。そして、この事業で世界ナンバー1になることを目指していきます。

保育園の常識を変える!「スマート保育園®」を提供するチャイルドケア・テック
(画像=ユニファの今後の事業展開/画像提供:ユニファ株式会社)

<会社情報>
社名:ユニファ株式会社
代表者:土岐 泰之
設立:2013年5月
資本金:34億8,399万円(資本準備金含む)※2020年1月現在
従業員数:198名(派遣スタッフ・パート等を含む)※2019年9月現在
事業内容:「スマート保育園®」、「ルクミー®」サービスの企画、開発、販売、運営、AIやIoT等を用いた保育関連テクノロジーの研究開発

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