「我々には地球の全人類に資する責務がある」——。米Microsoftのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)はTwitterでこう述べ、同社が掲げた新たなミッションを紹介した。それは2030年までにMicrosoftが「カーボンネガティブ(Carbon Negative)」になるというものだ。
カーボンネガティブとは、二酸化炭素の排出量よりも除去量を多くすることを言う。地球温暖化の緩和には大気中の二酸化炭素を中長期的に除去する必要があると言われており、Microsoftは自社のアクションや製品で地球環境への貢献を果たす構えを明確した形だ。
連載「経営トップ、発言の真意——WORDS by EXECUTIVE」、今回はMicrosoftのサティア・ナデラCEOの発言を取り上げ、二酸化炭素排出をめぐる企業の動きを解説していこう。
「カーボンニュートラル」を掲げるAmazonを意識か
企業における二酸化炭素削減の取り組みとしては、排出量で実質ゼロを目指すAmazonにも注目が集まっている。この取り組みは「カーボンニュートラル(Carbon Neutral)」と言われ、同社は2040年までに自社事業による二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることを目指している。
Amazonの事業は周知の通り、EC(電子商取引)がメインだ。そのため、商品を配送する際に膨大な数の配送車を地球上で走行させている。同社はまずこの配送車を電気自動車(EV)に切り替えていくことで、二酸化炭素の排出を抑えることに取り組む。報道などによれば、既にEVを10万台発注しているようだ。
また、2030年までに使用エネルギーを全て再生可能エネルギーでまかなうことも表明している。森林保全などに費用を投じる方針も明らかにしており、計画が順調に進んでいけばカーボンニュートラルのモデル的な取り組みとして注目されていくかもしれない。
データセンターを再生可能エネルギーに順次切り替え
このカーボンニュートラルを2040年に達成するというAmazonの目標は2019年9月に発表されており、今回のMicrosoftの「カーボンネガティブ」に関する発表はAmazonを意識したものとされる。ナデラCEOは「プラスマイナスゼロでは不十分」と述べており、「ニュートラル(実質ゼロ)」を超える「ネガティブ(実質マイナス)」を掲げた。
ではMicrosoftはどのように実質マイナスを達成しようとしているのか。報道発表を紐解くと、まずMicrosoftが抱えるデータセンターで使用するエネルギー源を再生可能エネルギーに順次変えていく取り組みを推進するほか、二酸化炭素の削減に貢献する技術開発を促進するため、10億ドル規模の基金を設立するようだ。
このほかにも複合的な取り組みによってカーボンネガティブの達成を目指す。その中には、大気に含まれる二酸化炭素を直接的に回収してしまおうという取り組みも含まれ、将来的には従業員の通勤方法にも関与してクリーンな移動方法の推奨などにも力を入れていくかもしれない。
日本でもROCの導入が加速?
特に欧米企業でこうした取り組みは徐々に浸透しつつあり、「二酸化炭素削減×企業」という視点が徐々に当たり前のものになっていく潮流を感じる。では一方、日本ではどうか。2019年には、百貨店大手の丸井グループが経営指標の一つとして「炭素利益率(ROC)」を導入するという報道が注目を浴びた。
このROCとは「自己資本利益率(ROE)」の考え方に準じ、少ない二酸化炭素排出でどれだけ利益を高めることができているかを示すものだ。ROCは近年、自社ブランディングや顧客ロイヤリティ、投資家からの注目度にも直結するものと認識されつつある。もはや企業はROCとは無縁ではいられなくなりつつある。
Microsoftは大企業としてこうした取り組みの見本となれるのか、注目だ。