WORDS by EXECUTIVE
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「デジタル決済への転換の動きが劇的に急加速している」——。新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済に甚大な影響を与えている中、PayPalのダニエル・シュルマン最高経営責任者(CEO)が語った言葉だ。

1日の取引額が去年の「ブラックフライデー」(11月末のアメリカの大型セール)を超える日も出てきており、コロナによるデジタル決済需要が爆増しているという。コロナを機に多くの人々がデジタル決済の利便性に気付き、慣れていけば、これまでを超えるスピードでPayPalのユーザーが増え続けていく可能性が高い。

連載「経営トップ、発言の真意——WORDS by EXECUTIVE」、今回はPayPalのCEOであるダニエル・シュルマン氏の発言に焦点を当て、今後のデジタル決済の潮流やPayPalの現在の状況などについてひもといていく。

電子決済サービスの定番「PayPal」

PayPalは1998年に設立されたアメリカの電子決済サービス企業だ。「びっくり発言」などで世間を騒がすことも多い米EV大手テスラのイーロン・マスク氏が共同創業した企業としても知られ、PayPalはクレジットカードを使った電子送金・入金の文化を世界に根付かせた立役者的存在であるといえる。

既にPayPalは日本を含め世界で利用でき、競合企業が増えてシェア争いは厳しさを増しているものの、いまなおPayPalといえば電子決済サービスの定番だ。

空前の需要でユーザー数が爆増状態

そんなPayPalのダニエル・シュルマンCEOが、5月6日の2020年第1四半期発表に合わせ、冒頭に紹介した言葉を述べている。4月と5月の需要について「unprecedented demand(空前の需要)」と表現した上で、PayPalのサービスが世界で急速に求められるようになってきていることを強調した。

需要が増えるのは当然だ。各国の政府が国民に外出自粛を呼び掛ける中、リアル店舗にいく機会が減った消費者はEC(電子商取引)での買い物を増やす。こうした状況の中でPayPalのユーザー数は4月に740万人の純増を記録し、これまでで最大の伸びを記録したという。

こうしたユーザー数の増加は5月に入ってからも続いており、PayPalの発表によれば、今も1日平均でユーザー数が25万人増え続けているらしい。新型コロナウイルスの感染拡大が終息すればこの増加ペースは落ちるかもしれないが、コロナ禍によって同社がユーザーをトータルで数千万人増やすことは確実とみられる。

アフターコロナもデジタル決済市場は好調に

今回のコロナ禍はPayPalにとっては一時的な特需となっているが、新型コロナウイルスが終息したからといって大きな反動が来るわけではないと、ダニエル・シュルマンCEOは考えているようだ。

今回の外出自粛措置で初めてECによる買い物をし、その利便性に気付いた人も多い。さらに今回のコロナは長い期間にわたる外出自粛を余儀なくさせているため、ECや電子決済に人が慣れるための十分な時間も用意された格好となっている。

こうしたことによって「アフターコロナ」時代でも人々の消費行動がリアル店舗からECにシフトしていけば、PayPalにとっては追い風であるといえる。冒頭紹介した「デジタル決済への転換の動きが劇的に急加速している」という言葉には、こうしたニュアンスが含まれているわけだ。

気になる「戦国時代」を勝ち抜く術

とはいえ、デジタル決済の需要拡大を見越し、今後続々と大手企業やベンチャー企業がこの領域にさらに参入してくることが考えられることから、PayPalも楽観してばかりはいられない。アフターコロナにおける「戦国時代」を勝ち抜くには、他社とのさらなる差別化も求められてくるはずだ。

ダニエル・シュルマンCEOはそのための打ち手を既に検討しているかもしれない。その戦略が気になるところだ。

経営トップ、発言の真意
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