WORDS by EXECUTIVE
(画像=Alexey Novikov/stock.adobe.co)

「AIは仕事を無意味なものにする」——。

中国・上海で8月29日に開催された「第2回世界人工知能(AI)大会」(WAIC2019)で、米EV(電気自動車)大手テスラ社のCEO(最高経営責任者)でブレインテック(脳テック)分野にも参入するイーロン・マスク氏が、中国のネット大手・アリババ集団のジャック・マー氏と対談した。この対談の中でイーロン・マスク氏は独自の「AI観」を語っている。

連載「経営トップ、発言の真意——WORDS by EXECUTIVE」、今回はイーロン・マスク氏の発言を取り上げ、先端技術に関するビジネスを続々と立ち上げる同氏の最近のAI関連の動きなどに迫る。

イーロン・マスク氏が対談で語ったこと

「AIの研究者が犯している最も大きな誤りは、彼らは(自分自身が)賢いと思っていることだ。彼らはAIと比べると賢くない」。イーロン・マスク氏は対談の場で、ジャック・マー氏にこう語った。

さらにイーロン・マスク氏は「人間の最後の仕事はAIソフトウェアを作ることだ。そしてやがてAIは自分自身のソフトウェアを設計するようになる」と続けた。イーロン・マスク氏がいかにAIに傾倒しているかがよく分かる。

AIに関しては、10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を有するソフトバンクグループの会長兼社長の孫正義氏が、自身が重視する最大の投資領域として掲げていることで知られているが、イーロン・マスク氏は投資家としてではなく、経営者としてAIにコミットしているといえるだろう。

例えば、テスラ製の電気自動車にはいま運転支援ソフトウェア「オートパイロット(AutoPilot)」が搭載されているが、このソフトウェアは将来的にAIを活用した自動運転ソフトウェアにアップデートされる予定だ。AI自動運転技術を搭載した車両で無人のロボットタクシービジネスを手掛けることも既に明かしている。

かつては批判展開、いまでは自動運転や脳テックで

実はイーロン・マスク氏は元々AI信者ではなかったようである。いまから約3年前の2017年7月、米ロード・アイランド州で開催された全米知事協会での講演において、イーロン・マスク氏は、AIは人類が対峙している最大のリスクだ、と語ったようだ。このことを、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。

ただイーロン・マスク氏は、2016年にAI研究の非営利組織「OpenAI(オープンAI)」を立ち上げ、脳とAIを結び付けることも目指すスタートアップ「Neuralink(ニューラリンク)」も創業していることを考えれば、AIが秘める可能性と危険性をともに直視し、結果的にAI推進派となったと予想がつく。

Neuralinkについて少し触れると、この企業はブレインテックを手掛けており、前述のように脳とAIを結び付けることを目指している。脳の信号を解析することで、まずは文字入力やカーソル移動などのコンピュータ操作を可能にさせることが第一ステップだが、将来的にはAIによって脳機能の補完・発展も実現させるというのがイーロン・マスク氏の展望だ。

ツイートに注目、さらに新たなAI活用法も編み出す?

イーロン・マスク氏の一挙手一投足に世界が注目している状況はいまも続いている。その一部が同氏のTwitterのツイートであり、Twitter上でのさまざまな発言がテスラ社の株価に影響を与えることもしばしばだ。そしてそのツイートの中にはAIに関する発言も少なくない。

イーロン・マスク氏のTwitterアカウントは「@elonmusk」だ。関心がある人はフォローしてみてはいかがだろうか。中には眉唾物と思えてしまう大胆な発言もあるが、AI世界に興味を持つ入り口となるはずだ。

車の運転にAIを、脳にAIを…。イーロン・マスク氏はこれにとどまらず、さらに新たなAI活用法を編み出してくるはずだ。今後の発言にも引き続き注目したい。

経営トップ、発言の真意
(画像=THE OWNER編集部)クリックすると連載TOPページへ飛びます