株式会社ネイチャーズウェイの萩原社長(右)、日本M&Aセンターの朝倉氏(左)

化粧品業界は、2020年コロナウィルスの影響を大きく受けた業界の1つだ。 「爆買い」によって需要を買い支えていたインバウンド消費が落ち込み、国内需要もマスクやテレワークの普及によってノーメイク、あるいはマスクに隠れない部分だけのメイクなど、そもそも化粧をする機会が減ったこともある。

調査会社インテージによれば、小売店における日用消費財の販売金額下落ランキング(2020年)で、上位10品目のうち化粧品関連の商品が5つ含まれる結果となった。口紅や頬紅(チーク)、ファンデーションなどだ。

大手企業も新たな経営方針を打ち出し始めている。化粧品大手の資生堂が「TSUBAKI」などのパーソナルケア事業の事業売却を2021年2月に発表した。同社は「高付加価値スキンビューティーカンパニー」を目指し、高級化粧品などの高価格帯のブランドを強化する方針を掲げている。

そんな、大きく市場が変わる化粧品業界で独自の経営手法で成長を続ける会社がある。株式会社日本M&Aセンターで化粧品業界の成長戦略に精通するM&Aコンサルタントの2人が、それぞれ自力での企業成長を成し遂げた企業、第3者割当増資によってスケールアップを成功させた企業、そして、自力での資金調達によって成長戦略を描く企業、それぞれ異なった成長戦略を成功させてきた経営者に、今後の化粧品業界で企業を成長させていくためのアイディアや今後の経営戦略についてインタビューする。

第一弾として、これまでは国内を中心に自然化粧品(オーガニックコスメ)のパイオニアとして広めていたが、昨今は積極的な海外進出も開始し自力成長を続ける株式会社ネイチャーズウェイの代表取締役社長 萩原 吉晃氏に株式会社日本M&Aセンターの朝倉一輝がインタビューした。

萩原社長
株式会社ネイチャーズウェイ
代表取締役社長 萩原 吉晃
早稲田大学 大学院商学研究科(現経営管理研究科) 卒業 
米国の大学、中国の大学院へ留学を経て大手商社に勤務
海外駐在を経てネイチャーズウェイに入社
萩原社長
株式会社日本M&Aセンター
成長戦略部 朝倉一輝
新卒で株式会社キーエンスへ入社。工場の生産ライン最適化の提案に従事し、国内トップクラスの成績を残す(受賞歴多数)。モノづくり業界での経験を活かし、現在でも多くの化粧品メーカーを担当している。また価値創造を企図してデジタル化が進む小売業界にも精通している。

――ネイチャーズウェイグループの事業内容をお伺いしてもよろしいですか

萩原: 自然化粧品の輸入・開発・製造・輸出です。社名にもあります通り、我々が取り扱うのは人にも環境にも優しい自然化粧品のみ。海外でトップシェアを誇るブランドの代理店とアジア向けの開発・製造も担っています。

輸入ブランドとしては、スイスのヴェレダ(WELEDA)、アメリカのドクターブロナー(DR.BRONNER′S)があります。

共に世界的に評価されているブランドです。今年創業100年を迎えるヴェレダ社とは40年以上共に歩んできた歴史があります。

ヴェレダ社は世界に“ナチュラルコスメ”という概念を生み出したといっても過言ではなく、多くの世界的な自然化粧品ブランドはヴェレダ社の動向に注目しています。ヴェレダがこれからどういう方針を取るのか、どんな一手を打ってくるのかというのは大きなインパクトがあります。

山梨県北杜市にある「有機JAS認証」を所得した自社農場

また、2019年から取り扱いを始めたドクターブロナーはアメリカの代表的な自然化粧品のブランドの1つです。

世界大戦で家族を失ったドイツのエマニュエル・ブロナーという創業者が、世界平和と宗教や民族の差別のない結束を唱える「オールワンビジョン」を企業理念にスタートした会社で、ナチュラルソープを中心に製造しています。

2000年には全米売り上げナンバーワンのナチュラルソープへ成長。アメリカで環境にやさしいヘア・ボディーソープといえばドクターブロナーというくらい知名度があります。 例えば、アメリカのグランドキャニオン国立公園には、環境に配慮した石けんやシャンプーの例として〝Dr.Bronner's is great”と記載があるくらい、信用を得ているブランドです。  

――そもそも御社がナチュラルコスメに取り組まれたきっかけ・ルーツをお聞かせください。

萩原: 人にやさしい化粧品や石鹸などの輸入からスタートしたんです。 またその過程で、日本人に合った化粧品を提供していきたいという考えも生まれてきました。と言いますのも、輸入を行っていたヨーロッパと高温多湿な日本では、肌の性質も気候もお化粧の使い方、習慣も違う部分があります。

例えば、日本ではクレンジング、洗顔、化粧水、美容液、乳液…と入念な肌のケアを行いますが、欧米では日本に比べそのステップがずいぶん少ない。そういった違いがある以上、海外のものをそのまま持ち込むのではなく、そのブランドが持つフィロソフィーを大切にしつつ、日本に合った化粧品を提供したいという思いが積み重なり、開発・製造も行うスタイルになりました。

創業当初は、肌がデリケートなどの理由で、自然化粧品しか使えない方が主なお客様でした。最近は肌の性質というよりは、生き方、考え方から自然化粧品を選ぶ方が増えているように感じております。

――今後100年企業を見据えて今後の戦略について教えてください

萩原:  人に、環境に、やさしい自然化粧品を取り扱うという考えは変わりません。

その上で力を入れていきたいのは情報の発信です。商品を具現化する過程で多くのスタッフが関わります。そのすべてのスタッフに思いがあり、意思があり、その魂みたいなものが商品に吹き込まれます。それをお客様まで伝えたいんです。そうすることで、お客様も販売して下さっているお店様も、開発者も、みんながより大きな利益を享受出来るのではないかと考えています。

情報発信と共に力を入れたいのが海外市場への展開です。世界中のトップブランドが中国市場に集結しています。現在も中国への輸出を行っていますが、今以上にその市場で勝負したい、そう考えています。だからこそ来るべきその時に備えて、レベルの高い市場において勝てるような体力なり組織を作っていきたい。

――最後に萩原社長の自然派化粧品に対する思いをお聞かせください

萩原: 自然化粧品が出来ることを突き詰めていくと、肌を整え美しくするだけではなく、自分を肯定する、自分のことを愛せる手段になれるんじゃないかと期待しています。

自分が自分であることを受け入れる。自分を受け入れ、肯定的に生きたいと思う人の背中をそっと支える存在になりたい。それが自然化粧品の業界がこれからも伸びる可能性そのものだと考えています。

悩みや不安、孤独、そのような気持ちを少しでもリセットできる手段になれたら、そう願っています。


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本セミナーでは、創業以来サステナブル経営に取り組まれてきた株式会社ネイチャーズウェイ様の活動を株式会社ネイチャーズウェイ 常務取締役 徳丸 順一様より紹介いただきます。

また、情報過多な化粧品業界において如何にファンを獲得するか、製品の企画開発から販売まで一貫したブランディング戦略をお話しいただきます。

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