企業会計原則とは?一般原則や注解などをわかりやすく解説!
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中村 太郎
中村 太郎(なかむら・たろう)
税理士・税理士事務所所長。中村太郎税理士事務所所長・税理士。1974年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。税理士、行政書士、経営支援アドバイザー、経営革新等支援機関。税理士として300社を超える企業の経営支援に携わった経験を持つ。税務のみならず、節税コンサルティングや融資・補助金などの資金調達も得意としている。中小企業の独立・起業相談や、税務・財務・経理・融資・補助金等についての堅実・迅速なサポートに定評がある。

企業会計原則は、企業が一般的に守るべき会計処理の方針をまとめたルールである。一般原則、損益計算書原則、貸借対照表原則から構成されている。今回は、企業会計原則とは何かをわかりやすく解説していく。会計の知識を深めたい方はぜひ参考にしてほしい。

目次

  1. 企業会計原則とは
    1. 企業会計原則と企業会計基準の違い
  2. 企業会計原則の一般原則7つ
    1. 一般原則1.真実性の原則
    2. 一般原則2.正規の簿記の原則
    3. 一般原則3.資本取引・損益取引区分の原則
    4. 一般原則4.明瞭性の原則
    5. 一般原則5.継続性の原則
    6. 一般原則6.保守主義の原則
    7. 一般原則7.単一性の原則
    8. 注解:重要性の原則について
  3. 企業会計原則の損益計算書原則と貸借対照表原則
    1. 損益計算書原則
    2. 貸借対照表原則
  4. 中小企業の会計に関する指針も確認

企業会計原則とは

企業会計原則とは、企業会計の実務で慣習として発達したものから、一般に公正妥当と認められた部分を要約したルールである。1949年に企業会計審議会によって制定された。将来において、企業会計の関連法令が制定されるとき、尊重されるべきルールでもある。

会社法や金融商品取引法、税法では、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従った計算が求められる。

必ずしも法令によって強制されないことが明記されているが、企業会計原則は財務諸表を作成するすべての企業が守らなければならないルールといえよう。

たとえば、企業が会計処理をする際や、公認会計士が財務諸表の監査をする際などに従う。

企業会計原則と企業会計基準の違い

企業会計原則において、具体的な会計処理に触れている部分は少なく、実務で使えるノウハウがすぐに得られるわけではない。

実務の中心にあるのは、企業会計原則よりも企業会計基準である。企業会計基準の多くは、公益財団法人財務会計基準機構の企業会計基準委員会によって制定されており、会計処理の方針をテーマごとに詳しく示している。

しかし、企業会計基準はボリュームがあり、内容も専門的で難しい。そのため、まずは企業会計原則から把握するとよいだろう。会計基準を読む際に会計処理の必要性が見えやすくなる。

企業会計原則の一般原則7つ

一般原則と、注解に示されている重要性の原則を解説していく。抽象的な内容も多いが、現実の事象と結びつけることで理解しやすくなる。

一般原則1.真実性の原則

「企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない」という原則である。

会計には、その処理方法が二つ以上認められるケースがある。たとえば、減価償却の定額法と定率法は、どちらを選ぶかで財務諸表の金額が変わってくるが、どちらも正しい処理だ。

よって、ここでいう真実は絶対的ではない。選択した方法が妥当であれば真実として扱われる。

一般原則2.正規の簿記の原則

「企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない」という原則である。

各取引について、正規の簿記の原則に従って帳簿をつけることが求められている。

正規の簿記の原則という言葉は、青色申告特別控除(65万円)を受けるための要件にもでてくる。

所得税法施行規則第五十七条によると、「資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引を正規の簿記の原則に従い、整然と、かつ、明瞭に記録し、その記録に基づき、貸借対照表及び損益計算書を作成しなければならない」としている。

条件を満たす取引の記録方法は、一般的には複式簿記とされている。

利害関係者に影響を及ぼさない重要性の乏しいものについては、簡便な方法であっても正規の簿記の原則に従った処理と認められる。

一般原則3.資本取引・損益取引区分の原則

「資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない」という原則である。

たとえば、100万円の入金があったとしよう。株式発行で払込みを受けた資本取引か、商品が売れて振り込まれた損益取引か判断しなければならない。

区別せずに処理すると、会社の財政や業績がわからなくなってしまう。

この原則では特に、資本剰余金と利益剰余金を区別することを求めている。いずれの金額も貸借対照表の純資産の部に表示される株主資本だ。

しかし、資本剰余金は資本取引から生じた余りである一方で、利益剰余金は損益取引から生じた利益の積み重ねであり、原資が異なる。

一般原則4.明瞭性の原則

「企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない」という原則である。

投資家や金融機関は、企業の財務諸表を見て、投資や融資の判断を行っている。正しく判断できるよう、財務諸表はわかりやすくなければならない。

たとえば、有価証券やたな卸資産の評価方法、固定資産の減価償却方法、繰延資産の処理方法、引当金の計上基準、費用・収益の計上基準などについては、「重要な会計方針」として開示しなければならない。

