「我々は政治的な広告は世界的に全面禁止する決定をした」——。
Twitterの共同創業者であるジャック・ドーシー最高経営責任者(CEO)はこのほど、自身のTwitterアカウントでこうツイートした。広告費としてお金をかけることによって政治的な影響力を拡大できる状況をストップしようという取り組みだ。
連載「経営トップ、発言の真意——WORDS by EXECUTIVE」、今回はドーシーCEOの発言を取り上げつつ、政治と広告に関する業界の動きやTwitter社の最新の動きを探っていこう。
ドーシーCEO「リーチは『獲得』されるべきだ」
ドーシーCEOは次のようにもツイートで述べている。「我々は政治的なメッセージのリーチは『獲得』されるべきものだと考えており、それは『購入』するものではない」。ちなみにこのツイートは、2019年11月13日時点で10万リツイートと43万件の「いいね」を獲得しており、ドーシーCEOの決断を支持するコメントも多い。
Twitter広告では企業や個人のツイートを、プロモーションコンテンツとして拡散することができる。この場合、このプロモーションに関心が高いと思われる層にフォーカスしてこのツイートを表示させることが可能になり、設定画面ではこのプロモーションコンテンツの表示先の層も設定できる仕組みになっている。
ドーシーCEOは前述のツイートに続き、「政治的なメッセージのリーチの獲得は、人々(Twitterユーザーのこと)がそのアカウントをフォローしたときか、(ツイートを)リツイートしたときになされるべきだ」とし、さらには「インターネット広告は商業広告としては非常にパワフルで効果的なものだ。ただそのパワーは政治に対しては大きなリスクをもたらす」とも述べている。
2020年の米大統領選挙が背景、Facebookも厳格化発表
政治と広告は切っても切れない関係にあり、日本でも一定のルールの下で選挙広告や政党広告が認められている。アメリカの大統領選挙では毎回、テレビや新聞などのマスメディアを使った広告合戦の様相を呈する。今回のTwitter社の決定も、2020年11月3日に実施された米大統領選を意識したものだった。
同様にSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)大手のFacebook社もこれまでに、政治広告の規制の厳格化を発表している。身元要件や身元確認の厳格化が主な柱だ。Facebookは選挙広告については、どの広告主がどのような広告にどれくらいの費用をかけたかが分かるデータベースを公表する取り組みをすでに始めていることでも知られている。
Twitter上での政治広告は2019年11月22日から全世界で全面禁止された。そして今回のTwitter社の決定は、ほかのSNSなどの動向にも大きな影響を与える可能性がある。SNSを通じた選挙キャンペーンに力を入れてきた陣営は、広告・広報戦略の見直しを少なからず迫られることになりそうだ。
プラットフォームの信頼性を高める取り組みに注力
Twitter社は、あたかも本人が話しているような偽動画を拡散する「ディープフェイク」問題の対策にも乗り出している。同問題はアメリカ国内で深刻化しており、次回の大統領選挙でもライバル候補者に対するネガティブキャンペーンとして、支持者らがディープフェイク動画を作って拡散する可能性も十分に考えられる。
政治広告の全面禁止やディープフェイク動画の拡散防止など、プラットフォームの信頼性を高める取り組みに現在力を入れているTwitter社。バイスプレジデントであるダントリー・デイビス氏は、ツイートに対するリツイートを禁止する機能などを将来実装させる可能性を示唆した。Twitter社の変化を恐れない姿勢が感じられる。
ドーシーCEOのTwitterでの発言に、引き続き注目が集まる。