コロナ禍の影響がさまざまにあった2020年の冷凍食品国内生産量は、前年比98.9%~100.2%と概ね前年並の158~160万トンになる見通しだ。
家庭用はコロナ禍による巣ごもり消費などあって全般的に好調だったが、外出自粛などの影響から業務用が苦戦し、合計すると前年並から若干減となる見込みだ。日本冷凍食品協会が12月10日、本紙など業界専門紙9社が加盟する冷凍食品記者クラブに対し年末記者会見をオンラインで開き、大櫛顕也会長(ニチレイ社長)が市場の状況や協会の活動などについて話した。
――2020年の冷凍食品市場
家庭用は食品全体で4~5月、巣ごもり消費の特需が発生。冷凍食品でも、特にパスタや米飯など主食の簡便性が高い商品を中心に需要が拡大し、一部供給が追いつかなるほどになった。現在まで前年比2ケタ増前後で推移していると見ている。
一方、業務用は3月の学校休校や飲食店の営業自粛・時間短縮、在宅勤務の増加などで市場が深刻な影響を受けた。11月はだいぶ回復してきた感覚があったが、コロナ感染第3波で再度萎んできている。
――2020年の生産・開発面の動向
生産現場でコロナ感染症の罹患者は確認されているものの、冷凍食品はもともと高度な品質・衛生管理の下で生産されていることもあり、大きな影響が出たとは聞いていない。一方、海外の生産現場では、日本からの出向者がコロナ発生後に帰国し、現地に戻れなかったり、日本から現地へ行けかったりということで開発等に支障があった。
商品開発面では、リモートでの対応もある中、秋の新商品数は若干少なかったが、一定数は発売されたと認識している。また、営業面ではリモートでの商談となり、展示会が開催されなかったことで、商品に直に触れて試食していただく機会が減ってしまったことは課題だった。
――2021年の市場展望と、今後の方向性
新型コロナ感染症拡大度合い、東京五輪の開催可否、訪日外国人がどれくらい回復するかなどで大きく状況が変わる。感染症が一定程度収束すると仮定すれば、家庭用は今年のような爆発的特需は期待できないものの、在宅勤務の継続や、単身・2人世帯の増加などの社会構造変化から一定のニーズの高まりが2021年も今後も続くだろう。
業務用は、コロナが収束すればある程度戻るとみられる一方で、ニューノーマルの生活が定着すればテークアウト・デリバリー需要が今以上に伸びていく可能性がある。
生産・商品開発面では、原材料調達から商品開発、生産、販売までのサプライチェーンが変化してくると思う。現状、メーカー各社が現有資産で対応しており、インフラ含めたあり方が変わってくる年になるのではないか。
冷凍食品は今年度“エッセンシャルフード”として見直されたと思っている。この機会をうまく使って業界の発展に繋げたい。現在は買い場、売り方の変化に各メーカーが対応しているところだ。また、サステナブルな価値を上乗せした商品なども出てくるのではないか。コロナ禍の影響で、本来進んできた方向への進みが一気に早まったと認識している。コロナが収束しても働き方が変わり、リモートワークも広がるだろう。生活スタイルの変化に合わせた冷凍食品を提供していくのが大きな流れだ。
また、グローバルに広がるサステナブルを目指す流れに、冷凍食品は貢献しているというアピールをすることも大切だ。
――会長が掲げる“エッセンシャルフード”という言葉に込める意味
もともと、冷凍食品はエッセンシャルフードであり、未来の食品だと思ってきた。今般のコロナ感染拡大では、冷凍食品を手にとって食べていただいたことで、価値を認めていただけたと思う。外食の需要は減ったが、新しく冷凍食品を手にとった生活者の方々がリピートして下さっているのは、食生活の中で冷凍食品が認められた1つの証ではないか。
これからの日本では人手不足が深刻になり、そこで最も力を発揮できるのは冷凍食品だ。これまでは最終まで加工したものが多かったが、今年のコロナ禍の中では素材に近いもの、素材と素材を組み合わせたもののニーズが高まり、各メーカーが対応しているところだ。これらが生活者の食の質を上げることに貢献することで、冷凍食品が今以上の“エッセンシャルフード”になることができるだろう。
〈冷食日報2020年12月11日付〉