そのほかに注記しなければならない事項として、「重要な後発事象」が定められている。

重要な後発事象とは、決算日後の財務諸表作成時までに発生した事象をさす。たとえば、災害による損害の発生や会社の合併、多額の増資、重要な営業の譲渡・譲受などが該当する。

なお、損益計算書原則や貸借対照表原則では、取引の額を純額ではなく、総額による記載を義務付けている。利害関係者が企業の規模を見誤らないようにするためだ。

一般原則5.継続性の原則

「企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない」という原則である。

真実性の原則にも登場したが、企業会計原則では二つ以上の処理方法が認められているケースもある。

しかし、会社の都合にあわせた数字にするために、毎回異なる処理方法に変更した場合、同じ取引をしても異なる損益が計上されてしまう。

たとえば、たな卸資産の評価において、一番利益が多くなる方法(あるいは少なくなる方法)に毎年変えるケースだ。

会計期間ごとの損益を正しく比較できなくなり、利害関係者に真実を示す財務諸表ではなくなる。したがって、会社は選択した処理を原則として毎期継続しなければならない。

一般原則6.保守主義の原則

「企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない」という原則である。

たとえば、取引先の倒産リスクに備えて貸倒引当金を計上する処理が挙げられる。

ただし、小さなリスクに対して過度に保守的な処理をすると、真実を示す報告に反してしまうので注意しなければならない。

なお、貸倒引当金については企業会計基準などの計上基準に従って処理する。

一般原則7.単一性の原則

「株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。」という原則である。

会社の財務諸表は利害関係者に真実を示さなければならないが、財務諸表の定めは会社法や金融商品取引法、税法で少しずつ異なる。

それぞれの目的に応じて、異なる形式の表を作成しなければならない。そのときに単一性の原則が、提出先の目的に応じて数字を変えたり、報告内容をごまかしたりしないように釘を刺している。

注解:重要性の原則について

「企業会計は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。」という原則である。

たとえば、消耗品や貯蔵品はたな卸資産であるが、重要性の乏しいものについては、買ったときに費用として処理する方法を採用できる。

多くの会社が当たり前に行っている処理であるが、実は根拠があったのだ。重要性が乏しいかどうかは、利害関係者の判断に与える影響を考える。

消耗品であれば、そもそも金額が大きくならず、毎期にわたって購入量の変動も少ないと予想される。厳密に会計期間で区切って処理しなくても、会社の損益に与える影響は少ないことから、簡便な処理が認められる。

そのほか、前払費用や未収収益、未払費用及び前受収益についても、重要性が乏しければ経過勘定項目として処理しなくてよい。

企業会計原則の損益計算書原則と貸借対照表原則

一般原則以外の内容として、損益計算書原則と貸借対照表原則についても確認していく。

損益計算書原則

損益計算書原則に定められている主な内容は下記の通りだ。

・費用と収益の計上時期
・損益計算書の表示

実務で意識することが多いのは、費用と収益の計上時期である。「費用は発生主義、収益は実現主義」というのは、損益計算書原則に基づく。

法人税法第22条によると、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準により計算された利益をもとに、課税の公平性など税法の考え方に基づいて所得を調整する。

そのため、企業会計原則に従って計算された損益が、正しい税計算の基礎になっている。

貸借対照表原則

貸借対照表原則に定められている主な内容は下記の通りだ。

・貸借対照表の表示
・各資産の貸借対照表価額の算定方法

実務に関係するのは、各資産の貸借対照表価額に関する算定方法である。

税法の評価額と似ているが、異なる部分もある。たとえば企業会計原則において、たな卸資産の貸借対照表価額に関する算定方法を確認してみよう。

原則として、購入代価に引取費用等の付随費用を加算した額に、個別法、先入先出法、後入先出法、平均原価法、売価還元法を適用して貸借対照表価額を算定する。

なお、時価が取得原価より著しく下落したときは、時価をもって貸借対照表価額としなければならない。

税法では、法定の評価方法は最終仕入原価法による原価法である。また、低価法(時価が取得原価より著しく下落したときの評価方法)は、所得税法の青色申告の特典であるという違いもある。

中小企業の会計に関する指針も確認

この記事では、企業会計原則の構成や実務に関連する内容を解説した。

なお中小企業では、財務諸表を税務申告以外で外部に提示する機会のないケースも多く、企業会計原則の厳密な処理はなじまないかもしれない。

そのため、「中小企業の会計に関する指針」に基づく処理が推奨されている。中小企業を経営するのであれば、計算書類を作成するとき見落としなく確認してほしい。

文・中村太郎(税理士・税理士事務所所長)

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