WORDS by EXECUTIVE
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「当社の置かれている状況は大変厳しいと認識しております」——。ゴーンショックによるブランド力低下への懸念が深刻化している日産。西川広人氏に代わって新たに新社長に就任した内田誠氏は2020年2月12日、初めて臨む決算発表の場で日産の現状を認めた。

最終損益が261億円の赤字となった2019年10〜12月期の四半期決算。この業績の悪化から日産はどう復活の青写真を描いているのだろうか。

連載「経営トップ、発言の真意——WORDS by EXECUTIVE」、今回は日産の内田誠社長の決算発表における発言を取り上げ、決算資料を読み解きながら日産がいま直面している現状と復活に向けた事業計画に迫る。

2019年度第3四半期、純利益は前年同期比87.6%減の393億円に

日産自動車は2020年2月12日、2019年度第3四半期の累計業績(2019年4〜12月)を発表した。売上高は前年同期比12.5%減の7兆5,073億円、営業利益は82.7%減の543億円、当期純利益は87.6%減の393億円と非常に厳しいもので、売上高営業利益率も3.0ポイント減の0.7%まで下がった。

四半期ベースの純利益は261億円の赤字となった。この10〜12月期に赤字となるのはリーマン・ショックが起きて以来となり、実に11年ぶりだ。

世界における日産の販売台数は前年同期と比べて8.1%も落ちた。台数で言えば369万7,000台で、日本においても販売台数が6.9%減の38万1,000台にとどまっている。中国では前年並みを維持したものの、アメリカにおいては9.1%減、ロシアを含む欧州では16.2%減となっており、ほぼ総崩れとなっている。

こうしたことから2019年度通期の決算見通しも下方修正した。売上高見通しは10兆6,000億円から10兆2,000億円に、営業利益見通しは1,500億円から850億円に、純利益見通しも1,100億円から650億円まで下げることを余儀なくされている。

ちなみにこの数字には新型コロナウイルスの影響は含まれておらず、通期業績がさらに悪化する可能性も考えられる。

ゴーン・ショックだけではない

「ゴーン・ショック」につづき、新型コロナウイルスの流行。海外に逃亡したカルロス・ゴーン被告の一連の騒動は日産のブランド力に暗い影を落とし、新型コロナはそれにさらなる追い打ちをかけた格好だ。

日産が2020年11月12日に発表した、2020年度の上期決算と通期見通しの修正によれば、2020年度上期の連結売上高は3兆927億円、連結営業損失は1,588億円、売上高営業利益率は5.1%減、当期純損失は3,300億円となった。

やはり新型コロナの影響を受け、グローバル規模での需要が減少。販売台数も大幅に減少した。ただゴーン・ショックや新型コロナだけではなく、日産の業績悪化は基盤にあるとも言えるだろう。

これまでアメリカでは販売奨励金によって販売台数を確保してきたが、そのアメリカで販売台数が減っている。主力市場の中国における足踏みも大きい。そんな状況の中、各工場の生産能力を十分に生かせない状況となっており、今後は生産体制の見直しが一つのカギとなるはずだ。

内田氏は2020年度通期業績見通しについて「全体需要の年間見通しは、この先新型コロナウイルス感染拡大による重大な事業活動の寸断が発生しない前提」と前置きしつつ、前年比で約11%減の7,590万台になると予想。しかし新型コロナの影響で市場動は先行き不透明な状況が継続しているとした。

日産の復活のカギはどこにあるのか

こうした新型コロナの影響、生産体制の見直しのほか、日産は「新技術」「新商品」「新しいビジネス」の3本柱で復活を目指す。高速道路で「ハンズオフ」(手放し)運転が可能となる機能を搭載したスカイラインは、まさに「新技術」の目玉と言える。

またDeNAと組んで実証実験に取り組んでいる「Easy Ride」(イージーライド)にも注目したい。自動運転技術を活用した移動サービスの展開を将来的に目指しており、自動運転タクシーをGoogle系企業が既にローンチしている中、研究開発や検証を急いでいるようにみえる。「技術の日産」の腕の見せ所だ。

財務基盤の強化と新事業の実行力がいま日産自動車に求められている。ピンチは逆に改革の好機であるとも言える。厳しい状況の中でバトンタッチした内田氏はどこまで成果を挙げられるのか。その手腕に注目が集まっている。

経営トップ、発言の真意
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